タイの髪形校則問題 若者は「Bad Student運動」も

 日本では過剰な校則は「ブラック校則」と呼ばれ、子どもや保護者から変更を求める声も出ている。議論の根底には、学校教育の本質が関わっている。生徒を規則に従順に従うように教育するのか、それとも主体的に判断し、自ら責任を取れるように教育するのかという基本的な問題である。そしてそれは、日本に限った問題ではない。

 タイの『バンコック・ポスト』(5月3日付)は「学校における強制的な髪形校則に関する広告が権利と自由についての議論に火をつけた」と題する記事を掲載した。同紙によると、米国の日常用品の製造企業が「#LetHerGrow」と題するキャンペーンを始め、2分間のビデオメッセージの中で「強制的な髪形校則は少女から髪以上のものを奪う。少女から自信と自尊心を奪い、学校でのやる気を削ぐことになる」と訴えた。さらに「異なった世代の女性は絶対的な自由の下で自分の髪形を決めることで、自分の自信を表現することができる」というメッセージを発信した。同紙は「この会社は、タイの女性が髪形を通して自由を表現できるようにするためにキャンペーンを行ったと説明している」と伝えている。

 このキャンペーンは多くの反響を呼んだ。大手不動産会社の最高経営責任者はツイッターで「私たちが切っているのは少女の髪以上のものだ。それは少女の自信と自尊心と自分の意見を述べる勇気である」と述べている。また他のツイッターでも「強制的な髪形は少女の権利を侵害するものだ」とキャンペーンに同調する発信もあった。

 実はタイ教育省は2020年に、学校における男女生徒の髪形に関する規制を廃止している。現在は「生徒の髪形は学校長が適切と見なすものでなければならない」と書かれており、実質的に学校長の判断に委ねられているのが実情である。

 さらに5月18日付の同紙は「教育省は髪形の判断は学校の決定に委ねている」と題する続報を掲載。その中で、髪形の決定権は学校にあるという教育大臣の発言を紹介しつつ、同時に同大臣が「髪形校則を破った生徒に厳しい罰則を科してはならない。校則はあくまで生徒が学校で規律を学ぶためのものである」という発言も載せている。

 しかし学校現場では、教育省の意図に反するような懲罰的行為が行われている。昨年11月、カムペーンペット県の学校では、学校の髪形校則を守っていない生徒の教室への入室を禁止した。その際、同校の校長は「短い髪形に関しては学校と両親、生徒会で合意されたものだ」とその正当性を主張した。

 こうした中で、国の教育方針に反対する若者らのグループが「Bad Student運動」を展開し始め、「一部の学校は教育省の規制の狙いを無視して、極めて短い髪形を強制している」と訴えている。同グループは「#freehairstyle」というバナーを立ち上げ、髪形に関する規制解除を求めているほか、「自由な髪形と教育改革」を訴えるプラカードを掲げて抗議活動を行ったことも伝えられている。

 もっとも、学校の規制は髪形に留まっていない。一部の学校では、国家斉唱に際して起立しなかったり、大きな声で歌わなかったりした生徒に対して「good behavior score」を減点する規則を適用している。日本でいえば、それは内申点が悪くなることを意味する。

 具体的には、起立しなかった場合は10点減点、大きな声で歌わなかった場合は5点減点、「良い生徒でない」場合は10点減点、宗教活動に参加しなかった場合は5点減点されることになっている。

 こうした学校の厳しい規則に対して、Bad Studentのグループは「学校長は入学式の際、学校のルールを受け入れられないなら退学すべきだと語った」と、学校の対応を批判している。

 タイでの議論は、日本での議論とも重なる。議論のベースラインは、生徒をどこまで信用し、生徒の成長をどこまで期待するかにあるのではないか。規則に縛られたところから、新しい発想も行動も決して出てこないのは明白である。

(中岡望=なかおか・のぞむ ジャーナリスト)

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