【連載】探偵がみた学校といじめ

 紙面に掲載した連載の初回分を紹介します。
NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部 泰尚

学校と保護者の意識の違い

 小・中学生の保護者は、30~40代が多いことであろう。私のところで相談など各種対応をするのは、ほとんどこの年代である。

 相談に来た保護者は、いじめの対応に関して学校や教師の動きが予想と反していることに不満をかかえていることが実に多い。この年代は、生徒指導において、いまでは考えられないような指導を受けていたという者も少なくない。かくいう私もそうであるが、廊下で正座をさせられたり、ゲンコツをくらったり、などである。

 これらの体験から、いまでも多くの保護者は、そのような指導が都合のよいときだけ行われることを期待している。しかし、現在の学校では(実際は過去もそうであったが)、そのような指導を行うことはできない。

 昨年の秋、私と同年代の保護者が夫婦揃って相談に来られた。

 相談内容は、小学校4年生の息子の持ち物がしばしば校庭に捨てられていたり、なくなったりするので何とかしたい、というもの。息子さんによると、夏休み前まで仲がよかったのに、夏休み明けから仲間はずれにしてくるA君が犯人ではないか、とのこと。この夫婦は、担任教師に相談をしたのだが、担任がとった対策はクラス全体に対して他人のものを隠したり捨てたりすることはダメだ、と話をしただけだった。

 A君を叱ってもらえば解決すると思っていたのに、20代の若い担任教師は全体に説諭しただけ…。この対応に不満がたまり、保護者はA君を犯人に仕立て上げるための証拠収集を私に求めてきたのである。これで調査を引き受ければ、私はただの銭ゲバ探偵である。

 私は、特に警察でもない学校が積極的な犯人探しができるはずもない、と夫婦を説得し、まずは、集めた情報をもとにこの事件を時系列に従って整理をしてみた。すると、この被害は必ずクラス全員が教室から移動した後に起きていることが分かった。

 そこで、私は担任に宛てて意見書を作成した。内容は、「ものがなくなったり、隠されたことが発覚するのは、常に教室を移動した後である」「指導後も再発していることから、今後も継続することが予測できる」「この保護者にとって学校が敵とならないうちに、極めて簡単な方法で証拠を収集する方法がある」というもの。

 具体的には、「被害が起きる時間帯は特定が可能である」「クラス全員が教室から出るころから他の職員に廊下に立ってもらえば、現場に出くわす」と示唆した。

 後に夫婦からもらった電話によれば、副校長がたまたま通りかかり、A君ら4人の男子児童を呼び止めたところ、その手に息子さんの持ち物があったという。その日のうちに加害行為をした児童とその保護者が謝罪をしたということであった。

 担任教師いわく、「意見書は読みましたが、〝今回はたまたま通りかかった〟ということで、納得してください」とのことだった。和を重んじる現代の教育現場の特徴を示していると思われる言葉だが、夫婦は若干納得がいかない様子であった。

 私は、日本人は言葉の裏と間を楽しむ趣がある、と笑いながら話した。