【連載】若手教員に伝えたい 授業・教材作りのポイント

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
愛知教育大学教育実践研究科教授 鈴木健二

学習用語を理解しよう

 授業の中心となる重要な学習用語なのに、ろくに調べもせず授業をしている教員が多い。「鎖国」とは何なのか、「分数」とは何なのか、「振り子」とは何なのか……。自分が授業で扱おうとしている重要な学習用語なのに、基本的な意味や内容をきちんと調べていないのである。おそらく、分かったつもりになっているからであろう。だから、改めて問われると、しどろもどろになる。

 ある大学院生が、小学校5年生の国語で「討論」について教える授業を行った。授業が終わった後、授業者に「討論とは何ですか」と問いかけた。返ってきたのは次のような答えだった。「子どもたちには、討論と普通の話し合いは違うと説明しました」。全く答えになっていない。授業で一番重要な学習用語である「討論」の意味すら調べていなかったのである。

 「討論」の意味は、インターネットでさえ簡単に調べることができる。
 「討論」が、特定の場で互いの意見や論を戦わすことであるのに対し、「討議」は、意見を交わし、いろいろと検討を重ねることによって最終的になんらかの結論、決議に導こうとすることである。「ディスカッション」は、「討論」とほぼ同じ意で使われる(goo辞書)。
 重要な学習用語について十分な理解を深めないまま授業を行うから、本時の目標を達成できなかったり、目標とずれた授業を展開してしまったりするのである。

 教科書では、次のように説明している。
 「討論では、ちがう角度からの意見が出たり、新たな提案が行われたりします。自分の考えと関連させながら話し合いを進め、考えを深めましょう」(光村図書出版小5)  「討論」という学習用語の意味を教員が十分に理解していれば、教科書の説明の受け止め方も変わってくるだろう。5年生の国語の授業で、どのように討論を教えればよいのかを考えるためには、「討論」という学習用語の理解が重要なのである。

 このような状況は、現職教員もあまり変わらない。ある中学校で中堅の教員の国語の授業を参観した。3年生のパネルディスカッションの授業である。生徒の話し合いの内容を聞いていると、小学生レベルである。授業後、教師に問いかけた。

 「パネルディスカッションとは何か。自分自身でパネルディスカッションを行ったことがあるか。質の高いパネルディスカッションを見たことがあるか」。どの問いにも十分な答えは返ってこなかった。教科書に書いてある程度にしか理解しておらず、それ以上調べたり考えたりした様子はなかった。国語の教員であるという自負(?)が、「わかったつもり」を助長しているのである。
 授業の中心となる学習用語を十分に理解すること。これが教材研究のスタートである。

 鈴木 健二(すずき・けんじ)愛知教育大学教育実践研究科教授=主な著書に『道徳授業づくり上達10の技法』『教師力を高める』(共に日本標準)ほか多数。