【連載】他と差をつける論作文のポイント

採点官の目を引くために

教員採用試験では、人物重視の視点から、論作文の配点比重が高まっています。どんなに作文が得意でも、自己流の対策だけでは対応できないのが現状です。

 本紙でも、これまで「教員志望者のための論文講座」など好評連載を掲載してきました。今回からは、試験でも頻出するさざまな教育課題を、どのように見たて、論じていくのか具体的に伝授する「他と差をつけつ論作文のっポイント」をスタートします。執筆者は、教育委員会指導室長や学校長を歴任し、教員採用試験を熟知した長谷徹・東京家政学院大学教授。わかり易く核心をついた解説が好評です。(編集部)


<添削編>

【論文テーマ】
 あなたが担任になった学級は、一部の児童生徒の人の心を傷つけるような言動により、学級としてのまとまりに欠く心配があることがわかりました。あなたは、学級担任として、1学期のスタートの時期にどのような学級づくりを行いますか。具体的に書きなさい。(800字で執筆)

【論文例】

 メディアの影響を受けたと考えられる児童の乱暴な言動は、重要な生徒指導の課題であると考える。

 まず私は、学級担任として言語環境を整えることに努めたい。児童は大人の姿を見て育つ。特に小学校では担任教師が児童に与える影響は大きい。そのため、教師自身が言葉遣いに気を配り、児童が言葉遣いを改めることができるような環境整備が大切であると思う。また、暴力的な行為においては、どんなことがあっても手を出してはいけないということや、命の大切さについて、日頃から伝えておく必要があると考える。

 次に、月ごとに児童の実態に見合った生活目標を掲げ、継続的に指導していきたいと考える。学級全体としての目標を示すことで、暴力的な言動がみられる児童だけでなく、他の児童も自分や友だちの言動に意識を向けることができると思う。そして、その目標を教室に掲示し、視覚的にも訴え、さらに意識を高めたい。

 児童が乱暴な言葉遣いをしていたり、友だちを傷つけるような行動をとっていたりしたときには、十分に話をし、その言動を取り上げ自分の言動は適切であったか、その言動により相手はどう感じたのかをじっくり考えさせたいと思う。一つひとつの場面で丁寧に根気強く対応し、自分の言動を見直す機会をつくることが大切であると考える。しかし、ただ表面に現れた乱暴な言動のみを見るのではなく、なぜその言葉を発し、その行動をとるにいたったのか、状況の本質をしっかりと捉える必要があると思う。そのためにも、日頃から児童の弱さや悩みを知っておくことが重要であると考える。

 日常生活の指導だけでなく、道徳の時間を使って、思いやりをもつことの大切さを伝えていきたい。教師主導型ではなく、話し合いなどを取り入れ、児童自身に考えさせる授業を展開したいと思う。

 人を思いやる心があれば乱暴な言動はなくなり、規範意識も芽生えると思う。私は長期的な計画をもって指導にあたり、学級づくりを行いたいと考える。
▽大学4年生  清水のぞみ(仮名)
 

【論作文に対する論評】

即時から中長期まで 危機感に立った対応示す

 「学級が正常な姿で運営することができない。どうすればいいか」という危機感に立った論文になっている。全体的にまとまりのある論文になっているが、それは児童に対する指導について、継続性が大切なことや目の前のことを見逃さずに即時対応すること、さらには、道徳の時間の活用等に触れているように長期的な対応についての重要性にまで触れていること等が質の高い論文になっているゆえんである。

 もう少し具体的みてみよう。こうした学級における児童への対応では、まず、正しくない言動や行動があったときは、それを見逃さずにその場で初期の指導をすることが基本である。その場合、大切なことは、児童から聞き出す、児童に話させる、という姿勢である。論文中の「十分に話をし」や「児童の弱さや悩みを知って」といったことがその例である。

 中期的指導について、論文では、「教師自身の言葉遣い」も含めて述べている。共に歩むという姿勢が児童の共感を呼び、課題の解決に向かったという実例もある。大切にしたい姿勢である。また、長期的な展望に立った指導について論文では「道徳の時間を使って」という例を挙げているが、じっくりと児童の心情等をはぐくんでいくということも正常な学級経営にしていくためには重要なポイントである。

 さらに、本論文を質の高い論文にするためには次の点についての改善を図りたい。
 まず書き出しであるが、いま少し危機感を自分自身の問題として強調したい。単に「生徒指導上の重要な課題である」というだけではなく、喫緊の課題、緊急に対応しなければならない課題といったとらえ方が必要である。また、論文のまとめでは、自分自身の思いをしっかりと訴えるという点から、「○○と考える」「○○と思う」といった表現ではなく、「○○である」「○○と取り組んでいく」というような、きっぱりと自分の意志や意欲を伝えていきたい。

 

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