【連載】次期学習指導要領改訂の視座

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
教育創造研究センター所長 髙階 玲治

次期学習指導要領改訂への胎動 「育成すべき資質・能力」が中心課題

○改訂への動きを注視したい

 次期教育課程への胎動が始まっている。すでに「特別の教科 道徳」(仮称)については文科大臣より中教審に諮問された。学習指導要領改訂は2016年度末、全面実施のターゲットはオリンピック・イヤーの20年と見通されている。中教審の論議の経過によるが、次期教育課程に向けての動きを注視したい。

○「育成すべき資質・能力」の明確化

 学習指導要領は、10年ごとの改訂を繰り返してきたが、次期改訂について最も重要な課題は、何を、どう改訂するのか、という具体的な方向である。

 前回は「ゆとり教育からの転換」を目指してPISA型学力を導入したが、次期改訂では何が柱になるか、その関心は高いであろう。

 その意味で、文科省の前川喜平初中局長が「目標とすべき『育成すべき資質・能力』をまず念頭において、学習指導要領を見直す」と述べていることが注目される(『教職研修』4月号、教育開発研究所)。すでに文科省内に「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」が事前準備の形で論議を推し進めていて、その一部は公開されているものもある。

 だが、なぜ「育成すべき資質・能力」が重要なテーマなのであろうか。

 実は、そこに次期改訂の新しさと課題がみられるのである。前川局長によれば、「学習指導要領の構造自体を見直す」としているからである。

 従来の学習指導要領の構造は、教科ごとに縦割りで検討され、そのまま各教科等の目標・内容とされてきた。

 それに対して次期改訂では、まず「育成すべき資質・能力」を掲げて、それとの関連を十分踏まえたうえで各教科等の目標、内容、さらには方法等が決められる。その「資質・能力」はOECDのキー・コンピテンシーとも関わるという説明程度で、今後の論議を待つしかないが、「要領の構造自体を見直す」という方略は読み取れるであろう。

 かなり画期的である。

○学習内容・方法はどう変わるか

 そこで次に大切なことは、「育成すべき資質・能力」を掲げることで、毎日の授業がどう変わるのか、ということである。

 前川局長は、「何を教えるか」も重要だが、「どのように教えるか」という教育方法論が非常に重要になるという。教育方法のイメージとして述べているのは、プロジェクト学習、反転学習、総合的学習、各教科をベースにした総合学習、実生活や実社会の問題を取り上げた学習などである。

 このことは端的に言えば、「教科書を教える」のではなく、「教科書で教える」ことが強化されるということである。当然、教科書もまた知識主体の教育内容から活動主体の多様な内容・方法に変わるであろう。教師の創意工夫が一層求められるようになる。

 さらに、学校や教室の枠を超えた学習内容・方法が様々に展開される可能性がある。反転学習のような家庭学習で課題を前もって学び、教室ではそれをもとに討論などを主体にした協調学習が展開されるようになる。教科と総合的学習などとのクロス・カリキュラム的な学習活動も盛んになるであろう。

 そのような新たな学習活動への期待が大きいのである。

○「特別な教科 道徳」の導入

 次期学習指導要領は中間改訂という新たな動きが加わる。2月17日に文科大臣が中教審に「特別な教科 道徳」を諮問したが、秋ごろまでには審議を終了する予定である。来年から新しい「道徳」として実施される運びとなる。「特別な教科」となることで、新しい教科書作成の動きになるであろうが、その年には間に合わないことから、文科省作成の「私たちの道徳」など副読本が使用される。検定や採択等の期間を考えると全面実施は18年になるであろう。

 今回の中教審への諮問の主な理由は、教育再生実行会議の提言や道徳教育の充実に関する懇談会の論議を踏まえたもので、「道徳の時間の新たな枠組みによる教科化に当たっての学習指導要領の改訂にかかわる事項を中心に審議してほしい」としている。

 「道徳」は長らく形骸化されてきたという経緯があって、「教科」にしたから実践が盛り上がるということはあまり考えられない。

 むしろ、中教審の論議によって説得力のある新たな「道徳」指導観が生まれることを期待したい。新鮮な教材等が提示できれば「道徳」活性化につながるであろう。

○次期指導要領改訂は2016年度末

 次期改訂に向けて先行しているのは「道徳」のみではない。英語教育もそうである。英語は小学校中学年が週1~2時間、高学年が2~3時間となる。15分のモジュール学習の構想もある。中・高校はレベルアップされ、特に中学校は授業が英語で行われる。

 すでに2月から有識者会議が発足しているが、今年には中教審で論議され、来年から新教材で授業が行われるようになる。

 ただ、英語の授業時数増加は必然的に他教科の削減につながるため、その論議が必要である。学習指導要領の全面改訂は16年度末になるという見通しである。

 翌年度から段階的に先行実施になる可能性があり、全面実施は20年である。

 次期改訂は、学習指導要領の構造の見直しとされていることから、大きく変わることは確かである。