【連載】身体性と情報社会 ネット浮遊から確かな参画へ

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
(一社)コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事 久保田 裕

高度化の中でなぜ生きづらい 立ち止まりよく考えなくては

 昨年7月に、ライターの小梶さとみさんと共著で『人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル』(双葉社)という書籍を上梓しました。学生が仲間同士でふざけあった写真をツイッターなどソーシャルメディアに投稿し〝炎上〟した例や、LINE上でのいじめ事件に加え、元交際相手に自分の裸の写真を公表されてしまうリベンジポルノなどネット上のトラブルの実例をまとめました。

 こうしたトラブルに対し、カナダの一部の州では「ネットいじめの対処と防止に関する法令」が制定されています。通称「ネット安全法」と呼ばれるこの法律は、インターネット上で、人間の尊厳や心身の健康を損なわせる行為を「サイバーいじめ」と定義しています。そして、サイバースキャンと呼ばれるチームが編成され、ネットいじめへの対応と、この問題を教育現場で伝える活動もしています。

 スマホを使い始めると、ネットを通じて誰かとつながっていないと不安になり、寝るときも手放せなくなる中毒性があるといわれています。iPhoneを開発し、今日のスマホ時代を作ったともいえるアップル社の創業者で前CEO、故スティーブ・ジョブズ氏は、自分の子どもにはiPhoneもiPadも使わせなかったといわれています。

 そうした情報機器に対する価値観については、北米は日本よりも進んでいるのかもしれません。『人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル』には、米国の母親がクリスマスプレゼントとして13歳の息子にスマホを与えるときに交わした「18の約束」も紹介しました。ここには、「スマートフォンを学校に持って行ってはいけません。友だちとはメールではなく直接の会話を楽しんでください。会話は生きる上でとても大切なスキルです」「人に面と向かって言えないことを、このスマートフォンのメールで送ってはいけません」といったことが書かれています。18項目全てを読めば、参考になるものが多いと思います。

 この連載では高度で複雑になる情報社会に生活するわれわれが、いかなる指針をもって社会に参画するのかについて考えていきたいと思います。私は著作権思想の普及という現在の仕事に携わるまで司法試験にトライし、その後、雑誌編集、電子部品メーカーに勤務しました。そういった経験を通して情報社会に関わってきたのですが、ネットやコンピューティングの発展、発達に振り回される中で生きづらさのようなもの感じてきました。この思いを共有する教員の方も多いかもしれません。

 平成7年、当時の文部省の情報教育の手引に「情報モラル」という言葉が掲載され、これが生きづらさの解決策になるかもしれないと直感しました。

 あれから約20年。猛スピードで進んできた情報社会は良くなってきたのでしょうか。またわれわれは何をしなくてはいけないのでしょうか。立ち止まり、ゆったりした時間の中で考えてみたい。「情報社会と民度」というテーマを中心に、情報社会の在り方を探る「基礎情報学」という分野の学問についても、この連載でふれてみることにします。