【連載】安心感のある学級づくりのために

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
名城大学大学院准教授 曽山 和彦

なぜ学級に 安心感が必要なのか

 これから12回にわたる連載テーマは「安心感のある学級づくり」である。子どもたちにとって、学校生活の大半の時間を過ごす「学級」が安心感に包まれれば、そこは、学習指導、生徒指導、特別支援教育などが機能する「居場所」となる。このことは、多くの先生方が実践を通して実感していることではないかと思われるとともに、私自身、30年の教師生活を振り返ると、「確かに」と強く納得していることでもある。

 本連載では、「安心感のある学級づくり」のために、私たち教師が知っておきたい理論、身につけておきたい技法などを、私の「引き出し」から紹介したい。各学級状態に合わせ、使い勝手のよいものを皆さんの「引き出し」に入れていただければ幸いである。

 第1回の本稿では、「なぜ、学級に安心感が必要なのか」、その理論的背景について考えてみたい。

 授業中、指名されたA君が「ボクは○○と思います」と答えたとき、あるいは、グループワークの際、Bさんが「ワタシの意見は○○です」と話したとき、周りの子どもがA君、Bさんをばかにしたり、無視したりする言動を繰り返すとどうなるだろうか。やがて2人は、挙手して答えたり、意見を述べたりすることなどをしなくなるだろう。いずれも「嫌な思いをする」「安心感が脅かされる」からであり、学級が「居場所」として感じられなくなるからである。

 それゆえ、私たち教師は、学級内に設置した「安心の柵」を揺らすような言動を見聞きしたら、「柵」を揺らす子どもを注意したり、「柵」そのものを修繕したりしながら、「大丈夫。この場所は安心だよ」と伝え続ける必要がある。「安心の柵」とは、「誰かが発言したら最後まで聴く」「発言する友達の方を見る」などのルールのこと。ルールという「柵」に守られることで、子どもたちは安心して学び、かかわり合い、共に成長することができるのである。

 心理学者マズローの欲求階層説では、下位欲求が、たとえ部分的にせよ満たされた後に上位欲求が生起すると考えられている。ルールに関する「安全欲求」は、「生理的欲求」(飲みたい、食べたい、眠りたいなど)に次ぐ下から2番目に位置する欲求である。

 欲求階層説からは、私たちが子どもの頃から先生に言われ続け、今は教師として子どもたちに言い続けているルールの意義を考える上で、多くの示唆を得ることができる。

 「学びの場が安心感に包まれれば、そこは、学習指導、生徒指導、特別支援教育などが機能する『居場所』となる」…このことは、私の日々の大学講義においても同様である。

 次回以降、「安心感のある学級づくり」に向けた具体的アプローチの紹介をしていく。


【新連載筆者】曽山和彦(そやま・かずひこ)名城大学大学院准教授=学校心理士、ガイダンスカウンセラー、上級教育カウンセラー。学校におけるカウンセリングを考える会代表。主な著書に『教室でできる特別支援教育~子どもに学んだ「王道」ステップ・ワン・ツー・スリー』(文溪堂)など。