(新しい潮流にチャレンジ)特別活動とダイナミック・カリキュラム

社会性育成に向けて実践力を高める
○国際的評価と特別活動軽視の風潮

中教審の教育課程企画特別部会で次期教育課程の『論点整理』を提示したが、各教科等については視点のみであった。

その中で興味深い指摘が見えた。1つは「特別活動については、開発途上国等に対する国際教育協力の現場等においても、我が国の教育課程の特徴として高い評価を受けているところである」とする文言である。

また1つは「総合的な学習の時間の役割は、クロスカリキュラムによる子供主体の活動を中心とした学習により、PISAにおける好成績につながったのみならず、学習に対する姿勢の改善に大きく貢献するものとして、OECDをはじめ国際的にも高く評価されているところである」の文言である。

わが国の教育課程、特に教科外とされる「特別活動」や「総合的な学習の時間」が国際的に高い関心や評価を得ていることの指摘は従来ほとんどなかったと言ってよい。特に教科外でありながら教育課程に授業時数が確保されているという、わが国固有の在り方と実践効果が認められたことの意味は大きいものがある。

今回は特に「特別活動」に論点を絞りたいが、実のところ特別活動を軽視する動きが長年続いてきた。特に「ゆとり教育」の中で学力向上が叫ばれて、学校行事削減の風潮がかなり広まっていた。それは今も続いているのではないか。

私が関係した調査においても、「特別活動の課題」は大きく3つあって、(1)活動時間が足りない(2)課題があれもこれもと多すぎる(3)各教科優先で軽視する――であった(日本特別活動学会『特別活動の改善に関する調査報告書』2014)。95年にも調査を行っているが同様の結果であった。つまり、特別活動軽視の風潮はかなり続いてきたのである。しかも、学習指導要領の特別活動は30年来内容的にほとんど変わってこなかった。

今回、国外から特別活動が評価されていることで次期学習指導要領においてどう改善されるか、その期待は極めて大きいものがある。

○特別活動で身に付く「力」

これからの教育において特別活動重視の政策が必要なのは、例えば国立教育振興機構の調査(2015)に見られるように、「自分のことをダメな人間だと思うことがある」と考える高校生は7割を超えている。アメリカ、中国、韓国と比較しているが、日本は格段に多い。逆に「人並みの能力がある」と考えるは中国とアメリカが90%を超えているのに、日本の高校生は56%程度である。

わが国の若者の自己評価が低いのは以前から言われていることであるが、「ダメ人間」とか「能力なし」と自己評価するのは、例えば学力一辺倒の評価判断がみられるためではないか。人間の生きる道として多様な「力」があるはずなのに、「学力」のみで評価する、その弊害は大きいものがあると考える。

それは、若者の行動力の低下につながっている課題である。そのため改善すべく多様な提言も行われてきた。

例えば、経済産業省は06年に「社会人基礎力」を提唱した。将来社会人になるために必要な「力」としてあげたのは、(1)前に踏み出す力(アクション)(2)考え抜く力(シンキング)(3)チームで働く力(チームワーク)――である。だが、学校教育で十分身に付くか疑問の声もみられた。

そこで私どもは、大学生対象に中学・高校の特別活動でどんな「力」を獲得できるかを調査した(日本特別活動学会『特別活動の社会性獲得に関する調査』2011)。

その結果であるが、「人間関係を築く力」「コミュニケーションの力」「チームワークなどの連帯感」が90%を超えていた。さらに「チームなどに溶け込もうとする」「物事をやり遂げようとする粘り強さ」「自分から進んで行動する力」「自分の行動についての責任感」「正しく判断する力」などが80%以上であった。大学生が特別活動をこれほど高く評価しているのは驚きであった。

特別活動で身に付ける「力」は今後詳細に調査する必要があると考えるが、このような「力」の獲得は学校生活のみでなく、将来の生活を築くうえでかなり重要なものである。自覚できる資質・能力の形成こそ社会人としてさらに進化可能である。また、全国学力調査の国語の問題に毎年のように特別活動に関連した内容が出題されるが、学校や学級の生活課題について「話し合い活動」などが頻繁に行われるのが特別活動である。その話し合いが充実すれば言語活用力が磨かれ、他の教科等に影響する。また、そうした「生活づくり」としての話し合いは、実社会や実生活の問題に直接向き合う実践力を磨く力になるものである。

『論点整理』でも次のような文言がみられる。「自分たちが所属する集団や社会の充実と向上のため、教科等で身に付けた資質・能力を活用し、意見の違いや多様性を生かしつつ集団としての意見をまとめていく話合い活動などは、社会参画の意識や合意形成のための思考力・判断力・表現力等を養うものである」の文言である。また、道徳的実践の場としての意義も強調している。

○ダイナミックなカリキュラムを求めて

ところで、特別活動において最も重視すべきことの一つは、学校行事や児童・生徒会活動などでダイナミックな活動を展開することである。14年調査の教師の回答として「感動、挑戦、汗を流す特別活動の創造が必要」が95%であった。95年の調査も同様であった。

教師がいかにダイナミックなアクティブを望んでいるかである。時間がなく、課題が多く、周囲の軽視の中でも特別活動を盛り上げようとする教師の意識は高いのである。

多くの実践がみられる。

例えば、学校行事として毎年音楽コンクールを実施してきた中学校が、「曲を歌うだけではつまらない」と考えて、文化祭でアラビア半島の遊牧民やイヌイットなどについて地理・歴史、衣類、食生活、住居など学級ごとに調査し、その結果を展示しただけなく、クラスごとに外国の歌を披露した。また、小学校では地域行事や祭りなどを調べ、「おはやし保存会」から和太鼓の打ち方を教わり、自分たちで神輿を作って運動会で披露した。音楽や社会科、道徳などのクロスカリキュラムによる展開である。

また、高校の生徒会が先に立って全市の小・中学校に呼びかけ、アルミ缶や牛乳パックの資源回収を提案し、各学校ではそれぞれにエコ活動を多様に取り組んだ例がある。さらに、いじめ撲滅のために児童・生徒会が立ち上がった例も多い。

学級活動は当然であるが、学校行事や自治活動もまた特別活動固有のものであって、将来の社会性獲得につながる有力な教育活動である。他の活動で代替できないだけでなく、むしろ活動のテーマによっては各教科等を巻き込んでクロスカリキュラム的にダイナミックなアクティブを展開することが可能である。

特別活動の多様な活動が「育成すべき資質・能力」としてどう形成されるか、次期学習指導要領の重要な課題として十分論議してほしいと期待している。

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