【連載】学校教育を視野に入れた家庭教育のあり方

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
監修 社団法人日本家庭生活研究協会

児童文学作家・元教員 鈴木 喜代春


学校(発見)と家庭(発展)の相互学習で

 今から50年ほど前、初めて小学校1年生を担任したときに、A男が「テスト用紙」を捨てていた。話を聞くと、「点数の悪いテストを持っていくと、隣のB男より悪いでしょうと、お母さんに叱られるから捨てた」という。

 ここで私は、「家庭通信・青空」に「点数のわるいテストをあずかります」と書いた。すると、「先生は勝手」「先生はいい気になっている」「先生は生徒を甘やかしている」と、たちまち父母から激しい攻撃にあった。

 そこで私は、父母に学校教育と家庭教育の相互作用を求めて、次のような提案をした。

 ①「教育」における上昇作用(発見)と下降作用(発展)

 学校教育にも家庭教育にも、それぞれ上昇作用と下降作用がある。上昇作用は、「新しい内容」を順序よく、わかるように教えること、それは「発見」。下降作用は、学んだ内容をより確かに、豊かにすること、それは「発展」。

 ②例えば、小学校1年生で初めて「花」という漢字を学ぶ。小学校5年生で初めて「日本の農業」を学ぶ。これらが上昇作用(発見)ととらえる。

 ③学んだ「花」の漢字をノートに、2回、3回と書いて、より確かなものにするとか、「日本の農業」の学習のあとで米づくりの物語(私の著作『十三湖のばば』など)を読んで、さらに豊かなものにするのを下降作用(発展)とおさえる。

 このように、学校教育において上昇作用(発見)と家庭教育における下降作用(発展)が同時に進められるように父母に提案した。

 例えば、学校で「花」の漢字を学んだら、家庭でも「花」の漢字を3回4回と書いて正確に覚え、発見を確かなものにしていく。家庭では、「花」の漢字を入れた「花」の絵などを描くこともできる。「日本の農業」では、「現場見学」に行くとか、農業体験をすることも可能だ。このように家庭学習として下降作用をしっかりと取り組んでくれることが好ましい。

 学校教育と家庭教育は同じことを反復するのではなく、「教育内容」によって相互作用が活発になるように工夫し、子どもたちにとって学習がさらに面白くなり、質的にも高くなり、体感で理解されるようにしてほしい。

 苦労しながらの実践だったが、教師の私と抗議してきた父母との葛藤の結果、共に喜び合ったことを思い出すことができる。父母に家庭教育の機能をどのように発揮したら良いのかをたゆまず知らしめることも先生の役割だ。