グループワークをさらに進化させた「チーム学習」。学級運営にスポーツマネジメントを応用し、それぞれの児童の個性を生かす“先生が教え過ぎない授業”だ。元神奈川県公立小学校教諭で、現在は佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団理事を務める桑原昌之氏に、「チーム学習」を成り立たせるための、居心地のよい学級づくりの秘訣(ひけつ)を聞いた。2回目は、桑原氏の教員人生の変遷をたどる。
■教師とサッカークラブコーチの駆け出し
――「チーム学習」を取り入れる前は、どんな教員でしたか?
自分自身が小・中学校で出会ってきた先生たちが、たまたま個を尊重してくれる方々だったこともあり、高校生の時に教員を目指して大学へ進むことを決めました。しかし大学卒業後すぐは採用されず、非常勤で高校の保健体育講師を勤め、25歳の時に正規採用となり、神奈川県伊勢原市の公立小学校に勤務しました。 最初は、自分の中にあった「教師はこうあるべきなんじゃないか」という理想像に従って、必死になって型通りの一斉授業をしていました。しかし、1人で児童全員の学びの姿を細かく見ていくのが、とても大変でした。どうしても「置いて行ってしまう子」が生まれてしまうのです。その存在に気づいても、スケジュール通りに授業をこなすことに必死だったので、なんだか自分自身が苦しくなってしまうことがありました。 地域のサッカークラブのコーチをしている時も、同じ課題にぶち当たることがありました。……

文科省が公表した2018年度の全国学力・学習状況調査の結果は、小学校の算数B、中学校の数学Aと理科以外で前回調査よりも平均正答率が下がった。同省では今回から調査結果の公表時期を前倒しし、各学校に対して2学期からの授業改善に活用するよう促している。各教科の問題、質問紙から見えてきた課題とは――。


主体的な学びに向けた脱一斉授業の取り組みの中で、グループワークをさらに進化させた「チーム学習」というものがある。それは学級運営にスポーツマネジメントを応用し、それぞれの児童の個性を生かす“先生が教え過ぎない授業”。元神奈川県公立小学校教諭で、現在は佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団理事を務める桑原昌之氏に、チャレンジとリスペクト、スマイルがあふれる「チーム学習」を成り立たせるための、居心地のよい学級づくりの秘訣(ひけつ)を聞いた。1回目は、「チーム学習」と「学級の居心地の良さ」の関係に迫る。
■「チーム学習」は居心地の良い教室で成り立つ
――桑原流「チーム学習」は、スポーツマネジメント理論を学級運営に応用した非常にユニークな手法だと感じます。「学級チームビルディング」とは、つまり何でしょうか?
異なる能力や思考を持った児童たちのそれぞれの個性を生かしながら、みんなで「居心地の良い教室を作る」という、共通の目標に向かって進んでいける状態を築くことです。例えばサッカーでは、メンバーの能力やプレースタイルはさまざまで、個々が担っている役割も違う。メンバー皆が、それぞれの個性や強みを生かしながら、それぞれのやり方でゴールを目指します。皆が同じ能力を持っている必要はなく、自分の得意なことをチーム全体のために生かしていく。それをそのまま、教室でもやろうと考えつきました。 チームの定義もさまざまあると思いますが、「チーム」を「グループ」との違いで分かりやすく説明すると、「グループ」は共通の好みや思考を持つメンバーが群れている状態。例えば女の子はよく好きなアーティストの共通性で「グループ」を作りますが、「グループ」は同質性を好み、好みや思考が異なる友達を排除しようという動きが起きやすいです。 一方で「チーム」の方は、異なる個性を持つメンバーで構成され、異質性に対して寛容な集団。学級には、それぞれが異なる物語を生きている児童たちが集まっているわけなので、「チーム」としての学級運営が適していると感じます。……

産学官の有志が結集し、より良い教育の実現に向けてチャレンジする「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」。事務局の中心である文科省の佐藤悠樹氏、弓岡美菜氏、堀川拓郎氏へのインタビュー後半は、同プラットフォームの可能性や、それぞれの教育への考えを語ってもらった。  
■実践の具体的な中身まで踏み込んで議論できる
――「教育長・校長プラットフォーム」だからできることは。
佐藤 その地域ごとの「地に足のついたチャレンジ」というのは、具体的な中身や背景にまで踏み込んで議論をしないと意味がない。そこまで踏み込んでやれる場というのは、珍しいと思います。総会でも、皆さんが自分たちの地域に引き寄せてお話ししてくださって、「うちでは……」という声が多発していました。 堀川 校長先生や教育長の方々が集まる場として、オフィシャルに集められた行政がやっている研修などはあります。一方で、このプラットフォームは、参加者全員がプライベートで、自由な意思で参加されています。だからこそ本音の話や、フランクに語り合う雰囲気ができることもあるのではないかと思っています。 佐藤 対外的には言いづらいけれど本質的な課題が誰しもあります。……

より良い教育の実現に向けてチャレンジしようと産学官の有志が結集し、今年3月に設立された「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」。実践者がつながり、試行的に取り組む集まりとして注目されている。立ち上げたのは、文科省の若手職員ら。事務局の運営などを、文科省の仕事ではなく「課外活動」として行っているという。設立のきっかけや展望などを聞いた。
■実践者同士がノウハウを惜しみなく共有する場
――「教育長・校長プラットフォーム」を立ち上げた理由は。
佐藤 私は入省10年目なのですが、教育現場で良い取り組みがあまた起きていることを、身をもって知る機会が増えてきました。一方で、良い取り組みをしている先生同士で、そういった動向が知れ渡っているかというと、意外とそうでもない。 そこで、良い取り組みをしている実践者同士が、ノウハウを惜しみなく共有する場を作り、どんどん広げていきたいと思ったのが、このプラットフォームを作るきっかけです。……

教員の長時間労働是正に向けて、タイムカード導入による勤務時間管理や学校閉庁日の設定、部活動の見直しなど、各自治体でさまざまな業務改善が始まっている。現場に働き方改革を円滑に浸透させるには、どのようなポイントがあるのか。各地に先駆けて取り組んでいる横浜市と埼玉県戸田市を取材した。両市の働き方改革の進め方に着目すると、「当事者の納得感をいかに得るか」の重要性が垣間見えてきた。(藤井孝良)
■サーベイフィードバックによる教員研修
「あなたの職場はお互いの仕事の状況を把握し合えていますか。話し合ってみてください」――。6月18日夕、横浜市教委の研修室で、管理職を含む同市立小・中学校の教員ら約40人が集まり、働き方の改善をテーマにしたワークショップ型研修会が行われた。 同市では、中原淳立教大学教授の研究室と共同で、サーベイフィードバックと呼ばれる組織開発手法に基づく研修プログラムづくりを進めている。サーベイフィードバックとは、組織の健全性に関する分析結果を回答者に提示し、それを基に対話によって問題を解決する手法。同市は昨年、教員の働き方と意識の関係についてアンケートを実施した。研修会に参加したのは調査対象校の教職員で、その結果を当事者に返しながら、働き方の問題に気付かせ、意識変革を起こすのが目的だった。 同調査によると、調査した直近3日間の教員の平均労働時間は1日あたり11時間42分、1日あたりの労働時間が12時間以上の教員は全体の42.0%に上った。……

新学習指導要領への移行で授業数の確保が喫緊の課題に挙げられるなか、打開策のひとつとして注目されているのが「午前5時間制」。いち早く2002年から導入した東京都目黒区は、今年17年目を迎える。昨年度からは文科省から調査研究委託を受けており、現在区内の小学校7校で実施している。 「午前5時間制」は「カリキュラム・マネジメントの一環として非常に有益」だと語る区教委の尾﨑富雄教育長。9月には区立中目黒小学校での研究発表会も控える。尾崎教育長と田中浩教育指導課長に、制度の本質と効果を聞いた。
――02年から「午前5時間制」を導入した。区としての狙いは。
尾﨑 1単位時間を40分間とし、集中力の高い午前中に5単位時間の学習を行い、「学力の定着・向上」や「午後の時間にゆとりを生み出し、各学校の実態に合わせた活用」を図ることが目的。 新学習指導要領の施行で、授業コマ数の確保が全国の学校で急務となっている。その解決策としても有力視されており、区にとってもカリキュラム・マネジメントとして非常に有益だと感じる。
――実際に従来の形態と、どのように違うのか。
尾﨑 午前に5コマ分の授業を終える。……

月額給与の4%に相当する額を基準として教職調整額を支給する代わりに、時間外勤務手当や休日勤務手当の支給を行わないことを定めた「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」。学校における働き方改革をめぐる議論でも、教員の長時間労働の一因として問題視されている。この給特法の見直しを求め、署名活動を始めた高校教員の斉藤ひでみ氏(仮名)と、さまざまなデータを基に部活動や働き方の問題を指摘している内田良名古屋大学准教授が、給特法の問題を世に問う『教師のブラック残業―「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!―』(学陽書房刊、1600円+税)を緊急出版した。なぜ今、給特法を見直す必要があるのか。2人へのインタビューからその核心に迫る。
■給特法が諸悪の根源
――給特法が問題だと感じたきっかけは。
斉藤 教員として最初に赴任したのは定時制高校で、生徒の主体性を尊重し、授業を大切にしていこうという雰囲気があった。部活動も生徒の意向を尊重し、やりたい生徒がやりたいだけ取り組むもので、理想的な教育現場だった。ところが異動先の学校では、授業研究をする時間的余裕はなく、部活動指導や入試に向けた補習、模試などで土日も追われている。雑多な仕事に疲弊する中で、なぜこんな状況になってしまったのか考え続けていた。 そのとき、内田准教授の『ブラック部活動―子どもと先生の苦しみに向き合う―』(東洋館出版刊)の中にあった、「給特法が諸悪の根源だ」という言葉がとても印象深かった。zそれ以来、給特法について調べ、学校現場が抱えている矛盾の多くが給特法の問題から端を発していると気付いた。 次から次へと仕事が振られるが、それらを全て行うと、到底勤務時間内には終わらない。しかし、勤務時間外の補償は支払われない。……

教員の実感をデータで見える化したことで、頑張っている教員が評価され、エビデンスに基づいた教育施策が実現するようになる。4年間にわたる埼玉県学力調査のデータから、学力を伸ばすには「主体的・対話的で深い学び」と学級経営が関係し、いずれにおいても非認知能力が鍵となっていることが分かってきた。そして、この埼玉県学力調査をOECDも注目しているという。開発に携わった大江耕太郎文化庁文化部芸術文化課文化活動振興室長と、大根田頼尚文科省高等教育局国立大学法人支援課課長補佐へのインタビュー後半では、埼玉県学力調査の可能性に迫る。
■非認知能力が学力を伸ばしている ――埼玉の学力調査の分析で、どのような指導が学力を伸ばしていることが分かったのか。 大根田 分析を通じて、非認知能力が学力を伸ばすのに大きく貢献していることが分かってきた。非認知能力を調査対象として入れたのには二つ理由がある。どうすると学力が伸びるかを、われわれは見つけたかった。基本的な知識・技能や、それらを応用する力を伸ばすにはどうしたらいいかを調べていると、非認知能力や学びに向かう態度が伸びている子は学力が伸びているという先行研究があった。この研究で示された仮説に基づけば、学校として重要視すべき点が分かってくると考えた。 もう一つは、学校の受け止めの問題として、「学力だけを伸ばせばいい」というスタンスに対して、非常に抵抗があるだろうと思ったからだ。……

OECDも注目する埼玉県学力・学習状況調査(埼玉県学力調査)の仕組みと、その分析結果から見えてきた教育効果とは――。全国学力調査に合わせ、各都道府県では独自に学力調査を行っていることが多い。中でも埼玉県が行っている学力調査は、個々の児童生徒の「学力の伸び」を測れる画期的な調査だ。当時、同県に出向し、その学力調査の開発に携わった大江耕太郎文化庁文化部芸術文化課文化活動振興室長と、大根田頼尚文科省高等教育局国立大学法人支援課課長補佐に聞いた。
■IRTによる縦断調査
――埼玉県学力調査は、全国学力調査や他県の学力調査と何が違うのか。
大江 大きな違いは二つある。一つは、一人一人の子供を追跡していく、パネルデータによる縦断調査という点だ。埼玉県では個々の児童生徒にコードを割り当てて追跡できるようにし、小4から中3までの約30万人の児童生徒のデータを収集、分析している。 もう一つは、問題の難易度設定や児童生徒の能力測定に、IRT(項目反応理論)という統計理論を使っている点だ。IRTによって、テストごとに出る問題が違っても能力を測ることができる。パネルデータとIRTを合わせている調査はおそらく全国的になく、これほど大規模にやっているのは世界的にもないと思われる。
――IRTとは、具体的にどういうものか。
大江 身近なものでは、TOEFLなどの資格検定試験で多く利用されている。……

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