(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)高校での通級指導導入を検討

最重要なのは教員の意識改革

文科省は、高校における特別支援教育の一環として、通級制度導入の検討に乗り出した(本紙12月10日付既報)。その背景には、何があるのだろうか。そして高校教育は今後、どう変化するのだろうか。

■差別解消法が施行へ

通常学級に在籍しながら、必要に応じて特別支援学級や別教室などで障害に応じた支援を受ける「通級指導」は、小・中学校では広く実施されている。しかし、これを、義務教育ではない高校教育にも導入しようという話には、違和感を覚える人も少なくないだろう。

ただし、特別支援教育は高校でも行われるべきものであり、学校教育法は特別支援学級を高校にも設置できるとしている。そうではあっても、小・中学校と異なり、特別支援教育の「特別な教育課程」を編成する制度が高校にはないため、特別支援学級も通級指導も行われていないのが実情だ。

一方、平成28年度から障害者差別解消法が施行され、国公立学校には障害者に対して「合理的配慮」の提供が義務付けられる(私立学校は努力義務)。これによって、一般の学校に入学を希望する障害児が増えると予想されており、国公立高校では特別支援教育への対応が急務となっている。このため文科省は、高校における通級指導の導入の検討に着手することになった。

■遅れている高校の対応

高校の特別支援教育への対応を見ると、コーディネーターの任命、校内組織の設置などは9割以上進んでいる。だが、「個別の指導計画」などは約3割にとどまる。つまり、法令上の体裁は整えているが、実際には多くの高校が特別支援教育とは無縁な状況にあるとみられる。

また文科省の推計(21年3月)によると、高校進学者全体のうち2・2%に発達障害があり、課程別で見ると、全日制は1・8%、定時制は14・1%の生徒に発達障害があると推計されている。実際には、他の障害も含めて、もっと多くの、特別な配慮が必要な生徒が高校に在籍していると思われる。このことからも、高校での特別支援教育の必要性が分かるだろう。

これに対して高校関係者の間には、依然として特別支援教育に対する抵抗感が根強くある。その理由の一つが「高校は義務教育ではない」というものだ。高校入試を経て入学した生徒ならば、あとは本人の自己責任という考え方である。

しかし、障害の有無にかかわらず、共に学ぶというインクルーシブ教育の進展、そして障害者差別解消法の施行などにより、そうもいってはいられなくなってきた。文科省の協力者会議が、通級指導の導入の是非ではなく、制度化を前提として具体的な内容の検討をしているのも、このためだ。

■当然に行われるべき配慮

ただ、高校生の発達段階における特有の問題もあり、小・中学校と同様の通級指導を導入するのは、生徒の抵抗感が強く、実施は困難だろう。文科省は26年度から、高校における通級指導の研究指定校を設けている。その中身を見ると、高校が独自に設けることができる学校設定教科・科目を活用して、選択科目などの一環として通級指導を実施している学校、始業前や放課後などを活用して、特別な支援をしている学校などが多いようだ。

高校への通級指導の導入に当たっては、思春期の真っただ中にいる高校生が、できるだけ抵抗感なく受け入られるような工夫が求められることになろう。さらに、通級指導などをはじめとして、特別支援教育のための教員加配、補助員などの配置など、財政面での支援も欠かせない。

しかし、最も重要なのは、何といっても高校教員の意識改革だ。高校は確かに義務教育ではない。だが、特別支援教育には、義務教育か義務教育でないかは関係がない。特別な支援があれば高校で学べる障害のある生徒は、少なくない。

特に、全日制課程や普通科の教員には、障害や支援教育に関する理解が強く求められる。通常の授業でも、障害のある生徒への配慮が当然行われるべきだということを、高校関係者は再確認すべきだろう。