【連載】地域の教育力は学びの支え手

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
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干潟に入って生きもの探し シジミによる水質浄化実感

「これなんていうカニかな?」「シジミ見つけたよ!」「ワァーッ! 足が抜けないよー」――。

 東京都大田区の多摩川大師橋緑地に広がる干潟。7キロほど下ると東京湾に注ぎ出す多摩川下流の汽水域にあり、ほのかに磯の香りがする。同区立矢口西小学校(石井正美校長)の5年生4学級、156人が1学期の終盤、総合的な学習の中で、環境学習として干潟に入った。この体験活動が、2学期の東京湾の生きものにつながっていく。児童らは、環境や命のつながりを、川と海とのつながりの中で、実感を伴って学んでいく。

 体験活動が実施されたのは7月14日。児童らは小学校を出発して電車に乗り、最寄りの駅から20分ほど歩き、干潟に近い本羽田公園に午前10時ごろに集まった。活動を支援したのは、市民団体の多摩川とびはぜ倶楽部。メンバー3人が出迎えた。同倶楽部は、子どもの水辺活動をサポートする同区の子ども水辺協議会「羽田水辺の楽校」の構成団体。

 まず、倶楽部の代表世話人を務める片岡和夫さんが、干潟での活動の注意事項を伝えた。片岡さんは事前学習を同校で行っており、この日は、カニを見つけて雌雄を見分け、シジミが水を浄化する様子を見るのが主なねらい。児童らに事前に学んだことを思い起こさせてから、いよいよ干潟に。

 わくわく感いっぱいの表情で干潟に着き、活動範囲が示され、児童らは散開。この日のために用意したのは軍手、園芸用シャベル、ひもの先にカニを釣り寄せるスルメを付けた割り箸、とったカニを一時入れておくペットボトルを半分に切った容器、泥んこになってもよい服装。そして、やる気満々のハート。

 片岡さんの言葉を思い起こしながら児童らは、表面に小さな空気穴があいているところや、丸い砂団子がたくさんあるあたりを掘り、「いたいた!」。子どもの手のひらほどのサイズのものから、小指の先ほどもないもの、片方のハサミが大きいもの、目が潜望鏡のようなもの、全身が赤いものなどいろいろ。小さなシジミもたくさん見つけた。

 児童らは、配られていた写真付きリーフレット「多摩川大師橋干潟の生きものたち」(A4判カラー)と見比べたり、片岡さんらに質問したり。片岡さんからは、「雌雄を見分けてこちらに持ってきて」と声がかかり、つかまえたカニが集まった。「カニのおなかを見て、三角のように見えるのが雄、角が丸っこくて四角いのが雌。バケツを2つ用意してあるから、見分けてそれぞれのバケツに入れてみて。それから、ハサミが片方大きいのはアシハラガニ、目が潜望鏡のようなのはヤマトオサガニ。赤いのは珍しいよ。ベンケイガニだよ。ヤマトオサガニは泥水に潜んでいて、目を潜望鏡のように水面に出して周囲の様子を探っているんだよ」

 およそ1時間ほどの活動が終わったころには、みんな泥まみれ。公園に戻り、学校からありったけの大小のたらいをもってきた母親14人が、泥を落とすのを手伝った。

 その後、片岡さんが「みんなが見つけたシジミはヤマトシジミです。1時間ほどで、泥水が透明になりました」と言って、ヤマトシジミが入っている水槽を見せた。「シジミは水をきれいにしてくれるんだね。みんなもこのシジミのように、人のために役立つことをしようね」

 体験学習を終えた児童らは、「本物が見られてよかったです」「泥んこになっちゃたけど、とっても楽しかった」などと話す。

 5年生は今後、多摩川の自然を通して、環境を守っていく大切さを学んでいく。干潟での活動が、その原動力となる。その支え手の1つとなったのが、多摩川とびはぜ倶楽部だった。