【北欧の教育最前線】コロナ禍で変化 ノルウェーの幼稚園の給食問題

 ノルウェーの学校では、伝統的に給食が提供されないが、幼稚園(幼保一体化された施設)では食事が提供されることが多かった。子どもが長時間滞在することや、幼児は小学校以上の生徒よりも頻繁に食事をとる必要があることが背景にあるのだろう。しかし、コロナ禍により、幼稚園の食事提供を巡って変化が生じている。


食事提供なしの園が増加

 ノルウェーの保健庁によると、幼稚園は日に3回(朝食、ランチ、午後の食事)の食事時間を設けることが望ましく、それらは給食として園が提供してもいいし、子どもたちが持参しても良い。ある調査によると、コロナ禍以前は、ほとんどの幼稚園で食事が提供されており、3回の食事を提供する園も半数程度あった。ここには果物、ヨーグルト、野菜などの間食的なものも含まれるが、多くの場合、保護者はさほど食べ物の心配をせずに子どもを園に預けられていたと言える。

 新型コロナウイルスの影響で、2020年3月に幼稚園が閉鎖されたことで、この状況に変化が生じた。幼稚園はその後、感染防止策を講じながら再開されたが、同年11月ごろには、1回も食事を提供しない園が17.5%まで増えた。感染防止ガイドラインからは食事提供に関する制限がほぼなくなっていたが、完全に食事提供なし、あるいは食事提供を減らした園があったようだ。

保護者と園の認識の差

 食事が提供されない場合にはお弁当を持参しなければならないため、保護者にとっては負担となる。そのため、朝食を幼稚園で食べる習慣のあった家庭からは、不満の声が聞かれたという。

幼稚園に持参する朝食ランチパック(撮影:ハンナ・ハフスタ氏)

 一方、教職員からは食事提供しないことを歓迎する声もあった。食事提供のために特別に人員を配置する園もあるが、多くの園は、保育を行う教職員が食事の準備や片付けにも携わる。食事提供にかかる時間が減ることで、より多くの時間を子どもたちと過ごせるようになったという報告も聞かれた。コロナ禍では、子どもたちをより小さいグループに分けたり、感染対策の手間が増えたりしたため、まさに人員不足が原因で食事提供を減らした(なくした)という園もあったようだ。

 ノルウェーのお弁当は「ランチパック」と呼ばれ、通常、パンにチーズやハムをのせたオープンサンドイッチと、生野菜や果物のことが多い。「ランチパック」の場合、準備や片付けも楽で、遠足や野外活動の際に手軽に持っていけるというメリットを指摘する声もあった。

誰が食事の責任をもつのか? 家庭と園の綱引き

 20年9月の時点で、国の感染防止ガイドラインには、「園での食事は通常の方針に従って提供して良い。Covid-19が食事を通して感染するという証拠はない」と明記された。しかし、その後も食事を提供しないか、回数を減らしたままの園があった。コロナ禍をきっかけに、食事提供からランチパック持参に移行した園もあるという。また、制限がほぼ撤廃された現在でも、引き続き朝食だけはランチパックを持参しなければいけない場合もある。

 学校給食の是非は、栄養面、財政面、そして家庭の役割などの観点から論じられてきた。学校給食が提供されなくなった理由の一つは、20世紀半ば、当時は専業主婦が多く、食事の提供は家庭の責任だという認識があったことだった。幼児に対する食事提供の責任も、一部を家庭に戻すという流れになるのだろうか。あるいは、社会的不平等を是正するために、幼稚園の人員やリソースを増やしてでも、また食事提供を元に戻していくのだろうか。

 給食論争からは、コロナ禍の影響にとどまらない、幼稚園を巡る社会や政策の揺らぎが垣間見られる。

※コロナ禍のノルウェーの幼稚園の様子については、園山大祐・辻野けんま編著『コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか―子ども・保護者・学校・教育行政に迫る』(東洋館出版社、2022年)を参照。

(中田麗子=なかた・れいこ 信州大学教育学部研究員。専門は比較教育学)

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