【カナダ編】 生徒も関わる評価への変革

 カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州の教育改革は、州レベルでは前回述べたような共通テストの改革や、大枠になるカリキュラムの内容、コンピテンシーの導入などがあった。2015年度からのこの改革は、州は大枠を決めるだけで、改革の方向性をどうクラス内に導入するかについては、現場の教員に委ねられた。例えばバンクーバー学区においては、各学校で2人の教員が選出され、新しいカリキュラムの指導法や評価法を考える研修を行うなどした。今回はこのような変革が、クラスレベルでどのように実施されているかについて述べていく。


内容重視からコンピテンシー重視へ

 新しいカリキュラムの大目的は、変化の激しい社会において、生徒一人一人がクリティカルシンキングや問題解決能力のような応用力、思考力を身に付けることだ。そのために、それぞれの生徒に寄り添った生徒主体の教育は欠かせない。今までのようなある一定の型を覚えてしまえば解ける知識偏重型ではなく、コンピテンシーへのシフトが求められた。

それぞれのコンピテンシーの説明

 BC州においてのコンピテンシーは、大きく4つに分類される。「理解解決する力」「理由付け分析する力」「説明表現する力」「つなげて振り返る力」だ。このように、考える力をより多くの視点でみることで、よりバランスの取れた総体的な力を身に付けることができると考えた。

 ここで大事なことは、内容をとるか、コンピテンシーをとるか、ということではない。今までは内容ばかりが先行して、コンピテンシーはごく一部の生徒にしか育つことはなく、大半がただ覚えるだけの学習になりがちだった。これがコンピテンシーに集中することで、いかに内容を消化できているか、いかに深い学びが実現できているか、またはできていないかが、嫌というほど分かる。

評価方法の言語化

 今まで評価は教員だけのものだった。これを生徒主体の教育において、生徒も参加することで、より学びを自分のものにしてもらうことが大事になってくる。以前はパーセンテージで0から100の数字を最終評価に使っていた。パーセンテージを評価に使う問題は山ほどあるが、一番は非正確性だ。一体、85%と86%の生徒の学びのクオリティーの違いは何なのか。それには誰も正確に答えることはできない。

ルーブリックの例

 このような正確性と一貫性の問題をもって、100通りの評価から4段階に変わった。それもただ4段階にするのではなく、言語化した。Beginning(はじまったばかり)、Developing(発展中)、Applying(応用中)、 そしてExtending(その先へ)だ。注目は、全て「ing」、いわゆる現在進行形であることだ。あくまで状態を表して、常にその先へ行けることを示唆している。

 先に紹介したコンピテンシーと、その一つ一つのコンピテンシーを4段階で評価することで、ルーブリックが完成する。これは評価を明確に可視化したということで、SBG(Standards-Based Grading)と呼ばれていて、このルーブリックを活用して生徒の学びの過程を評価する。また、この評価には生徒も関わる。

 生徒の成長を記録したポートフォリオや再評価などを利用して、以前より成長が認められれば、その評価が優先される。今までのように成長という観点を無視した、全ての評価の平均をとるようなことはしない。

「今まで通り」との闘い

 教育の形は、根本的にはここ何百年も変わっていない。きれいに並べられた机に座った生徒たち。教員が前に立って淡々と授業をするなど、教員主導の授業と評価法が行われてきた。これを州主導で変革、変革と叫んでも、肝心の教員が納得しなければ成功はない。その意味では、ボトムアップ方式で教員一人一人を感化していくやり方には賛同する。

 その一方で、この何百年も変わらなかった教員主導の流れは、そう簡単には変わらないだろう。カリキュラムというかじを切る船頭が教員だけだとある意味、楽だ。そのかじを生徒にも握ってもらって、一緒に方向性を切り拓こうとするのは不安でしょうがない。だが、そうすることでしか本当の意味での「生徒主体の教育」の実現はない。

(梅木卓也=うめき・たくや 2007年度よりワーキングホリデーをきっかけに、カナダで学童保育や障害児サポートなどに携わり、19年度よりバンクーバー市の公立高校にて数学教員)

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