【北欧の教育最前線】掃除は仕事ではない! 教員組合が反発

 ノルウェーの学校では、日々の清掃は業者が行っている。しかし昨年、オスロ郊外の北フォロ市は経費削減のために新しい清掃スキームを提案し、教員組合の反発を買っている。


清掃員と学校の役割分担を導入

 新しい清掃スキームは、北フォロ市の公立施設を対象としたもので、学校や幼稚園(幼保一体化された施設)、高齢者施設など、市内のさまざまな施設の清掃基準を統一することで質を担保し、コストを抑えることを目指している。掃除する場所や頻度、業者と施設の役割分担などが検討された。

 昨年9月に出された学校の清掃スキーム案によると、調理室や図工室、トイレや廊下は毎日、教室は隔日、教員の作業部屋は週に3回の頻度で掃除される。また、清掃員が実施することと、学校が実施することが明記されている。問題となったのは、この役割分担だ。

 学校側に求められたのは、毎日教室を片付け、モップがけ・ほうきがけを行い、トイレを掃除する、外履きは室内では使用しない、教室が清掃対象になる日は椅子を机の上に乗せ、清掃員が掃除しやすいように準備する、そして、必要に応じてゴミ箱を空にする――といった内容だった。日本の学校では毎日、当然のように行われているような清掃活動である。

掃除は教師の仕事ではない!
北欧の学校では清掃員が掃除をする(写真はスウェーデン)

 しかし、北フォロ市の教員組合は「私たちはもちろん生徒に後片付けをすることは教えるが、それ以上の“清掃しやすくする準備”は教員や生徒がやるべきことではない」「生徒の授業時間と、教員の貴重な準備時間が奪われることが心配だ」と反発した。

 清掃スキーム案のヒアリングでは、学校関係者からの意見と思われるコメントと、自治体側のコメントが対立している様子も見られた。「黒板やホワイトボードは毎日清掃してほしい」という意見には、「教室の清掃は隔日とされており、節約のためにそれ以上には増やせない」というコメントがついた。「教師は清掃をするべきではない」という意見や、「清掃を担当できる職員がいない」という声もあった。「教員用の部屋は毎週掃除されるべきだ」という意見に対しては、「教員の部屋が事務室よりも多く掃除されなければならないのは何故か。教員自身が掃除すべきだ」という返答が、スマイルマークとともに記された。

“当番生徒”の役割に

 興味深いのは、自治体側は清掃準備のタスクを、教員ではなく生徒に課そうとしていることだ。ヒアリングのコメントでは、「清掃は、授業を担当する教職員が実施するのではなく、“当番生徒”がモップ掛けをし」「清掃日以外には黒板を掃除し、ごみを捨てる」とされた。北フォロ市の育成・学習課の担当者も「学校をきれいで楽しい場にすることは、生徒にとってよい学びになる」と述べている。

 当番生徒はノルウェーの学校では以前から運用されてきた。生徒が持ち回りで担当し、教室を整理整頓する。しかし教員組合のローデ氏によると、当番生徒の役割は子供たちが議論して決めることが多いため、自治体が節約のために当番生徒に仕事を課すのは伝統に反する。また、ノルウェーでは6歳から就学するため、特に低学年の子供たちが掃除をする際には教師のサポートが必須で、それは結局、教師の仕事になるのではないかと懸念されている。

 このスキーム案が運用されれば、学校関連に限っても約200万クローナ(約2500万円)の節約が実現できるという。市議会は、夏に再度この議題を取り上げ、改めて検討を行う予定だ。節約されたコストと、生徒・教員に課された新たな清掃タスクが、学校の教育活動にどのように影響するのか。自治体と学校の綱引きは続く。

(中田麗子=なかた・れいこ 東京大学大学院教育学研究科特任研究員、信州大学教育学部研究員。専門は比較教育学)

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