【庄子寛之教諭×渡辺道治教諭】 教室の工夫とオンライン授業

 GIGAスクール構想がスタートするなど、学校教育は今、大きく変わろうとしている。しかし、現場からは「業務量がさらに増えた」「難しい対応を迫られる児童生徒が増えた」「新しい学びにチャレンジする時間がない」などと、苦しい現状を訴える声も聞こえてくる。そうした状況がある中で、目の前の課題とどう向き合い、何を変えていけばよいのか――。ゲストに庄子寛之教諭(東京都調布市立多摩川小学校)と渡辺道治教諭(札幌市立屯田西小学校)を迎え、現場目線でこれからの教育について考えるオンライン対談を行った。(全3回の1回目)

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学年全員が使えるクールダウンスペース

――学校現場のリアルと課題について、お二人に伺っていきます。今回はそれぞれの教室の様子を撮ってきていただきました。まず、渡辺先生の教室を拝見します。庄子先生、何か気になるところはありますか。

渡辺教諭の教室の様子(写真1)

 庄子 まず、教室に入る前の場所に畳のスペース(写真1参照)がありますよね。これは、教室の外に、このスペースを作っているのがすごいですよね。そのあたり詳しく教えてください。

 渡辺 私は5年ほど前から、教室の中に畳のスペースを取り入れています。その良さを他の先生や子どもたちにも体感してもらいたいと思って、今年度はこのように学年全員が使えるよう、学年の入り口のスペースに作ってみたんです。教室の中はとても明るいのですが、ここは光の量も落ちるようにしています。

 庄子 なるほど、学年全体で使っているのですね。また、横長の教室をわざわざ縦長に使っていますよね(写真2参照)。黒板も2カ所あるなどカスタマイズされていますが、これは何か意味があるのですか?

渡辺教諭の教室の様子(写真2)

 渡辺 縦長に使っているのは、スペースが全体的に広くなるからです。クラスの中には、物理的な距離を取った方が安心する児童もいます。「公衆距離」といって、人と話しているときに3.5メートル以上離れていると、人は安全だと認識するそうです。逆に、45センチ未満の「密接距離」だと、一気に緊張感が高まるそうです。教室の中をワイドに活用する中で、こうした物理的な距離感をよりうまく運用できないかと考えていて、それが教室を縦長にした理由の一つです。

 庄子 そういうところから考えて工夫されているのが、すごくすてきですよね。この教室の奥の机(写真3参照)は何ですか?

渡辺教諭の教室の様子(写真3)

 渡辺 これは子どもが一人で学習を進めたいときなどに使っているスペースです。特別支援対応の一つとして机に囲いなどを付けて、視覚的な情報をできるだけ減らして授業に臨ませることがありますが、それと同様の考え方です。情報がある程度遮断されるので、自分の世界や学びに集中しやすいというメリットがあります。

 庄子 今、企業などではそうしたスペースがあるのが当たり前になってきていますし、立って仕事をした方がはかどる人がいることも分かってきています。一方、学校では「それは教室では無理だろう」と、何十年も変わらない状態です。そうした現状を変えて、実践されている渡辺学級は素晴らしいと思います。

庄子教諭の教室の様子(写真4)

――続いて、庄子先生の教室を拝見していきたいと思います。撮影していただいた時は、新型コロナ感染拡大の関係で学校閉鎖中だったそうですね。

 庄子 そうなんです。オンライン授業をしていた時でした。オンライン授業は立ってやる方がこちらのテンションも上がりますし、動きやすいんですよね。パソコンのキーボードもすぐに打てるような位置に配置しています(写真4参照)。

 渡辺 オンライン授業をやる際にはとても参考になりますね。あと、この木の掲示物(写真5参照)も気になります。これは何ですか?

庄子教諭の教室の様子(写真5)

 庄子 これは10年以上前に道徳の研究授業で使った教材で、「ハートの木」と呼んでいます。学期の最初に、各自が名前を書いたハート型のカードを机の上に置いて、それに他の児童がその子のいいところを書いていくんです。2学期も3学期も追加して、ハートを増やしていきます。

 渡辺 すてきな取り組みですね。教室の掲示の仕方は、先生によってかなり違うと思うのですが、庄子先生はどんなことを意識していますか?

 庄子 以前はもっと隙間なく掲示していたのですが、今は子どもたちに自由な場所を与えるように意識していますね。子どもたちが創造できるような余白を残すようにしています。

オンライン授業は、新しいことができるチャンス

――実際にオンライン授業に取り組まれて、どんなことを意識されましたか。

 庄子 まず、できないことを嘆くのではなく、「新しいことができるチャンスだ」というマインドでいることが大事だと思います。

 また、コロナの最初の頃とは違い、1人1台端末が配備されるなど、環境も整ってきています。うちの学校では、若手からベテランまでそれぞれが自分のやりたいことを提案して、取り組んでいくようにしました。

「オンライン授業は新しいことができるチャンス」と庄子教諭

 渡辺 具体的にはどんなやり方をしていたのですか?

 庄子 本校では、朝、昼、帰りのタイミングで子どもたちとつないでいました。常時つなぐことも出来るのですが、通信容量の問題もあります。何よりも、ずっとつないでいることが本当に子どもの学習のためなのかを考えたときに、そうではないと判断しました。

 リアルの教室でも、子どもたちに課題を与えて、個々に学習をしている時間がありますよね。オンラインの場合も、つなぎっぱなしにしない方が教員もしゃべりっぱなしにならないし、子どもたちの学ぶ環境が整うのではないかと考えました。

 具体的には、グーグル・クラスルームに時間割を提示し、オンラインの朝の会でその日にやることをある程度、解説します。そして、子どもたちが取り組んだ内容や感想を、グーグル・クラスルームに載せていくようにしていました。ノートを写真で撮って送れるので、教員側で何をやったのかが明確に把握できます。

 また、動画も撮って送れるので、例えば体育などで「体を動かした動画を送ってください」と言うと、次々と子どもたちから面白い動画が送られてきて、私も楽しませてもらいました。

 渡辺 うちの学校も感染への不安などから登校を控える児童がいるので、私はそうした児童にオンライン授業をしています。

 庄子先生がおっしゃるように、ずっとつなぎっぱなしというのは、お互いにとって良くないことがたくさんあります。保護者も学校とずっとつながっていると思うと、緊張されると思うんです。今のところ、オンラインでつなぐ時間は、1日1時間程度がベストかなと感じています。

 私は普段の授業でも、一斉授業をしているのは1日に1~2時間程度です。これは学級閉鎖や学校閉鎖になったときのことを見越しているのと同時に、私が担任を外れてからも子どもたちが自律して学び続けていけるようになってほしいという目的もあります。

「学び方に重点を置いて授業をしている」という渡辺教諭

 普段から自律して学習を進められるように、「学び方」に重点を置いて授業をしています。今年度は2年生を担任していますが、与えられた課題にどうやって取り組むかについては、しっかりと身に付いている状態です。なので、もし今後、オンライン授業が必要になったときも、スムーズに対応できると思います。

――オンライン授業をやってみて、何か気付きはありましたか。

 庄子 たくさんあります。例えばリアルの教室だと朝、教室に入ってきた瞬間に「○○さん、おはよう」と言えますが、結構、距離感があるんですよね。始業時間ギリギリに入ってきた子には、声は掛けるけれども届いていないということもあります。

 それがオンラインだと、画面越しではありますが、一人一人にちゃんと声を掛けられます。マスクもしていないし、顔もはっきり見えますから、相手に届くというメリットは感じました。

 また、いつも朝の学活のようなことをやっているのですが、例えば、私が「家の中のお気に入りのものを持ってきて話してください」と言うと、かわいがっている犬や猫、かわいい弟や妹を紹介してくれたりします。これはオンラインならではですよね。

 他にも、「プラレール好き」なある子がすごい作品を作っていることを知れたり、ある子はダンスが上手なことに驚いたり、いろいろと子どもたちを知れた喜びがありました。オンラインの良さは、たくさんあります。だから存分に生かした方がいいと思います。

(松井聡美)

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【プロフィール】

庄子寛之(しょうじ・ひろゆき) 
東京都調布市立多摩川小学校指導教諭。専門は道徳だが、ラクロス日本代表監督や教科書編集委員、教師のバトンプロジェクト、金融教育、がん教育など、さまざまなことに取り組んでいる。道徳や働き方改革、児童生徒理解などについて全国各地で講演している。現在は島が教育の未来と考えた「島の教育サミット」を主宰。『学級担任のための残業ゼロの仕事のルール』(明治図書)など著書多数。

渡辺道治(わたなべ・みちはる)  
2006年、北海道教育大学卒業。同年より奈良県天理小学校にて勤務。16年、グローバル教育コンクール特別賞受賞。17年より札幌市立屯田西小学校にて勤務。教員の仕事の傍ら、年20回ほどの講演活動、福祉施設や医療施設での演奏活動、書籍・雑誌・新聞などの執筆活動を展開する。ユネスコやJICAによるアジアを中心とした国際交流事業や、初等教育算数能力向上プロジェクト(PAAME)においてアフリカの教育支援にも携わるなど、内外において精力的に活動中。著書に『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』(学事出版)、『心を育てる語り』(東洋館出版)、『BBQ型学級経営』(東洋館出版)など。

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