【大学ランキング4位】 地学一体の学びで社会課題に取り組む

赤城山を自転車で周ってスローシティ構想に携わったり、限界集落に居住するおじいちゃん、おばあちゃんの「孫」になったり――。共愛学園前橋国際大学には、こうしたユニークな「地学一体の学び」がある。大森昭生学長は、地域の課題解決やまちづくりに関わる学生の成長と変化をどう見ているのか。大学の在り方が問われたコロナ禍に学長自らが立ち上げた「ニューノーマルな大学の姿を描くためのPBL」も含め、話を聞いた。(全3回の2回目)

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地域の人に学生を育ててもらう
――「地学一体の学び」とは聞きなれない言葉ですが、どういう学びなのでしょうか。

「地域全体に学びのフィールドを広げた」と話す大森学長

本学は学部が一つで、全学生を合わせても約1100人の規模です。このコンパクトさが強みでもありますが、もっと学生の学びを広げたいと考え、学びのフィールドをキャンパスだけでなく、地域全体に広げました。地域の方々の力を借りて、共に学生を育ててもらっています。

「地方創生」という追い風もあって、現在の前橋市はとてもビジョナリーなまちづくりに取り組んでいます。例えば、「前橋市アーバンデザイン」の1プロジェクトで、6月に立ち上がった「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト」には、本学の学生が20人ほど関わっています。民間企業が資金を集めて、前橋市の通りの一つを作り変えようというプロジェクトですが、このようなワクワクする現場に本学の学生が関われるのは、本当にありがたいですね。

他にも、赤城山をひたすら自転車で周ってスローシティ構想に携わっている学生たちもいれば、みなかみ町の限界集落に通い続ける学生もいます。もちろん、これらの活動は全て単位として認定されます。

――大きなプロジェクトだけではなく、SDGsなどの課題に取り組んでいる学生も多いのですね。

今の学生たちを見ていると、地元のまちづくりやSDGsに関わっていくことが、ある意味で“オシャレ”なのだと感じます。

以前、前橋市出身で前橋再生の仕掛け人でもあるジンズホールディングス代表取締役CEOの田中仁さんに、本学で講演をしてもらったことがあります。その時に、学生が田中さんに「なぜそんなにビジネスで成功するためのバイタリティーを持てるのですか?」と質問しました。田中さんは「いい車に乗りたいじゃん!」なんて答えてくれたのですが、学生たちはシーンとして、全然ウケませんでした。

ところが田中さんが今、まちづくりに私財を投資して、何の見返りもなく一生懸命やっていることに対しては、学生たちは強い憧れを持つのです。

今の若者にとって立身出世の成功物語は、ある意味、ファンタジーの世界です。昔のように大企業に勤めても、それが安定につながらないことも分かってしまっている。われわれの時代のような、直線的な目標を持ちづらくなっているのでしょう。

恐らく、東日本大震災が大きな影響を与えていると思いますが、今の若者は「社会に対してどうコミットしていけるのか」というところにモチベーションを持ち始めていると思います。

これからの社会にどう関わっていくのか
――こうした若者の変化は、どういうところで感じていますか。

能動的に社会と関わっていく人を育てている

県内の合同企業説明会でも、学生が興味を持って並んでいるのは、必ずしも大きな企業とは限りません。

例えば、県内の比較的小規模な電気設備の会社があって、その会社は「デンキのミライにワクワクする」をビジョンとして掲げています。実際に、電気設備の工事だけでなく、街中でさまざまなプロジェクションマッピングをやったり、群馬県立沼田女子高校の100周年に夜の校舎を照らしてファッションショーをやったりするなど、まさに「電気でワクワク」している会社です。

規模ではなく、こうした明確なビジョンを掲げている企業に、学生は集まります。単に仕事や製品の説明、給与や待遇だけではなく、「この仕事を通して社会をどうしていきたいか」「この商品を買ってもらうことで、その人がどう幸せになるか」を体現している企業に、学生は引かれるのです。

そうしたことから考えると、これから大学が高校生に示していくべきものは、「こういう研究ができます」とか「こういう授業があります」だけではなく、「その学びを通して、あなたがその先の社会にどう関わっていくのか」というイメージが持てるものでなければいけないと思っています。

本学で言えば、キャッチフレーズでもある「地域の未来は、私がつくる」です。つまり、能動的に地域をつくる人、能動的に社会と関わっていく人というイメージです。

ただ、そういう人には、生半可なことではなれません。講義一辺倒の授業では、どう考えてもこういう力は付きません。

そのため、本学の全講義の82%はアクティブ・ラーニングです。授業では先生の話を聞いているだけじゃなくて、常に意見を求められ、発表させられます。でも、こうしてちょっと大変な分、4年後には必ずこの予測困難な時代に求められる力が身に付きます。そして、それは必ず学生たちの幸せにつながっていくと信じています。

学生と新しい大学の在り方を考えるPBLを立ち上げ
――コロナ禍には、各大学がどのように学生の学びを保障していくのかが問われましたが、学長自ら「学生とニューノーマルな大学の在り方を考えるPBL」を立ち上げたそうですね。

本学も2020年度の前期は、全てオンライン授業となりました。しかも、Zoomなどを活用する同時双方向型やオンデマンド型ではなく、テキストベースを中心としました。当時はパソコンなどの端末の入手も非常に厳しい状態で、誰一人取り残すことなく学びを保障するためには、全ての学生が持っているスマートフォンで対応する必要がありました。通信インフラを圧迫しない意味でも、これがベストだと考えたのです。

ただ、うちはアクティブ・ラーニングが特色でもあり、ウリの大学です。学生からは「アクティブ・ラーニングをやるために、この大学に入ったのに……」といった声がたくさん寄せられました。

コロナ禍において教員たちが一生懸命やってくれていることは、学生も十分理解してくれていました。「でも、それでも……」という学生たちの思いが、学費減免などを求める署名という形で、大学側に提出されました。4分の1ぐらいの学生が署名していて、これは大学としても彼らが納得のいく形で、きちんと返事をしなければいけないと思いました。

そこで、私はまず「署名した学生も、署名をしないと判断した学生も、皆が主体的に動いていて、本当に素晴らしい」と伝えました。その上で、本学の財政事情から大学の学費の仕組みまで、全てを話しました。

そして、「学費減免は、現実的には非常に厳しい。ただ、これまで時間がなくて遠隔授業についても先生たちだけで考えていたけれども、ニューノーマルな大学の在り方を学生のみんなと一緒に考えていきたい。学長直属のPBLを立ち上げるから集まってほしい」と呼び掛けました。すると約70人の学生がこのプロジェクトに参加してくれました。

プロジェクトは、「Withコロナの授業の在り方」「キャンパスライフの在り方」「社会連携の在り方」の3つのチームに分かれて、普段はLINEで、ミーティングはZoomで、日々意見を交わし、昨年9月に対面授業が始まった後には、全体の発表会を行いました。

活動は3、4年生が運営を担い、1、2年生を中心に進めていきました。特に、昨年度の1年生は入学して何もできないまま遠隔授業になっていたので、このPBLへの参加を通して本学らしさを感じてもらうことができたのもうれしかったですね。そして、ニューノーマルな大学の姿を“学生主体で”描けたことが、学生にとっても大学にとっても重要だったと感じています。

(松井聡美)

【プロフィール】

大森昭生(おおもり・あきお) 1968年、宮城県仙台市生まれ。東北学院大学文学部英文学科、同大学院博士課程にて研究。96年に学校法人共愛学園に入職、共愛学園前橋国際大学国際社会学部長、副学長等を経て、2016年より47歳で学長となる。21年より共愛学園前橋国際大学短期大学部学長も兼ねる。専門はアメリカ文学で特にヘミングウェイを研究。中教審の各種委員、内閣官房地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議委員などのほか、群馬県青少年健全育成審議会会長等地域における各種公的委員を多数務め、各地での講演多数。3児を育てており、2人目・3人目の出産に際し、育児休業を取得。群馬県総合表彰(男女共同参画社会)。前橋市スーパーシティの統括アーキテクトや「めぶく。プラットフォーム前橋」副会長など、前橋市のまちづくりにおける各委員も多数務める。全国の学長が注目する学長ランキング4位(大学ランキング2022)。

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