新年度の課題をひもとく

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
国立教育政策研究所教育研究情報センター総括研究官 千々布 敏弥

中教審での取り上げられ方

 この連載では、初等中等教育―特に小学校と中学校―におけるアクティブ・ラーニングについて語ることとする。

 アクティブ・ラーニングという言葉が文科省の施策に登場したのは、高等教育の文脈である。次期学習指導要領に向けた改訂に関する昨年12月の中教審諮問文において、この文言が4度も登場したことから、急に初等中等教育の分野でもキーワードとしてクローズアップされるようになってきた。

 平成20年3月、中教審大学分科会制度・教育部会「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」では、「学習意欲の向上を目指した教育の双方向化・システム化」の項で、「学生の主体的・能動的な学びを引き出す教授法(アクティブ・ラーニング)を重視し、例えば、学生参加型授業、協調・協同学習、課題解決・探究学習、PBL(Problem/Project Based Learning)などを取り入れる」と記述されている。おそらくこれが、アクティブ・ラーニングに言及した最初の文書になるだろう。ただし、「審議のまとめ」に記されていたこの文言は、同年12月の答申文では削除されている。

 24年8月の中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」は、「求められる学士課程教育の質的転換」の項で、「生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学習(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」と提言している。この時期から大学教育関係者においてアクティブ・ラーニングの語が意識されるようになったと思われる。

 26年12月の中教審答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」では「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた改革の方向性」の項で「高等学校教育については、生徒が、国家と社会の形成者となるための教養と行動規範を身に付けるとともに、自分の夢や目標を持って主体的に学ぶことのできる環境を整備する。そのために、高大接続改革と歩調を合わせて学習指導要領を抜本的に見直し、育成すべき資質・能力の観点からその構造、目標や内容を見直すとともに、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法であるアクティブ・ラーニングへの飛躍的充実を図る」「大学教育については、学生が、高等学校教育までに培った力をさらに発展・向上させるため、個々の授業科目等を超えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立する(ナンバリングの導入等)とともに、主体性をもって多様な人々と協力して学ぶことのできるアクティブ・ラーニングへと質的に転換する」と、大学教育だけでなく、高校教育を変革するキーワードとしてもアクティブ・ラーニングが使われている。

 私が実施した調査によると、日本の小学校と中学校では授業研究が熱心に行われ、それが授業改善に生かされているのに対し、高校と大学では、授業研究の実施状況が思わしくなく、教え込みの従来型の授業がほとんどだ。その状況を改革するためのキーワードとしてのアクティブ・ラーニングということであれば、素直に受け止めることができる人が多いだろう。ところが、小学校や中学校ではどうだろうか。