【北欧の教育最前線】 デンマークの地方自治体のユースカウンシル

苦戦する地方選挙

 デンマークの国政選挙の投票率は戦後8割を切ったことがなく、前回の選挙(2019年)でも84.6%だった。しかし意外なことに、デンマークの若者の中には「政治と聞いただけで嫌だ」という人も少なくない。地方自治体では、こうした若者に興味を持ってもらおうとさまざまな工夫をしている。

 とりわけ地方政治は国政や国際政治に比べて、若者の関心が低いという。全世代を通しての投票率も国政選挙よりやや低く70%台だ。今年11月16日は4年に1度の地方議会選挙だったが、投票率は67.2%だった。

 北欧では政治家や閣僚の年齢層が若いのが特徴だ。デンマークの現首相メッテ・フレデリクセン氏は、19年に史上最年少の41歳で就任した。一方、地方議会の議員は50代以上が多く、国政に比べて年齢層が高い。そのため、地方自治体のユースカウンシル(若者議会)では、若い世代を取り込む方法が探られている。

「ふつうの若者」も巻き込む

 ユースカウンシルは、自治体が若者政策の意見聴取のために設置している。構成員は15歳から25歳までの若者だ。地方議会に政策提言を行うことで、若者の「政治参加」を推進する。そして同時に、国政選挙や地方選挙の度に、若者が政治へ関心をもつように工夫を凝らした活動を行っている。

地方自治の拠点である市役所(グロストロップ市)

 その代表的なイベントとして「候補者討論」がある。ユトランド半島にあるハダースレウ市のユースカウンシルの候補者討論では、地元の若者が興味を持っているテーマを事前に候補者に伝え、議論してもらう。聞いている若者が飽きないよう、討論の長さについても候補者と打ち合わせておく。討論終了後には、地元のバンドのコンサートが行われる。政治討論イベントとコンサートを抱き合わせで行うのは唐突に見えるが、これはいわゆる「普通の若者」を巻き込むことが目的であるからだ。

 北欧では、政党青年部に10代半ばから所属し長く活動する「意識が高い」若者がいる一方で、大半は「ふつうの若者」であり、友達と遊んだりパーティーをしたりすることを大切にする。ユースカウンシルの目的は、この「ふつうの若者」を政策決定過程に巻き込むことである。

 政党青年部はイデオロギーに基づいた政治活動を中心に行う。一方、ユースカウンシルは、イデオロギーに関係なく、地域の若者に共通する課題に取り組む場である。地方自治体は、若者による政策提言を取り入れることで魅力的なまちづくりを進め、進学する際に大都市(首都コペンハーゲンや第二の都市オーフス)に移り住んだ若者のUターンを促したいと考えている。そしてゆくゆくは地方議会選挙に立候補するような人を育てたいと思っているのだ。

政治参加の土壌づくり

 地方自治体に共通しているのは、Uターン戦略における地域の活性化を、「若者のニーズ」や「若者の声」を聞いて政策に反映する形で実現しようとしていることである。

 子育て世代や高齢世代にとって地方自治は身近なものだが、若者にとってそうではない。だからこそ、地方自治体が若い世代が参加できる政策課題を設定したり、暮らしやすいまちづくりを共に考えたりすることが重要になる。選挙の直前に投票を呼び掛けるだけではなく、楽しいイベントも含めた地方自治体との協働が地方自治への関心につながり、ひいては将来の投票率の向上や政治家の輩出につながるのかもしれない。

(原田亜紀子=はらだ・あきこ 慶應義塾高校教諭。専門は比較教育学)


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