高大接続改革の展望 その先にどんな将来が展望できるか

〈展望2018(3)〉
3・工藤教育新聞論説委員 工藤 文三

■今年度末に高校の新学習指導要領

2020年代は、小・中・高等学校の新学習指導要領が順次実施に移されるとともに、大学入学共通テストも実施され、小学校から大学教育まで一貫した学力と学習指導の在り方が追求されることになる。翻って初等中等教育の在り方は、これまで、時代や社会の状況を踏まえ、学習指導要領の改訂を通じて見直しが行われてきた。

平成に入って以降の改革は学習意欲や、自ら学び、自ら考える力の育成などを目指す改訂として進められてきた。06年の教育基本法、その後の学校教育法等の改正を受けて、08~09年の改訂では、学力の3要素が学習指導要領において明確に位置付けられることとなった。

一方、高等学校については、進学率の高まりを受けて、多様化・特色化に向けた取り組みが進められ、さまざまなタイプの高等学校が設けられたが、その一方で、高等学校教育の共通性が問われることにもなった。

このように高等学校教育については、その制度的枠組みの改革が進められてきたが、教育指導の在り方については、小・中学校教育が先行したといえる。特に高等学校教育においては、目指す資質・能力の育成を明確にした教育指導の在り方に課題が残されていたといえる。

今年度末に告示が予定されている高等学校学習指導要領は、小・中学校ではおおむね定着している学力観と教育指導観を高等学校においても本格的に導入するものとなる。

■試行では知識・理解の質を問う出題も

大学教育については、12年の中教審答申(「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」)において学士課程教育の質的転換が提起され、アクティブ・ラーニングが大学における教育改善のキーワードとして用いられた。

また、学校教育法に規定された学力の3要素が、アドミッション・ポリシーなどにも具体化されている。大学教育は、初等中等教育における学習指導要領のような基準は存在しないことから、一つ一つの科目の指導の在り方を導くことには限界がある。ただ、高等教育において目指す資質・能力や教育指導の在り方が問われるようになったのは、ある意味では大きな出来事といえよう。

これらの改革と合わせて、大学入学者選抜の仕組みについては、既に大学入学共通テストの導入に向けた試行調査が実施され、知識・理解の質や思考力、判断力、表現力などに関わる学力を問う出題が行われた。

ここまでみてきたように、高大接続改革が進捗しているが、今後の展望を考える際に、次の点に留意することが必要と考える。

■私大も含めた入学者選抜改善を

一つは、大学入学共通テストの改革は高等学校教育に大きな影響を及ぼすと考えられるが、一方で私立大学においては、定員確保の要請もあり、いろいろな選抜方法が想定される。

大学の規模にもよるが、入試問題の作成の体制や作問の力量、採点方法などの面で解決すべき課題があるのではないだろうか。何らかの形で、私立大学の入学者選抜も含めた改善が進められることが望ましい。

第二は、高等学校教育の教育指導の改善に関わる課題である。高等学校の生徒の実態は多様であり、まずは基礎・基本の確実な習得を目指さざるを得ない現状もある。一気に主体的・対話的で深い学びや探究的な学びを実施するには、無理を伴う現状も想定される。

第三は、大学教育に求められる課題である。アクティブ・ラーニングや学修成果の可視化などの取り組みが進められつつあるが、大学教育の場合、最終的には担当教員の専門性に委ねざるを得ない面が残る。

特に各科目の指導に当たって、目指す資質・能力の具体化―指導内容・方法の最適化―適切な評価方法による成果の確認など、小・中学校では定着している教育的手法が、まだ曖昧であることが多い。評価基準もシラバスに記載されてはいるが、評価方法などにどれだけの工夫が行われているかは定かではない。また、大学教員の採用や昇任の審査においては、まずは研究業績が問われ、教育指導の実績を評価する仕組みはいまだ途上にあるといえる。

■議論の枠組みを追求する

高大接続改革の先には、どのような将来が展望できるのであろうか。仮に学力の3要素を確実に習得する生徒や学生が育っていくとき、それらがどのように一人一人の人生や社会の在り方に影響を及ぼすのだろうか。

学校教育、高等教育の意義、有用性について議論できる枠組みを追求していきたいものである。

(大阪体育大学教育学部長・教授、国立教育政策研究所名誉所員)
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