抜本的な改革に向け指針 詳報 運動部活動ガイドライン

cu20180313rクローズアップ・ロゴ「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」が、3月13日に開かれた第8回作成検討会議で取りまとめられた。前文では、運動部活動の教育的意義やスポーツ振興に果たす役割に触れつつも、少子化や教員の負担増などから、これまでのような部活動体制は「学校や地域によっては存続の危機にある」と指摘。「将来においても、全国の生徒が生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現する資質・能力を育む基盤として、運動部活動を持続可能なものとするためには、各自のニーズに応じた運動・スポーツを行うことができるよう、速やかに、運動部活動の在り方に関し、抜本的な改革に取り組む必要がある」とうたった。ガイドラインで定められた、部活動の新たな指針とは――。


ガイドラインの基本的な考え方は、学校の種類や学校の設置者の違いに関わらず該当するとされ、義務教育段階である中学校(義務教育学校公教育課程、中等教育学校前期課程、特別支援学校中学部を含む)の運動部を主な対象としており、高校段階の運動部活動も原則として適用される。▽スポーツに親しむのを通じて運動習慣の確立を図り、生涯にわたって心身の健康を保持し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の育成▽生徒の自主的・自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との関連を図り、効果的に取り組む▽学校全体としての部活動の指導・運営体制の構築――の観点から、地域や学校、競技種目の状況に応じた最適な部活動の実施を目指す。

ガイドラインでは、①適切な運営のための体制整備②合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取り組み③適切な休養日などの設定④生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備⑤学校単位で参加する大会などの見直し――について、具体的な指針が示された。

1.適切な運営のための体制整備

都道府県はガイドラインに基づき、「運動部活動の在り方に係る方針」を策定。市区町村教委などは、それらにのっとり「設置する学校に係る運動部活動の方針」を策定する。各学校では、校長は毎年度「学校の運動部活動に係る活動方針」を作成し、学校のウェブページなどに公表する。顧問の教員は、活動日や休養日、参加予定大会などを示した年間の活動計画、毎月の活動計画・実績を策定し、校長に提出する。なお、活動計画などは、簡素で活用しやすい様式を定めるなどして、効率化を図るようにする。

各学校の部活動の指導・運営体制の構築にあたっては、生徒や教員数、部活動指導員の配置状況を踏まえ、校長は適正な数の運動部を設置するようにする。校長は、顧問の決定にあたっては、顧問となる教員にとって適切な校務分掌となるよう留意し、毎月の活動計画などの確認を通して、各部の活動内容が、生徒にとって適切であり、教員の過度な負担とならないよう、必要に応じて指導・是正を行う。特に、都道府県、教委等の学校の設置者、校長は、教員の部活動への関与に関して、2017年12月に示された「学校における働き方改革に関する緊急対策」や、18年2月に関連して発出された通知などを踏まえ、業務改善や勤務時間管理を行う。

学校の設置者は、各学校の規模や部活動指導員の配置状況、校務分担の実態などを踏まえ、部活動指導員を積極的に任用し、学校に配置する。なお、部活動指導員の任用・配置にあたっては、学校教育について理解し、適切な指導を行うために、▽部活動の位置付けやその教育的意義▽生徒の発達の段階に応じた科学的な指導▽安全の確保や事故発生後の対応▽生徒の人格を傷つける言動や体罰の禁止▽校長の監督を受けることや生徒、保護者等の信頼を損ねるような行為の禁止等の服務の順守――などに関して、定期的に研修を行う。

また、都道府県や学校の設置者は、運動部顧問や管理職を対象に指導や運営に関する研修などを行う。

2.合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取り組み

校長と顧問は、13年5月に文科省が作成した「運動部活動での指導のガイドライン」にのっとり、スポーツ障害やけがの予防、バランスの取れた学校生活への配慮なども含む、生徒の心身の健康管理や、安全対策などの事故防止、体罰、ハラスメントの根絶を徹底する。

顧問は、スポーツ医・科学を踏まえ、トレーニング効果を得るために休養を取る必要性や、過度の練習がスポーツ障害・外傷のリスクを高めることを正しく理解した上で、生徒の体力の向上や生涯を通じてスポーツに親しむ基礎を培えるよう、生徒とコミュニケーションを十分に図り、バーンアウトを防ぎながら、短時間で効果が得られる指導を行う。また、専門的知見を持った保健体育の教員や養護教諭と連携・協力し、発達の個人差や女子の成長期における体と心の状態などに関する正しい知識を得た上で指導する。

各競技団体を統括する中央競技団体は、競技レベルに応じて、▽1日2時間程度の練習メニューの例▽週ごと、月ごと、年間での活動スケジュール▽効果的な練習方法▽指導上の留意点▽安全面の注意事項――などで構成される指導手引きを作成する。手引きはウェブページなどに公開し、日本中体連などと連携して、全国の学校で手引きに基づいた指導の普及を図る。

3.適切な休養日の設定

部活動における休養日や活動時間は、スポーツ医・科学の観点から、▽学期中は週当たり2日以上の休養日を設ける▽長期休業中は、学期中の設定に準じるほか、生徒が部活動以外の多様な活動を行えるよう、ある程度長期の休養(オフシーズン)を設ける▽1日の活動時間は、長くとも平日で2時間程度、土日は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う――とした。学期中は、少なくとも平日で1日、土日のうち1日を休養日に充てるようにし、大会参加などで土日に活動した場合は、振替日を確保する。

「運動部活動の在り方に係る方針」などでも、この基準を踏まえて休養日や活動時間を明記し、学校では、各部の休養日や活動時間を公表するなどし、運用の徹底を図る。定期試験前後の一定期間、学校全体、市区町村共通での休養日を設けたり、週、月、年間単位での活動頻度・時間の目安を定めたりするのも考えられるとした。

4.生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備

校長は、中学生女子の約2割が、保健体育の授業を除く1週間の総運動時間が60分未満であるなど、生徒の1週間の総運動時間が、男女共に二極化している状況や、「友達と楽しめる」「適度な頻度で行える」など、女子や障害のある生徒を含め、現行の部活動が生徒の潜在的なスポーツニーズに必ずしも応えられていないのを踏まえ、季節ごとに異なるスポーツを行う活動や、競技志向ではない、レクリエーションとして行う活動、体力づくりを目的とした活動などを主体とした部活動を設置し、生徒が楽しく体を動かす習慣の形成に向けた動機付けとすることも考えられるとした。

また、少子化により、学校内で特定の競技の部活動が実施できない場合などでは、拠点校による合同部活動の取り組みを推進する。

都道府県、学校の設置者、校長は、生徒のスポーツ環境の充実の観点から、学校や地域の実態に応じて、地域のスポーツ団体との連携、保護者の理解と協力、民間事業者の活用などによる、学校と地域が共に子供を育てるという視点に立った、学校と地域が協働・融合した形での、地域のスポーツ環境の整備を進める。

また、学校と地域・保護者が共に子供の健全な成長のための教育、スポーツ環境の充実を支援するパートナーという考え方の下、取り組みの推進について保護者の理解と協力を促す。

日本体育協会や各競技団体などは、部活動指導員の任用・配置や、部活同顧問に対する研修、スポーツ指導者の質の向上に関する取り組みに協力する。

地方公共団体は、学校管理下ではない社会教育に位置付けられる活動については、各種保険への加入や、学校の負担増とならないよう留意しつつ、生徒がスポーツに親しめる場所が確保できるよう、学校体育施設開放事業を推進する。

5.学校単位で参加する大会などの見直し

日本中学校体育連盟(中体連)は、生徒の活動の実態を踏まえ、単一の学校からの複数チームの参加や、大会における複数校合同チームの全国大会への参加、学校と連携した地域スポーツクラブの参加について検討し、スポーツ障害やけがの予防の観点から、大会規模や日程の在り方、スポーツボランティアなどの外部人材の活用など、運営の在り方に関して速やかに見直しを行う。

都道府県中体連や教委など学校設置者は、運動部が参加する大会・試合の全体像を把握し、生徒や顧問の過度な負担とならないよう、大会の統廃合などを主催者に要請するとともに、各学校の運動部が参加する大会数の上限の目安などを定める。校長も、この目安を踏まえ、生徒の教育的意義や負担の観点から、参加大会を精査する。
ガイドラインでは、ジュニア期のスポーツ環境の整備は、長期的な観点から、従来の学校単位での活動によらない、一定規模の地域単位での活動を視野に入れた体制構築が求められるとした。ガイドラインを踏まえた部活動改革と並行して、学校単位の部活動に代わるスポーツ活動の機会確保・充実方策も検討の検討の必要性も示した。

また、各競技団体に対しては、運動部活動やジュニア期におけるスポーツ活動が適切に行われるために必要な協力を積極的に行うとともに、競技力向上の観点から、地方公共団体や地域の体育協会などと連携して、将来有望なアスリートとして優れた素質を持った生徒を、本格的な育成・強化コースへ導けるような、発掘・育成の仕組みの確立を求めた。