【連載】21世紀型能力・理科

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
大貫麻美帝京平成大学現代ライフ学部准教授

子どもの答え、根拠、原理
3つを意識して教師が支援

 大貫麻美帝京平成大学現代ライフ学部准教授、白鳥信義帝京平成大学現代ライフ学部准教授、小田勝己工学院大学非常勤講師の3人が、科研費による視察調査として、2月23日から27日まで、米国ボストン市近郊のブルックライン学校群、ボストンカレッジ教育学部などを訪問。そこで得た知見を「21世紀型能力・理科―ボストンからの報告」として、各自1回ずつまとめてくれた。執筆者ごとに連載する。

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 米国では、「次世代科学標準」(NGSS=Next Generation Science Standards)が2013年に発表され、採択した州では準備や実施がなされつつある。NGSSの特徴は、学問領域の核となる概念(コア・アイデア)だけではなく、プラクティス(技能だけではないのでスキルと表記しない)や、学問領域を横断する概念、工学的な内容や他教科とのつながりなども明示されているところにある。

 日本においても、次期学習指導要領の改訂に向け、学年や教科等の枠組みを超え、幅広い視点から「育成すべき資質・能力」について議論がなされたり、その育成に資する主体的・協同的な学習(いわゆるアクティブ・ラーニング)の重要性が指摘されたりしている。

 今回の訪問で面談したボストン・カレッジのマクニール准教授らは、科学的な議論の典型的な構造として「CER」(Claim, Evidence, and Reasoning)を示している。クレイム(Claim)は、学習課題に対する子どもなりの答えを指す。エビデンス(Evidence)はクレイムが依拠する科学的データである。リゾニング(Reasoning)は、エビデンスの正当性を示すものであり、データ解釈に適用した科学的な原理やアイデアなどが含まれる。

 同准教授は、CERやその指導方法について「子どもの発言にある強みと課題は何か」と「教師はどのように子どもの議論を支援したのか」の2つの側面から整理し、説明している。

 視察したブルックライン学校群ハース・スクールでは、理科の授業開始前に、子どもが生育環境の条件を変えて育てている植物の成長を記録していた。その際、静止画撮影に使用するタブレット端末の置き方や撮影・測定方法などに、班ごとの工夫が見られた。自分たちの仮説に基づいて設定した条件下の継続的な観察の過程であり、後に撮影データをエビデンスとして使用することや、リゾニングに必要な条件の理解が、そこに見られた。

 こうした工夫については、活動開始時によく検討するよう、教師が支援したということであった。

 CERを意識した教師の支援は、DNAの3Dモデル作成を開始する授業でも見られた。班での活動開始前に、既に学習している「セントラル・ドグマ」についてオンラインの動画クイズを用いて確認するように促していた。また3Dモデル作成についての意義、使用できる教材とその特長、作業を班で行うことの意義などに関する説明も、活動前に教師からなされていた。

 活動過程では、多くの班がホワイトボードを議論に用いていた。話し合い活動時のホワイトボードの有効性は、日本でも報告されている。言葉では表現しづらい内容を表出しやすく、同時に複数人が相談しながら書き込めること、多くの色を使いつつも書き換えが容易であることなどが利点として挙げられる。

 協議の過程で、DNAの二重らせん構造や塩基対について、誤概念を修正したり、理解を深めたりしている子どもの様子が随所に見られた。また書籍やノート、ネット上の動画をエビデンスに意見したり、パソコンやタブレット端末を用いて、自分たちで活動過程を記録したりするなど、多様なツールを有効に活用したアクティブ・ラーニングがなされていた。

 授業終了時の面談で、ゴルドナー教諭が、初回は子どもの発想に基づく活動に重きを置き、教師は表出される誤概念など、子どもの課題を把握して、次回以降に思考の深化を促す発問をする予定だと話しことが、大変印象的であった。

 〈調査は科研費26242010(研究代表・鈴木誠)の助成による〉