【連載】教師が育つ学校

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
監修 教育新聞論説委員会

総論 その1

 未来を切り開くのは「人」であり、その「人」をつくるのは、学校であり、教師です。教師は人づくりの主役ではありますが、そのためには教師自身が育つことが求められています。それでは、教師が育つには何が必要なのか。この連載では、現代の学校教育現場の実態に照らし合わせて、本紙論説委員が「教師が育つ学校」を論じていきます。

 文科省の統計によると、ここ数年は、毎年約2万人の教師が退職しつづけ、約1万人が新規に採用される。教師の世界は急速に世代交代が進行している。

 次世代を担う教師をいかに育てるか、校長にとっては大きな課題ではあるが、若い教師とともに学校運営に関わることで日々の教育活動が充実していけば、学校管理職としての充実感には大きなものがある。

 現在、学校の置かれている状況は決して恵まれているとはいえない。このことに関わって中教審答申(「新しい時代の義務教育を創造する」平成17年10月26日)では、学校の現状として、子どもたちの学ぶ意欲や生活習慣の未確立、後を絶たない問題行動などの義務教育をめぐる状況を指摘するとともに、学力低下への懸念、塾通いなど、特に公立学校に対する不満をあげているが、こうした課題は現在でも変わらない。

 さらに、インターネットやテレビゲームなどに多くの生活時間を充てることによる弊害が教育界の課題となっている。校長であれば誰もが、どのような状況の中にあっても子どもたちがよく学び、よく遊び、心身ともに健やかに育つことを願っている。

 そのためには、校長自身が若い教師とともに、生き生きと活気あふれる学校を実現する学校運営に取り組むことが重要である。現在は、学校バッシングの時代ともいわれているが、どのような環境条件の中にあっても、子どもたち一人ひとりの成長・発達を確かなものとするため日々努力していることに、校長は深く関わっている。校長としての自覚と誇りを大切にしてほしい。

 学校教育には、子どもたちが成長発達していく中で不可欠な学力、体力、道徳性を養う責任がある。また学校は保護者や地域の期待に応え、児童生徒の社会的自立を支え、一人ひとりの多様な個性と能力を伸ばす場として機能しなければならない。そのために校長の目指す学校教育の目標をこれまで以上に明確に示し、その実現を図る教育活動に、教師とともに取り組むことが重要である。

 校長の思い描く学校像を実現する教育活動に関する具体的な指針と、教師とともに教育活動の充実に取り組む校長の人間性を示したい。

 教師が納得できる指針・具体策であれば、職場に、共に行動する土壌ができる。

 学校教育には学級担任、教科担任などの個々の教師の責任に任せられる部分はあるが、教師一人ひとりが育ち、学校力の向上を図るには、校長の意を体して互いに協力し合う同僚性、職場環境が重要である。共通の目標に向かって共に活動する中で、教職員間の良好な人間関係が生まれる。良好な職場環境から醸し出される雰囲気は、子どもたちや保護者に直ちに伝わり、学校への信頼感が高まる。

 一方、学校の教育活動の充実は、教師一人ひとりの力量に大きく関わっている。そこで校長は管理職として、また先輩教師として、若い教師の資質向上に深く関わりたい。教師が育つ学校では、日常の教育活動が生き生きと行われ、子どもたちも明るく元気に活動している。

 若い教師は、教職に対する強い情熱をもちながらも、経験が少ないことから子ども理解、生徒指導力、集団指導の力、学級づくり、授業づくりなど教育の専門家としての力量は十分とはいえない。また豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀とともに対人関係能力、コミュニケーション能力にも課題がある。

 校長としては、若い教師一人ひとりの個性・特性の理解とともに、教師としての力量を把握し、それぞれに対応した的確な指導に当たることが求められる。

 そのためには、校長自身にも、教師とともに育とうとする態度が必要である。

 「教師は子どもともに育つ」といわれているが、校長は管理職ではあっても、同じ目標の実現に携わる者の一人として「校長は教師とともに育つ」とする態度をもちたい。校長のリーダーシップと豊かな人間性のもとに「教師が育つ学校」がある。

 (担当・佐野金吾論説委員/元全日本中学校長会長)