【連載】笑顔あふれる学級づくり

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
兵庫県芦屋市立打出浜小学校教諭 俵原 正仁


叱られも褒められもしない子

 1.家庭訪問での一コマ

 4月末に行われた家庭訪問での話です。ある子のお母さんと次のような会話をしました。

 「うちの子は内弁慶なもので、毎年家庭訪問ではおとなしい子だといわれるんですが……」「実は違いますよね」「そうなんですよ。始業式の日、うちの茂が、学校から帰ってくるなり『今度の先生は違う。俺のこと、よくわかっとる』って、うれしそうに私に話しかけてきたんですよ」

 このような感じで始業式の日に新しい担任に認められた茂君は、1年間、のびのびと自分自身を表現し、笑顔あふれるクラスづくりに貢献してくれました。この日の私の一言が、彼の心に火をつけたわけです。では、私が彼にどんな言葉を投げかけたかと言いますと……。それが、覚えていないんですね。

 たぶん、「茂君、君、面白そうやなぁ」とか、「茂君、そのリアクション最高。センスあるわ」的なことを言ったのでしょうが、実際に何を言ったのかは、本当に覚えていないんです。いやはやダメな教師です。

 しかし、(何を言ったか覚えていないものの)私の一言が彼のやる気を出させ、彼や彼のお母さんと信頼のパイプをつなぐきっかけになったのは確かなことです。

 2.全員に話しかけよ

 まあ実際に何を言ったのかは、ちょっと横に置いておいとくとして、大切なのは、茂君自身に「今度の先生は自分のことをよく見てくれている」と思わせたことです。そのために私が始業式当日、強く意識していたことがあります。それは、「始業式当日、全員の子に話しかける」ということです。

 なんだ、それぐらいできている……と思われている方もいるでしょうが、始業式の日というのは、意外と時間がありません。全員をクリアするというのはけっこう難易度が高いミッションです。特に、今回、例にした茂君のような子は抜けがちになります(今までそうだったからこそ、茂君もお母さんも私の対応に喜んでくれたわけです)。

 繰り返します。「全員」というところがポイントです。全員に話しかけていたからこそ、内弁慶な茂君にもヒットしたわけです。

 3.叱られることも褒められることもない子を意識せよ

 学級の子どもたちを粗く3つのゾーンに分けてみると、(1)学校生活に意欲的な子(2)学校生活に意欲的ではない子(3)(1)でも(2)でもない子。茂君は典型的な(3)の子でした。叱られることもないけれど、褒められるようなこともないような子です。

 毎年褒められてきたような(1)の子は、自分から教師の方に近づいてきます。その反対に(2)の子は教師から遠ざかろうとします。プラスとマイナスの違いはありますが、どちらにしても、特に意識しなくてもこれらの子たちの動きは教師の目に入ってきます。

 だからこそ、(3)の子を意識するようになれば、クラスの子全員を意識することができるということです。茂君のような(3)の子を意識してください。(3)の子の視点で学級づくりを始めてみるのです。

俵原正仁(たわらはら・まさひと)教諭=「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる」という思いのもと、「笑育」というコンセプトを柱にした実践を積み重ねている。教材・授業開発研究所「笑育部会」代表。著書に『プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術』(学陽書房)など。