【北欧の教育最前線】 「教師から政治家」の例も多いノルウェー

 ノルウェーでは今年9月に国政選挙があった。政治に対する国民の関心は高く、投票率は77%に達した。そして議員総数169人のうち、今回13人が元「教師」であると報道された。

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「教師」が国政に参加する

 13人の元「教師」の中には、大学の教員養成課程を出た、という意味で「教師」とされている人もいるが、実際にノルウェー議会に入る前に教師や管理職として現場にいた人もいる。

 例えば、労働党のエーヴェン・A・ローエ議員はコングスベルグ市の高校教師だった。現場の実態や、同僚から聞く課題などから、高校における職業教育をより強化しなければならない、という思いをもって国政に入るようだ。

ノルウェー議会

 赤党のヘーゲ・B・ニーホルト議員はノルウェー議会で唯一、幼稚園教師の資格を持つ。彼女はトロンハイム市の公立幼稚園(幼保一元化された施設)で、教育リーダーを務めていた。幼稚園、児童福祉、学校、保健・社会サービスといった、女性が大半を占める職業を代表して声を上げたいと考えている。また、幼稚園の無償化や教職員の給与増加を目指す。児童福祉司の資格と、学際的文化学の修士号も持つ。

 校長経験者もいる。労働党のニルスオーレ・フォスハウグ議員は、教師として長年働いた後、中学校の校長を務めた。労働党のマリアンネ・S・ナス議員は、教師として働いた後、病院の部門長を務め、その後、高校の校長になった。社会左党のムーナ・L・ファゲロース議員も教師を務めた後、校長になっている。

地方では兼業、身近な人が「政治家」

 彼らの経歴からは、教師や校長から国の政治に参加するというルートが、少なからずあることが分かる。一方、経歴を見ると、教職や管理職に就いていた時期に、兼業で地方政治に関わっている人もいた。例えば、先述のファゲロース議員は、教師や校長だった時期に、ヴェストヴォーゴイ市議会の議員も兼務していた。また、ナス議員は校長であった時期に、ハンメルフェスト市の副市長も務めていた。

 ノルウェーでは、地方政治は、他のフルタイムの職業を持った人が兼業で行っていることも多い。そのため、学校の先生でありながら、地方議会の議員である、ということもありうるわけだ。

 教師や校長が政治家になる、あるいは政治家であるという状況は、2つの意味で興味深い。1つは、学校や幼稚園の現場を経験している人が政策を立案できるという点だ。現場の実態や同僚の声を代表して、声を上げることができる。

 もう1つは、子どもや若者の政治参加への影響という点である。ノルウェーには、学校における模擬選挙や、政党青年部の活発な活動など、子どもや若者の政治参加を促す仕組みが多く存在する。それに加えて、身近な大人が政治に関心をもっており、実際に「政治家」として政治に参加している姿は、何よりも説得力のある教材だろう。

(中田麗子=なかた・れいこ 東京大学大学院教育学研究科特任研究員、信州大学教育学部研究員。専門は比較教育学)


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