北欧の教育最前線 ノルウェーの高校にある10の職業科コース

ノルウェーの高校には、大学進学のための進学科が5コース、就職のための専門的な知識や技術を学べる職業科が10コース設置されている。ノルウェーの子供の98%が義務教育修了後に高校に進学するが、自分の興味や適性、将来就きたい職業などによって上記の15コースから進路を選択する。そのうち約半数の生徒たちが職業科を選択している。

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職業科の「2+2モデル」

職業科では、学校で2年間の教育を受け、その後2年間を企業または公的機関で職業実習生として訓練を受ける「2 +2モデル」が導入されている。修了時には、生徒は学んだ分野の職業試験を受け、高校卒業資格を得る。

職業科から進学科に変更したい場合は「補充学習」を受け、途中からコースを変更することもできる。加えて、職業資格を取得した後に「補充学習」を受け、高等教育への進学を目指す学生も少なくない。

具体的な人生設計を描く若者たち

イースターにはスキーを楽しむ家族が多い。たき火を囲んでホッと一息

今年1月からトロムソ大学に着任した筆者は、イースター休暇を初めて経験した。約1週間、学校も会社も休みとなる。ノルウェーに来て一人寂しく連休を過ごすのはかわいそうだと、友人が自宅に招いてくれ、その親戚家族や友人たちとイースターを過ごすことになった。

そこには、10代後半から20代前半の6人の若者がいた。若者たちの話を聞いていると、将来の考え方や人生設計が実に具体的ではっきりとしていることに驚いた。20歳前後にもかかわらず、社会や政治の仕組みを理解し、社会の一員として自身の立場を自覚している。それぞれに個性があり大人なのだ。
彼/彼女らは全員高校の職業科を卒業、もしくは在学中だった。進路はそれぞれが変化に富みユニークであった。ここでは、二人の若者の例を紹介したい。

やりたいことを見つけるために兵役へ

大学院を目指しているケビン(右手前)

25歳のケビンは、職業科の「情報技術・メディア制作」コースを選択した。彼は高校卒業後すぐには就職せず、軍に入隊した。兵役後、彼は「補充学習」を受け大学に進学することを決めた。現在、トロンハイム大学でコンピューター解析技術を学んでいる。

1年間の兵役を希望したのは、自分が将来、何をしたいのかを見極めるためだったという。大学院へ進み、さらに専門分野で学問を極めたいと話す。

学歴よりも専門資格

専門資格をとったセバスチャン

一方、22歳のセバスチャンは、職業科の「電気・コンピューター技術」コースを選択した。2年間の職業実習を経て、最終試験で職人資格を取得した。そして、その専門技術を生かせる企業で働き、満足できる収入を得ている。「高学歴になっても実際には就職先がない。それよりも専門的な技術と資格を身に付けて、早いうちに就職した方が良い」と力強く語る。

ノルウェー政府はこの10年、職業専門プログラムの改訂や、卒業後の就職につながるようなシステムの改善など、職業科の向上に力を入れているそうだ。

若者の未来を切り開く職業科コース

もちろん職業科を選択した生徒全員が、この若者たちのように順風満帆にいっているわけではない。学力低下やドロップアウトが問題となり、若者の職人離れも課題となっている。

しかし、どこの学校を卒業したかではなく、どのコースで何を学んだかがキャリアにおいて重要となるノルウェーにおいて、10の職業科コースは、学校と実社会が結び付いた環境の中で専門知識を学び、経験を積む環境を提供しているとも言える。

筆者が出会った若者たちは、具体的な人生設計や選択を自分自身で考え、切り開いていくたくましさを身に付けていた。

(長谷川紀子=はせがわ・のりこ 愛知工業大学非常勤講師、トロムソ大学客員研究員。専門は教育人類学、比較教育学)

 


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