【未来へのハッシャダイ】 教師のワクワクを広げる

 本気の大人との出会いが、子どもたちの熱量を上げる――。高校などで若者が自分の力でキャリアを切り開くためのプログラムを展開しているHASSYADAI social(ハッシャダイソーシャル)では、子どもたちを支えたいと考えている教師や周囲の大人たちのコミュニティーづくりにも力を入れている。勝山恵一代表理事に聞くインタビューの第2回では、若者だけでなく教師もエンパワーメントするハッシャダイソーシャルの活動に着目した(全3回)。

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本気になった大人の熱量は、子どもたちにも伝染する

――高校現場からは、進路指導がかなりの負担になっているという話も聞きます。

 ハッシャダイソーシャルにとって、先生の役割はすごく重要なんです。先生は基礎的な学習指導から心身のケアまで、生徒に毎日ずっと関わり続けているわけです。先生方がそうやって生徒を日常的に支えてくれているからこそ、外から僕らが入ってきたときに、生徒たちのテンションが一気に上がるんだと思います。そういう意味で、僕らの役割はエナジードリンクみたいなものですね。

 でも、テンションはやっぱり、どこかで下がるじゃないですか。そうならないように、高い熱量を保ち続けるためには、やっぱり学校の先生の存在が大きいのです。だからこそ、僕らはそんな先生を支えられる取り組みもやっていきたいと考えています。

 個人的には、学校の先生と生徒の関係性だけで主体性を育てるのは難しいと感じています。今はオンラインも活用しながらいろいろな外部の団体とつながることができるし、地域の人だって関わりたいと思っている。そういうリソースをうまく活用して、非日常的な体験や熱量を持っている人が学校現場に関われたらいいなと思っています。

生徒の熱量を引き出すには、教師の役割が大切だと話す勝山代表理事

 そこで、これからはいろいろな地方に「HASSYADAI基地」を作って、若者を支援したいという地域の人材と高校をつなげるようなことをしたいと考えています。僕たちが「人の人生を変えたい」とか「教育を変えたい」とか言うのはおこがましいと思っていて、ただ、僕らの信じる熱量や思いを届けて、それに共感してくれた若者が「何か一歩を踏み出したい」と言い出してくれたらいいなと思っています。そして、その熱量をさらに高めてくれるコミュニティーをつくりたいと考えています。

 熱量は伝染するんですよ。僕らの本気が伝わって、その地域で若者の力になりたいと考えていた人が本気になって行動して、本気になった生徒とつながって伴走してくれたら、熱量はどんどん高まっていくはずです。

教師が夜な夜な集う「スナックハッシャダイ」

――学校の教師も、本当はそんな熱量を保ち続けて生徒と接したいはずです。

「先生自身にも自分の意思でやりたいと思うことを選択してもらいたい」と勝山代表理事

 そうなんです。それが一番いいんです。僕らの熱量に応えてくれて、本気になってくれる先生方もたくさんいます。「君らのおかげで、仕事が増えて大変になった」と皮肉を言う先生もいますが、その表情は生き生きしていて、前向きな大変さというか、見ていてすごく楽しそうなんですよね。

 そんなふうに、先生がもっと自分の仕事にワクワクして、元気になってもらいたいなと思って、コロナ禍になる前は「スナックハッシャダイ」というオフラインイベントを開いていました。月に一度、先生たちが僕らのオフィスに集まって、日々の実践や大事にしていることを、お酒を片手に語り合うんです。中には、群馬や山形、愛知など、遠くから参加してくれる先生もいて、多いときは50人くらい集まった会もあります。

愛情の格差をどう埋めるかを考え続ける三浦理事

 会場にはカラオケセットがあるんですが、十八番の曲を歌うのではなくて、マイクを持って自分の思いや実践についてしゃべるんです。すると、「俺にもしゃべらせろ」といろいろな先生が次々とマイクを握ります。イベントを通じて先生同士がつながって、新しい実践が始まるなんてことも珍しくありません。

 僕らは、先生方にも、自分の意思でやりたいと思うことを選択してもらいたいんです。若者向けに選択格差を是正するための機会を提供するだけじゃなくて、先生自身もエンパワーメントしていくような活動を広げていければと思っています。

――教師も自分の仕事への思いを語り合う場所を求めているんですね。

 そうなんです。みんなそんな場所を探し求めているんですよ、本当は。でも身近にない。だからそういう場所をいろいろなところにつくっていけたらと思っていて、今、北海道の高校の先生方と、グラウンドでたき火を囲みながら、先生同士が語り合う催しをやりたいねって話をしています。

若者にとっての「旅のお守り」

 ハッシャダイソーシャルの勝山代表理事と三浦宗一郎理事が、ハッシャダイソーシャルを設立する前から、㈱HASSYADAIが展開している事業が「ヤンキーインターン」だ。非行や引きこもり、非正規雇用など、厳しい状況にある若者に、パソコンや営業のスキルを身に付けさせた上で、企業に人材として紹介していく。参加者は半年間、東京都内で暮らすが、その家賃はHASSYADAIが負担するなど、経済面も含めて若者の再チャレンジを全面的に支援する。そんな「ヤンキーインターン」には、これまで500人近くの若者が参加し、有名企業に就職して活躍したり、自ら起業したりと、多くの人材を輩出してきた。

 もちろん、全ての若者が再チャレンジに成功するとは限らない。うまく結果が出ずに諦めてしまった若者もたくさん見てきた三浦理事は「肌感覚ですが、家族との関係が切れてしまっている人は、就職できても辞めてしまうケースが多い」と指摘する。その理由を三浦理事は「愛情の格差」と表現する。

 「家族からの愛情がずっと必要かと言えば、決してそうではないんです。ただ、つらくなったときに握りしめるような『旅のお守り』みたいな存在がそれなんです。お守りがないと、しんどいときに踏ん張れないんです」と三浦理事。親によって子どもの境遇が左右される「親ガチャ」という言葉が流行する中で、親からの愛情に代わるものを誰が子どもたちに渡していけるのか。三浦理事は次のように語る。

 「もしかしたら、その役割を担うのは、学校の先生かもしれないし、僕らみたいな第三者なのかもしれない。僕ら大人が一方的に話をするんじゃなくて、ちゃんと彼らと向き合って対話をする。そんなことを軸に、活動していきたいなという思いがあります」

(藤井孝良)

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【プロフィール】

勝山恵一(かつやま・けいいち) HASSYADAI social代表理事。1995年、京都府生まれ。高校をはじめ、少年院や児童養護施設などで講演を行いながら、さまざまな若者のキャリア支援プログラムを展開する。3児の父。

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