【連載】新しく展開する生徒指導の理論と実践

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
函館大谷短期大学名誉教授 保坂 武道

自己指導力の育成をめざして

 21世紀は先の見えない時代。混迷・混沌とした世相は、わが国も同様である。「脱原発、防衛問題、社会保障と税、憲法改正」等々で大揺れである。子どもの問題行動や青少年の粗暴な行為なども後を絶たない。関係者の努力もむなしく、それらは、年々深刻化、凶悪化しつつある。

 現在の学校教育においても、「いじめや不登校、校内暴力・学級崩壊、規範意識の低下、人間関係が苦手、自尊感情が欠落している」などは、喫緊の教育課題である。

 そこで、今一度、激変の時代に即した生徒指導はどうあればよいのか。その根本的な取り組みを、できるだけコンパクトに提示してみたい。

 生徒指導といえば、教育現場ではいまでも、「服装検査」や「茶髪禁止」といった管理的な手法が、生徒指導だと思い込んでいる教師も少なくない。「あれもだめこれもだめだと言われるルールの外へ飛び出してみたい」福岡県中3女子の川柳。

 また学会では、「生徒指導=カウンセリング」「カウンセリング=生徒指導」といった極論や、そのことに関した個人的な生徒指導の書物も多く出ている。

 短期大学においても、何か問題が生じると、それは大学生なんだから「自己責任」であると始末される。大学は最後の教育機関にもかかわらずである。

 生徒指導においては、これらは、ある意味で受身的、消極的アプローチといえる。生徒指導の原点は、意図的・計画的に実施される人格形成にある。児童・生徒・学生の一人ひとりの望ましい人格形成を図るという観点から、積極的・開発的な生徒指導を充実させることこそ、問題行動への抜本的な指導につながるのである。

 生徒指導は、究極において「自己指導力」を育成することである。それなのに学校現場では、「生徒指導と学校教育相談」の長いしこりもある。俗にいう「厳しい生徒指導」と「甘い教育相談」である。しかし、どちらも、方法は異なるが、目的は一つなのである。これは矛盾しない。技法の違いだと國分康孝日本教育カウンセラー協会長は指摘している。

 教育現場からは、22年に改訂された「生徒指導提要」は、「期待はずれだ」という声もある。前回の手引は、基本になる方法・原理があって、別冊で校種別に、進路・問題行動・実践上の問題点・教育相談等の資料集としてシリーズで刊行された。それは、今でも使える貴重な資料で、利用できる。今回のは、1冊にまとめたことにより、全体としては分厚いが、肝心なところが薄っぺらいものになっている。具体的には、生徒指導の方法・原理と、中心ともいえる、生徒指導の機能が各領域においてどのように展開するのか。いじめや不登校といった今日的な喫緊の教育課題の掘り下げが浅い。教育行政の手引書としては都合よかろう。「もう一歩、掘り下げがほしい」というのが率直な感想である。

 そこでこの連載では、新しい生徒指導の姿を、その方法・原理に基づいて、できるだけ簡潔に提示していく。  

《新連載始まる》

保坂武道函館大谷短期大学名誉教授による新連載「新しく展開する生徒指導の理論と実践」がスタートします。激変し、複雑化し、国際化する時代に即した生徒指導はどうあればよいか。その根本的な取り組みを、できるだけ簡潔に提示してくれます。