コロナと少子化 子どもたちと考えたい、日本の大問題

子どもの数が減り続けている。2020年時点で、0歳から14歳までの年少人口はわずか12.0%に過ぎない。1970年代と比べるとその割合は約半分、50年代と比べると約3分の1にまで減少している。新型コロナウイルスの感染拡大は、この状況にさらに追い打ちをかけた。20年の出生数は84万832人と過去最少、さらに妊娠数も減少しており、21年の出生数は80万人を切る試算も出されている。経済や社会保障制度の維持に深刻な影響を及ぼしかねない少子化。日本の抱えるこの大問題に解決策はあるのか、専門家に聞いた。


8割弱の自治体が待機児童と無縁

「2020年の出生数は過去最少の84万832人」――。6月4日、厚労省が公表した「人口動態統計月報年計」で、またも出生数の過去最少が報じられた。1人の女性が一生の間に産む子どもの数を示す合計特殊出生率(15~49歳の女性の年齢別出生率の合計)は1.34と、前年より0.02ポイント低下。妊娠届け出数も87万2227件と、前年に比べて4.8%減少した。

出生数と合計特殊出生率の推移(出所:人口動態調査)

経済財政諮問会議が今年4月、昨年4~10月までの妊娠届け出数の伸び率を基に21年の出生数を推計したところ、これまでの国立社会保障・人口問題研究所の中位予測より約10年早く、80万人を割り込むことが分かった。

コロナ禍に見舞われる前から、少子化は急激に進んでいる。厚労省の集計によれば20年4月時点で、市区町村の77.0%では保育所の待機児童がいない。また同省の調査研究では、「人口減少により保育所の多くが定員割れを起こし、運営の継続が困難となっている事態が生じている」と答えた自治体が13.3%に上っている。

学校の数もここ10年間で1割ほど減った。21年1月にまとめられた中央教育審議会の答申では、少子化の進展により小学校と中学校が1つずつしかないという市町村が233(13.3%)、公立高校がない、または1つしかない市町村は1088(62.5%)という現状を、19年の学校基本調査を基に指摘している。

子どもの減少に直面した自治体では学校統合をするか、小規模校の良さを生かした学校づくりを行うかといった判断を迫られている。中教審の答申では、学校統合のやり方として義務教育学校化や本校・分校の活用、近隣の自治体との組合立学校の設置などの選択肢を挙げている。小規模校を存続させる場合は「少人数を生かしたきめ細かな指導の充実、ICTを活用した遠隔合同授業の取り組み」などで教育の魅力化を図ることが必要だとしている。

文科省が18年に全市区町村を対象に行った調査では、全市区町村の85%が域内に「小規模校がある」と回答。そこでは地域学習を充実させる、個別指導・補習などのきめ細かな指導をする、全員に発表の機会を作るなど小規模校ならではの教育を充実させる一方、異学年集団での協働学習を行うなど、デメリットを小さくする努力がなされていることが分かる。

6月4日、国の少子化対策の指針となる「少子化社会対策大綱」の進捗や課題を検証するために内閣府に設けられた「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」が初会合を開いた。出席した坂本哲志少子化担当相は、コロナ禍で一段と深刻さを増した状況を前に「危機的な状況だ」と述べ、少子化対策の重点項目を洗い出すよう求めた。

出産までの何重ものハードル

「少子化の要因は、一つではなく総合的なもの。出産に至るまでには、いくつものハードルがある」。内閣府の「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」で座長を務める中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授は指摘する。

内閣府の「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」であいさつする坂本少子化担当相(中央)と、検討会の座長を務める佐藤中央大大学院教授(手前)

婚外子が少ない日本では、出産は結婚と強く結びついており、少子化の背景には未婚者の増加と、夫婦の子ども数の減少という2つの大きな要因がある。出産に至るまでには、結婚意欲があるか、出会いの機会があるか、互いをパートナーとして選び、ともに生活できるか、子どもを欲しいと思い、持つことができるか、希望するキャリアを続けることができるかなど、多くのハードルを乗り越える必要がある。

佐藤教授は「新型コロナウイルスにより新しい要因が増えたというよりは、こうした既存の要因に、大きなマイナスの影響を与えたのではないか」とみる。コロナ禍で仕事以外のサークルや飲み会がなくなり、出会いの機会は一段と減少している。また経済的に不安定になり、結婚をためらうケースもある。子育ても経済的な負担が小さくないため、すでに子どもがいる夫婦でも、次の出産を控える選択をする可能性がある。

佐藤教授は、こうした新型コロナウイルスの影響を当面、注視していく必要があると話す。「新型コロナウイルスの感染が終息しても、いったん出生数が落ち込むと、自分の周囲で子育て中の人と接する機会が減る。幸せに子育てする姿を見かけなくなれば、未婚者が子どもを持つ実感が、さらに遠のいてしまう」。

内閣府の泉聡子参事官(少子化対策担当)は「新型コロナはまだ進行中で、引き続き注視しなければならないが、気がかりなのは婚姻件数の減少。出会いの機会の減少や将来不安が、結婚をためらわせているのだとすると、少し長い目で見ていく必要がある。大学でもオンライン授業が増え、横でのつながり、出会いの機会が減っている」と懸念を示す。

結婚、出産を左右する要因の例(取材を基に教育新聞作成)

結婚した夫婦が出産をためらう傾向も表れている。少子化を研究する中京大学の松田茂樹教授らが昨年11月、子どもを1~2人持つ有配偶者を対象に行った調査によれば、夫の所得が低い家庭ほど次の出産を先送りしていた。さらに、妻が専業主婦であった家庭の方が、妻が就業していた家庭よりも、次の出産を先送りする傾向が見られた。

松田教授は「経済的に苦しい世帯ほど影響が強く表れており、低所得の子育て世帯への対応は課題。一方、専業主婦家庭で出産を抑制した背景には、コロナ禍で子育て支援拠点が利用できなかったことなどによる、社会的孤立の影響が考えられる」と分析する。

こうした影響を受け国は、結婚での新生活を支援する事業で年齢・年収要件の緩和などの支援を実施。妊産婦に対しては、電話やオンラインによる相談支援・保健指導などを行っている。自治体では、オンラインの婚活イベントを開催するところも出てきている。

「少子化の現状、学校で伝えて」

進行しつづける少子化を横目に、国も無策だったわけではない。1990年、前年の合計特殊出生率が急激に落ち込んだ「1.57ショック」を契機に少子化問題が認識され、「エンゼルプラン」や「緊急保育対策等5か年事業」を皮切りに、継続的な対策が取られてきた。ただ、重点が置かれていたのは保育の受け皿の整備や両立支援で、未婚化への対策は手薄になりがちだった。

こうした経緯を踏まえ現在の少子化社会対策大綱(第4次)では、若い世代の結婚や子育ての希望がかなう場合に見込める「希望出生率1.8」の実現に向け、結婚を希望する者への支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備、在宅子育て家庭に対する支援など、幅広い施策を打ち出し、進捗を検証するための前出の検討会も初めて設置した。

少子化を研究する中京大学の松田教授

果たして「希望出生率1.8」は実現するのか。中京大学の松田教授は「国民全員が結婚して、子どもを2人もうける」という方法ではなく、「子どもを持つかどうかの個人の自由を維持しつつ、希望する人は1人でも多く結婚でき、2人、3人と希望する子ども数を持てるようにする」というアプローチが現実的だとみる。

「幅広い人に税を納めてもらい、子育てする人に還元する。福祉国家がやっているような標準的な方法で、わが国も世代間の再生産や出生率の回復を目指すのが妥当。経済的な面だけでなく、街中で困っている時に声を掛けるなど、気持ちの面でも応援してほしい」

ここでは、結婚前から結婚、妊娠・出産、子育て、教育、子どもの自立に至るまでの、全てのライフステージを支援することや、特定の家庭ではなく全ての家庭の子育てを支援することが重要だという。「2000年代~10年代前半の少子化対策は保育と両立支援が中心で、未婚化対策や、在宅で子育てしている専業主婦世帯への支援が遅れた。若者・子育て世代の就業形態やニーズはさまざま。幅広い施策を揃えることが必要だ」。

松田教授はまた「この国を動かすのは、最終的には人々の気持ちや意識。教育の影響は非常に大きい」と指摘する。「少子化の進行が国力を弱め、地域社会での支え合いを難しくしていることを、学校で子どもたちに伝えてほしい。少子化が社会にもたらす影響はテクノロジーでは解決せず、少子化を止めるしか方法がない。希望する人が結婚・出産できるようにするには、社会での支援が重要だということを知ってほしい」。-

また「高校生ぐらいになったら、社会のさまざまな状況を知った上で、主体的なライフコースを考える機会を持つことも大切」と、学校教育の重要性を語る。

(秦さわみ)

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