「未来を生き抜く教師」をテーマに、自立・探究型の学びを追求し続ける炭谷俊樹氏(ラーンネット・グローバルスクール代表)と、「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」でグランプリを受賞した蓑手章吾教諭(東京都小金井市立前原小学校)が、教育新聞主催の公開対談で語り合った。コーディネーターは、一般社団法人Teacher's Lab.代表理事の宮田純也氏。

午前8時20分。教室に子どもたちと担任が顔をあわせ1日が始まる。9月半ば、千葉県我孫子市立並木小学校(木村光宏校長・児童数400人)の3年2組の教室では、城戸歩維教諭が、「おはようございます! きょうは木曜日だから、なみきっずタイムは英語ね」と言い、健康観察を始めた。

県独自の継続的な学力・学習調査と分析で授業改善を実現――。平成28年度全国学力・学習状況調査の、全問題を総合した都道府県別の結果では、小・中学校ともに、福井、秋田の両県が最上位を維持。小学校では、国語B以外で石川県が秋田県を抜いてトップとなった。沖縄県は昨年同様に成績を上げ、今年度は全科目で全国平均正答率を上回った。上位3県の教委担当者に、授業改善の継続的な取り組みなどについて尋ねた。 石川県 大学と協働で分析し学校にフィードバック   石川県教委の学校指導課は「昨年度に続いて基礎、応用の両面で高い学力が維持できていると確認した」と振り返る。「ここ数年で大きく変化させた取り組みはない」としながらも、継続してきた3点の取り組みを示す。 ベースは「なんといっても現場教員の指導力向上への熱意と子供たちの学びへの意欲と努力」。それらを支援する取り組みの1つとして、平成14年度から県独自に進めてきた県内公立小・中学校での「基礎学力調査」を挙げる。 国による学力調査の問題内容と重ならないように、小学校4、6年生と中学校3年生を対象に実施。調査結果は冊子にまとめ、県内各校に配布している。これによって学校が子供たちの基礎学力状況をしっかり把握し、それぞれの課題を踏まえた授業改善を進める状況を作っている。 2つ目は、21年度から県教委と金沢大学が協働して実施する全国学力調査の分析とフィードバック。子供たちの良い点と改善すべき点に基づく具体的な指導改善策や事例を学校現場に届けている。 県の中長期的な学力育成の方向性を示すために策定された「いしかわ学びの指針12か条」の意義も大きいという。全国学力調査の分析成果と未来の学びを見据え、▽活用力▽学びを支える基盤▽指導改善を進める体制づくり――という指導の視点を押さえた。 同県が全国学力調査で好成績を維持する大きな一要素となっている「より良い学習習慣、生活習慣の定着」も含みながら、確かな学びを支えている。 秋田県 学校・家庭・地域連携の「オール秋田」で   秋田県教委の義務教育課学力向上推進班は、「全国学力調査を受けて何か特別な対策をするという視点はない」と強調。継続的な好成績の要因は、教育の大きな目標である「人格形成」を見据え、「学校・家庭・地域の『オール秋田』で教育を推進してきたためでは」と意義を振り返る。 全国調査の学習状況では、児童生徒の学びと学校に関する質問紙への回答で、秋田の子供たちの道徳性や規範意識、家庭での学習習慣の定着、授業満足度の高さが示されている点にも注目している。 平成14年度から進めている県独自の学習・学力調査と授業改善の成果も指摘する。調査は県内小学校4年生から中学校2年生までを対象に実施。毎年4月に行い、6月には結果分析をするスピーディーな運用が特徴。各学校の授業改善にすぐに生かせる情報のフィードバックを実現している。 多くの教員が高い同僚性を持ち、学年や教科を超えた協働研究が盛んなのも、授業改善につながっていると話す。 福井県 幼児期から高卒までの教育に系統性   福井県教委義務教育課は同県独自の▽少人数指導体制▽学力調査を継続実施し、指導改善事例集を発行▽幼児期から高卒まで系統性のある指導と授業改善――などを全国学力調査の好結果に結び付く要因と考えている。 少人数指導体制は、平成16年度から検討。昨年から県内公立小学校1~4年生で35人、中学校1年生で30人の学級規模を実現し、きめ細やかな指導を展開している。県内公立小・中学校の独自学力調査は、昭和26年という早期からスタート。一昨年からは、4月に行われる国の学力調査結果をいち早く分析。5月には同県の調査と比較・分析した指導事例集を発行。各学校の状況に応じた授業改善に役立てている。 幼児期から高校卒業までの18年間を通した教育の実現では「福井型18年教育」として、子供の成長を見据えた系統性のある教育の実現を目指す。教員には、学校種で区分けしない指導の継続性を意識してもらいながら、教員の自主研修経費をサポートする取り組みに力を入れている。 同県の教員たちは、長年、教科の専門性に加え、子供の目線に立った指導向上に心を砕いている。そんな子供目線の授業改善の営みが、全国学力調査の好成績を支えていると述べる。 【関連ニュース】 ○平成28年度全国学力・学習状況調査 授業改善の視点を問う ○全国学力調査下位と平均の差縮む 小算Bで厳しい課題も

宮城県大和町立大和中学校(小野寺周哉校長、生徒数489人)は、昨年4月に国語、数学、英語、理科、社会のデジタル教科書(東京書籍)を導入。研究主題の「主体的に学習に取り組む生徒の育成」を見据え、分かる授業の実現に向けた活用策を追究している。同校研究主任として英語指導を担う小野敦也教諭は、現在、毎時間の授業でデジタル教科書を使用。同教科書ならではの音声動画を有効利用し、生徒に英語の音声を聴き取らせながら、大画面上にピックアップした重要な英文法や新出語句に注意喚起させるなど、各時間の課題の基本文を確実に理解させる学びを実現している。

全連小の新会長に種村明頼東京都新宿区立西戸山小学校校長、全日中の新会長に直田益明東京都世田谷区立芦花中学校校長が就任した。抱負と課題、教員へのメッセージなどを聞いた。

共に民間出身の横浜市立中川西中学校の平川理恵校長と、北海道の私立高校、札幌新陽高校の荒井優校長による対談「膨張する公教育」――。第3回では、保護者をはじめとする、外部との連携の進め方を語り合った。

東大推薦入試に合格した間辺美樹(まなべよしき)さんと、その父であり高校教員である広樹さんが「研究する高校生」をテーマに対談する。第2回では「熟語マニア」の開発経緯や実際に高校生を学会発表させている広樹さんの取り組みについて聞いた。高校生が研究することの難しさとは――。
■「あ、面白い!」
――美樹さんが「熟語マニア」を開発した経緯を教えてください。
美樹 僕は小さい頃から漢字に興味があって、高1で漢検1級に挑戦しました。漢字について勉強していると、同じ漢字が別の熟語にも使われていて、一つの漢字の意味を理解していけば、それを使う熟語の意味も分かる。そういうことがどんどんつながっていくと、漢字の理解になるのです。 勉強する過程でそれに気付き、父に話したら「他者にもそういうことを認識させるためにはどうすればいいのか」と言い出して、漢字の熟語を理解する学習ソフトを作ることになりました。それがこの「熟語マニア」です。高1の2月くらいにその発想に至り、その後ソフトの実装に取りかかりました。完成したのは高2の夏ごろでした。 広樹 彼が高1のときに、学校設置科目として「課題研究」があったんです。……

文科省の平成27年度児童生徒問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果(速報値)が10月27日に公表された。いじめ防止対策推進法が制定された影響もあり、いじめ認知件数が過去最高となった。だが、地域差は依然開いたままだ。この状況をどう捉えるのか、有識者の声を聞いた。またいじめや不登校対策に乗り出している教育現場の取り組みを追った。 どう受け止めるべきか いじめ認知件数の地方格差 内田良名古屋大学大学院准教授 いじめの認知件数を見ると、都道府県格差がかなり大きいのに気づく。小学校と中学校それぞれのいじめ認知率(1千人あたりの件数)を算出してみると、小学校では、最大値は京都府の162.0件、最小値は佐賀県の3.0件。中学校の最大値は山形県の47.4件、最小値は佐賀県の5.2件である。 これらは「認知」の件数であるから、学校側がいじめに積極的に対応すれば、件数は増えていく。すなわち、いじめ認知率の都道府県格差が大きいというのは、疑わしき状況があった場合、ある県では学校がそれを「いじめ」と認定し、別の県ではそのようには認定しないのを意味する。 いじめは、発生そのものを防ぐこと以上に、発生した後に注意深くケアして深刻化を防ぐのが重要である。学校側には、いじめをしっかりと把握することが求められるだけに、この都道府県の認知格差は、重大な問題として受け止められなければならない。 丁寧な問題把握と組織対応 横浜市の児童支援専任教諭 児童の問題行動を早期に発見して、組織的で細やかな指導を展開――。 横浜市教委では、全市立小学校341校に「児童支援専任教諭」を配置。同専任教諭の働き掛けで学校全体や保護者、地域との連携体制を構築し、いじめや不登校などの確実な問題把握、有効な組織対応を実現している。学区ごとの小中連携の中で、同専任教諭が中学校の生徒指導専任教諭と交流も深める。注意を要する児童生徒への指導点や配慮を共有し、円滑な小中接続や指導改善につなげている。 同専任教諭は現在、全市立小学校に1人ずつ置かれ、341人が活躍している。役割は、校内のいじめや不登校など児童の問題行動把握と対策、発達障害児への対応を中核的に担う。役割に専念するため、学級担任は持たず、授業の持ち時間も限定して取り組む。そのため、各校で高い指導力を持ち、校内で信頼される教員を任命。地域との広い関係づくりも求められる。 全担任教員や地域のスクールカウンセラーなど学校内外のさまざまな関係者との連携窓口役にもなる。児童や保護者などの困り感を的確に把握し、問題解決への組織的対応の中心的役割を果たす。自らが解決に動くより、関係者の仲立ちやコーディネーターとしての仕事に尽力するのが特徴。 平成18年、同市の小学校で児童の問題行動やいじめなどが拡大し、効果的な対策が模索された。小学校段階で、児童の発達に応じた確かな生徒指導を普及、展開し、早期の問題発見と組織的な指導を行えるようになるのを目指した。22年度から同専任教諭の段階的配置をスタート。26年度に全市立小学校での配置が完了した。 朝は全児童の登校を校門前で見守る。あいさつや声かけを通して、児童の細かな変調も把握する。給食時の教室訪問などでも、児童の様子を丁寧に見て取る。担任教員と学級状況について意見交換しながら、学級経営の改善について助言する。毎週定期的に、学区の中学校生徒指導専任教諭や地域の民生・児童委員などと情報交流する研修会に参加。中学校や地域とも連携を深め、幅広く継続的な子供の問題発見と支援を展開していく。 これまでの取り組みで、同市立小学校の児童1千人あたりのいじめ認知件数が、同専任教諭配置前の21年度が2.6件、26年度には9.7件と3.7倍に拡大。暴力行為発生件数は同693件から1655件と2.4倍増加した。 同市教委指導部人権教育・児童生徒課の蒲地啓子課長は「同専任教諭の活躍と幅広い組織的な目が広がる中で、児童の問題行動の軽重にかかわらず、詳細な問題認知と発生状況の把握が進んだ」と意義を指摘する。 詳細な問題把握によって効果的な対応策も生まれる。同市立小学校のいじめの年度内改善率では、21年度の88.9%から26年度には99.8%へと向上。不登校児童支援の改善率では、59.7%が67.2%となった。 同課長は「同専任教諭の配置により、各学校で小学校段階で行う適切な生徒指導の意識と指導力、組織対応力が育まれた」と語る。市が作った子供の社会的スキル向上プログラムとアセスメントなどを同専任教諭が有効に生かし、問題行動の未然防止対策を深化させていきたいとも話す。

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