【北欧の教育最前線】 学校の食堂で高齢者がランチ

 スウェーデンの学校給食はビュッフェ形式が多く、子どもたちは食堂に集まって食べる。今年、ウプサラ市では市内の18の学校で、高齢者のための昼食提供を始めた。子どもたちに交じって、近隣の高齢者が安価で給食を食べられる。


孫と一緒にランチを

 ウプサラ市では、高齢者に昼食を提供する「シニアランチ」プロジェクトを進めている。背景には、1人暮らしの高齢者の孤独感を和らげ、ウプサラ市を高齢者に優しい街にするという目的がある。市は2020年に3校でパイロットプロジェクトを始めた。当時の報道では、アルムンゲ基礎学校(日本の小中学校に相当)にランチを食べに来た高齢者が、孫に学校で会えることを喜んでいた。子どもたちに交ざってテーブルにつき、ビュッフェを楽しんだ。

ウプサラ市のある高校の給食ビュッフェの様子。野菜も豊富

 プロジェクトは、新型コロナウイルス感染拡大により中断していたが、今年、参加校を18に増やして再開した。ある地域では、地域住人がメンバーとなっているSNS上で、シニアランチが地元の学校で始まることが宣伝されていた。

 スウェーデン公共放送(SVT)はシニアランチの様子を「若者とのランチデート」と題して報じた。お友達数人でゴーブスタ基礎学校を訪れた高齢者たちは「子どもたちは興味津々で、何歳なのか、どうして学校にいるのか、いろいろと質問された。子どもたちと話すのは楽しい」と話した。高学年の子どもは「高齢者が他の高齢者と交流することはいいことだし、いろいろな年齢層が交流できるのもいい。社会におけるグループ化を減らすことができる」と話した。

食後にコーヒーも

 子どもたちにとっては無料の給食だが、高齢者は50クローナ(約650円)を負担する。スウェーデンでは外食が高く、ファストフードのハンバーガーセットでも一食2000円くらいかかる。シニアランチでは安価で栄養バランスの考えられた食事が食べられる。

高齢者は有料だが安価で提供される

 メニューは通常の学校給食のメニューだ。日替わりで、グリルチキンや魚のグラタン、豆の煮込みやラザニア、ライスやじゃがいもなど多様なメニューが提供される。毎日野菜もある。

 ただ、子どもと高齢者では人気メニューが異なるかもしれない。ある日のテーブルでは、子どもたちのお皿にはチリコンカン、高齢者のお皿にはキャベツのグラタンが盛られていたという。市の給食担当者は、高齢者にたくさん来てもらえるよう、おいしい食事を作りたいと意欲的だ。子どもたちはあまり飲まないだろうが、大人にはうれしい食後のコーヒーもついているという。

三方に“おいしい施策”

 それまでも、ウプサラ市には高齢者に安価な食事を提供するシニアレストランが存在した。現在、7つのシニアレストランがあり、高齢者は60クローナでランチを食べられるが、一般の人も85クローナで食事ができる。シニアランチを提供する学校と合わせると、高齢者が気軽に集える食事処が15カ所あるということになる。

 ウプサラ市では、公的な食事はモールティーズサービスという内部サプライヤーが提供している。プリスクール(幼保一体化された施設)、基礎学校、高校の給食、高齢者住宅やシニアレストランの食事だ。教育施設と高齢者福祉施設の食事提供の事業者が同じであることが、この取り組みを可能にしている。

 「学校でシニアランチ」は、子どもたちにとっては高齢者との交流が日常的に生まれ、高齢者は孤立せずに知り合いや若者と栄養バランスの取れた食事を楽しむことができ、そして市にとっては福祉と教育の側面を併せ持つプロジェクトだといえる。少子高齢化の時代に“おいしい施策”かもしれない。

(中田麗子=なかた・れいこ 信州大学教育学部研究員。専門は比較教育学)

この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集