【モンゴル編】 教師の日、入学式・卒業式、通知表と制服

憧れの先生

 モンゴルで2月第1週末は、教師の日である。この日は、高校生(12年生)が教師の代わりを務め、下級生を世話したり授業をしたりする。モンゴルの学校は小中高の一貫教育なので、各学校の最高学年が小中学生の学級へ行き、授業を行う。内容は事前に教員と相談して、準備しておいたものだ。普段の制服姿から、シャツやワンピースに着替え、化粧もして、本物の教員かと見間違う姿で登場する。

 反対に、教員はというと生徒役になり、教室の後ろに座ってノートをとっている。頭からはみ出るほどの大きなリボンを髪に付けるのが、モンゴルの昔ながらの女学生姿で、久々に制服を着た教員は学生時代を振り返って楽しそうである。

 午後からは、街中の教員が文化会館に集まり、表彰式が行われる。地元のダンサーや歌手のステージもあり、毎年盛大に開催される。この表彰は、年に数回ある授業コンクール(各学校の教員が指導案と模擬授業を競い合う大会)で入賞したり、教育委員会の要請に協力したりした「教員の手本」となる人に贈られるものである。

 教員は、生徒の憧れの職業ではあるが、家計を一人で支える女性教員も多く、収入は十分でないという。副業をしている教員が多くいることも事実である。中国から安く仕入れた品物を、車のトランクに並べ、学校で同僚や保護者に売っている様子をよく見掛けた。また、若い教員は、給料が低いので、校長や教頭などに自分をアピールする意味でも、授業づくりに熱心に励み、この表彰式で賞をもらいたいと考えている。

 いずれにしろ、この日は、生徒たちからの手紙やプレゼントをたくさん受け取り、日常の大変なことを忘れ、教員になってよかったな、すてきな職業だなと感じることができる。

入学式と卒業式

 モンゴルの入学式は、9月1日だ。青空の下、コスモスの桃色の花が揺れる中で、新入生のかわいらしい声が聞こえる。

入学式

 式は野外で行われる。校庭に教員や各学年の代表(成績が上位の生徒)が集まり、歓迎の踊りや歌を披露する。新1年生の担任があいさつをして、子どもたちと保護者を連れて、教室に入っていく。そして、初めての授業と給食の時間を一緒に過ごすのである。緊張気味の初々しい子どもたちと、わが子の晴れ姿を写真に収めようと必死な保護者の様子を見て、ふと、こうした行事での雰囲気は日本と同じだなと思った。

 一方、卒業式は6月末の夏休み前にある。卒業式は、モンゴル語でホンフニーバヤル、「鐘のお祝い」という意味がある。実際に卒業生代表が鐘を鳴らすのが、この行事のメインである。

卒業式

 まず、花束を抱えた担任を先頭に、各学級代表2人が勲章やバッジをジャラジャラと付けたタスキをかけて入場する。お祝いの歌や踊りの後は、各学級代表が前に出て、学級紹介や思い出話をする。そして最後には、学級代表が鐘を鳴らしながら校庭を一周するのだ。

 夏の日差しの中で行われる明るく爽やかな式の様子は、荘厳さのある日本の卒業式とは異なるが、学生時代の終了をお祝いする、寂しくも節目を迎える特別な気持ちは共通している。

通知表と制服

 モンゴルの友人の家でご飯をいただいた時のこと。ふと彼女の学生時代の話になった。どこからか、アルバムや通知表、当時着ていた服、スポーツや芸術の大会の賞状やバッジなどが入った宝箱を持ってきて、中身を見せてくれた。実際、小柄な私がしゃがめば入ることができるであろうという大きさの箱である。

通知表

 そこに通知表があった。各教科においてA~Eの5段階評価と思われる部分と、コメント欄がある。友人は、それを見ながら懐かしそうに得意だった教科の話、苦手だった教員や課題の話を聞かせてくれた。ほぼA評価だった彼女の成績表は、日本人の私から見てもまぶしかった。小さいときに履いていた靴、お守り、家族写真などが入っている宝箱から出てきたところを見ると、通知表も彼女の宝の一つになっているようであった。

 制服はと尋ねると、貧しい親戚にあげたという。モンゴルでは、公立の小学部~高校まで、全国で同じ制服を使用するため、ほとんどの人が年下の兄弟や親戚にあげるのだそうだ。全国統一というのは家計に易しいが、地域性や各校のオリジナリティーは減ってしまう。そこで学級によって担任や保護者と相談し、おそろいの運動着を買ったり、テーマカラーの髪飾りや靴下を身に付けたりする文化がある。一部の保護者が、学級全員に同じものをプレゼントするということもあるそうだ。

 モンゴルと日本の学校の様子は異なるが、学びの場であるという以上に、それぞれの生徒や教員にとって、特別で大切な思い出をつくっている場所なのだと確信した。

(佐藤恵理子=さとう・えりこ 岐阜県で小学校教員として勤務後、JICA海外協力隊としてモンゴルに赴任。コロナ禍により帰国)

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集