【カナダ編】 時間的な余白が多い教員生活

 これまでカナダの教員養成プログラムやインクルーシブ教育の現状、そして生徒主体のカリキュラムの実状について、さまざまな視点から述べてきた。最終回は教員のごく普通の1日がどのようなものかお伝えしたいと思う。これまでのシリーズが、単にカナダの教育についての理解が深まっただけではなく、日本の教育への何らかのヒントになったのであれば幸いだ。


職員室はない

 基本的に1日の授業は午前に2時限、午後に2時限、1時限当たり80分の4時限を担当する。また、2021年からは週に2回ほど「FIT」と呼ばれる学習サポートや探究などに使える時間が設けられた。これは授業の合間、例えば1時限目と2時限目の間などに入ることが多い。

教員の部屋に貼られているポスターの例

 教頭や校長がいる事務的なことを行うオフィスはあるが、基本的に職員室は存在しない。教員1人につき、1部屋(1教室)が与えられており、生徒が授業の時間に合わせて教員の部屋に集まる。生徒はある一定の単位をとることで卒業できるので、必ずしも同じ学年の生徒が同じ授業をとるとは限らない。これは、こちらの大学のシステムと極めて近い。

 自分の部屋なので、教員はかなり自分のカラーを出せる。例えば、生徒の学習意欲をそそるようなポスターを貼ったり、机や家具の位置を自由に変えたりしている。教員によっては小型冷蔵庫、湯沸かし器や電子レンジなどを置いていて、もはや自分の家よりも快適だったりする。

 日々の業務時間は、午前8時半くらいから午後3時半くらいまでだ。それ以降、残って次の日の準備をしたり、テストの採点をしたりすることもあるが、そのまま帰る教員も多い。部活動は基本的には生徒主導で、教員はあくまで付き添いという立場だ。完全にボランティア制なので、よほど情熱を持っているか、若い教員以外は携わらない。

柔軟に動ける精神的余裕

 研修は月に1度ほど行われる。金曜日に行われることがほとんどで、生徒にとっては3連休となる。学区や学校単位で指定された内容を学ぶ日もあれば、自分で自由に選んで学ぶ日もある。自由に選ぶ場合、学区ごとにオファーされている研修内容を選んだり、ウェブサイトなどから自分で選んだりすることもある。

 筆者は現在、大学院のプログラムに週に1度通っている。このようにフルタイムで働きながら修士をとる教員も多く、基本的にこの月に1度の研修の機会を大学院の読み物や課題に充てることが許されている。自分の学びたいことを研修に充てられ、修士のプログラムで得たことを授業に生かすことができるので、やりがいを感じられるし、とても楽しい。

大学院の課題図書の例

 1年で働く期間は実質9カ月だ。カナダでは9月から新学期が始まり、冬休み2週間、春休み2週間、夏休みが2カ月ほどある。この休みの期間に仕事場に行くことがほぼないのが、日本との大きな違いだろうか。また、夏休みの期間に5週間ほど補習クラスや先取りクラスをとる生徒を教えることもできるが、これには別の給与が付くようになっている。

 余談にはなるが、夏休みなどの期間に、生徒に宿題や課題が出されることはほぼない。だから夏休み後に生徒はかなりのことを忘れている。2カ月の夏休みは長いと思うかもしれないが、この期間にメキシコやヨーロッパに旅行するなどして、仕事へのやる気を充電する教員も多い。

 全体の印象として、カナダの教員生活は時間的な余白が多い。1日の仕事時間、1年を通しての仕事日数など、ワークライフバランスは比較的取れている。幼い子供や親の介護などが必要になれば、仕事にかける時間の比重は下がるが、逆に時間的余裕があれば、どんどん授業改善をするような余白もある。自発的に、柔軟に動ける精神的余裕があるのだ。

 残念ながら、仕事としてただこなしているだけの教員も多いが、そのあたりも含めてカナダの教員は自己裁量権が大きい。教員という職業は、ある一定数の国民からの信頼をもとに成り立っている。


(梅木卓也=うめき・たくや 2007年度よりワーキングホリデーをきっかけに、カナダで学童保育や障害児サポートなどに携わり、19年度よりバンクーバー市の公立高校にて数学教員)

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