【北欧の教育最前線】 フィンランドの中退予防策・JOPOクラス

 JOPO(ヨポ)クラスとは、フィンランド語で「柔軟な基礎教育」を意味するJoustava Perusopetusの略称だ。学校に居場所を感じられず、いわば「不登校」の状態、もしくはそうなる可能性がある生徒を支援する学びの場で、主に9年生(日本の中学3年生に相当)を対象に全国で行われている。


実生活や職場体験を学びと結び付ける
「JOPO」と書かれている教室の扉。左上のVapaaは「自由」という意味

 オウル市では8、9年生対象に、市内の10校でJOPOクラスが設置されている。1クラス最大10人程度のため、希望者が全員入れるわけではない。本人の希望や保護者、教員の判断で、必要度合の高い人が選ばれる。

 担当教員は特別支援の免許を持っており、ユースワーカー、ソーシャルワーカーなど必要な関連職と協働する。しかし、JOPOクラスは特別支援学校や特別支援学級とは異なる。ここに来る生徒は、具体的な「障害」に合わせた対応が必要というよりも、複雑な理由によって学校の中に居場所を感じられず、学びへのモチベーションが下がり、学校へ行かなくなってきている状態にあることが多い。

JOPOの教室内

 JOPOに来る生徒は最初に、学ぶモチベーションや自信を取り戻す必要がある。教員は生徒一人一人の状況を見ながら、多様なアクティビティを学校内外で行う。活動はナショナル・カリキュラムに沿って、身の回りの社会現象から学ぶようにデザインされていて、問いやグループでの協働、プロジェクトなどのアクティビティをベースにしている。その際、10人程度の少人数グループで安心安全な信頼関係を築くことを重視している。

 実社会における職場体験に多くの時間を割くことで、働きながら学びへの意欲を高め、学びながら働くことを繰り返す。フィールドトリップやキャンプなど教室外での協働活動を通して、グループへの帰属意識を高め、幅広く学ぶ機会を得る。教員は、さまざまな専門職だけでなく、保護者とも密接に協働することで、生徒が基礎教育課程(日本の小中学校に相当)を安心して修了出来るようにサポートする。

90%が学習への取り組みを改善

 JOPOに通うことで90%の生徒は出席率、学習への取り組み状況を改善させ、基礎教育を修了することが出来ているという報告もある。

JOPOクラスの壁には高校や職業専門学校の学校案内が掲示されている

 例えば、ある少年は7年生に進級すると、学校に行く気力がなくなった。成績が下がり、欠席も増えた。その後、JOPOクラスへ進んだ。教員の丁寧な関わりがあったことと、かねてから興味のあった配管工の職場体験をすることで学習意欲を回復させ、職業専門学校への進学を目指し、中学校を卒業した。

 また、窃盗を繰り返す子がJOPOクラスへ入り、学校を中退することなく卒業できたという事例もある。その後も学び続け、現在、車のセールスマンとして働いている。

 筆者の知人も通っていたが、彼は小学校では特別支援の先生がついて少人数グループで学び、その後7年生になるタイミングからJOPOクラスに進み、彼自身に合ったペースで10年生(補習学年)まで進級し卒業した。職業専門学校へ進学したそうだ。彼を担当したJOPOの先生は「彼らは、少しの環境の変化と、ケアしてくれる信頼できる大人が必要だっただけだ」と話す。

JOPOクラスが設置されている学校の外観。冬季だと午後3時ごろでも暗い

 以前よりEU諸国では早期離学を減らすべく、さまざまな取り組みがなされている。EUのレポートでは2006年に始まったJOPOも取り上げられている。フィンランドでは21年秋より高校および職業専門学校の義務教育化が施行された。今後、高校でもこのような取り組みが広がるかもしれない。

 日本でも不登校の生徒向けの学校の設立、フリースクールの増加など、柔軟性を持った学びの場が増えている。教室外での実生活に寄せ、職場体験を重視した学びは、進学、その先の就職へと将来的な生徒の「自立」において重要な役割を担っている。


(田中潤子=たなか・じゅんこ。オウル大学教育学部修士課程修了、たなか家教育研究所主宰)

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