次期学習指導要領の輪郭 専門委員が語る課題と見通し(上)

次期学習指導要領改訂に向け、教育課程部会の下に設けられた13のワーキンググループ(WG)、3つの特別チーム、総則・評価特別部会は現在、教育課程企画特別部会の「論点整理」に基づき、スピード感をもって検討を進めている。新年を迎えるに当たり、この中から、各教科・領域の要となる総則・評価特別部会と、いわゆる主要教科ではないが、育成すべき資質・能力の3つの柱の中で、社会とのつながりから今後、重要度をより高める生活・総合的な学習の時間、情報、産業教育の各WG委員に、課題や見通しについて聞いた。


【生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ】
新たな考え生む協同的な学びに 関西大学教授 黒上晴夫

学習指導要領の改訂や高大接続システムの改革は何を目指しているのか。無論、よりよい学習を保証するためだ。よりよい学習とは何か。一般的には学力向上となる。しかし、今の問題は、向上すべき学力とは何かである。答えは簡単ではないが、あえて単純化してみる。

それは、教科ごとに一定の範囲で作成された問題に対し、正解を選択する力だけでない。実際の問題解決場面で用いられる力に拡張されたものである。そのような学力は、従来の方法では測りきれない。多面的な評価が求められている。多面的な評価には、ポートフォリオ評価や学習活動そのものについての観察評価、パフォーマンス課題による評価など、さまざまな方法がある。課題の一つは結果についての市民権をどのように得るかだろう。結果が信用されなければ実施する意味はない。評価にかかる時間や人などのリソースをどう確保するかも課題となる。多忙な日常業務の中で各自を多面的に評価する時間を確保するのは難しい。

総合的な学習の探究プロセスは、このような学力に好影響を与える。同学習では、知識を得るだけでは問題が解決できない。獲得した知識を問題解決に向けて活用して、知識が意味をもち、相互に有機的につながり解決に至る。これが学力を押し上げるのだと考える。

探究的なプロセスとは、自ら課題を見つけて情報を収集し、集めた情報を整理分析し、まとめを人に伝え、課題意識が更新される問題解決のプロセスである。このプロセスを主体的、協同的に行うのを求められている。現行の学習指導要領解説で探究のプロセスが連続する図が示された。この見方は変わらず、むしろ、他の教科にも広げられようとしている。主体的というのは、教師が黒子になるもの。探究プロセスのスパイラルが起こるように環境設定をする、探究のためのスキルを鍛える、振り返らせるなどして学習を支える。

昨年、仙台市立広瀬小で学んだのは、スパイラルの図に学習経過を記入する掲示である。これを見ると、各学級が探究のプロセスをどうたどったか一目瞭然である。こういう手段が全教員の考え方を変える。協同的に学ぶというのは、単に特別なメソッドを用いるのではない。各自の考えが共有されて、新しい考えが生まれるのが要件である。それなしに協同的に学んだとは言えない。協同を促すのも教師の仕事である。一人ひとりに考えをもたせ、考えを共有して新しい考えを生み出す場面が組み込まれるよう、学習活動を仕組むのだ。

常にそうなのだが、教育改革の動きは教育観や指導観、授業の方法などの更新を求めるものである。形にとらわれず、真意をつかんで自分のものにしてほしい。


【産業教育ワーキンググループ】
地球規模の視野が必要 岐阜女子大学教授 服部晃

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会に新たに産業教育部会が設置され、その第1回目の会議が平成27年12月7日に開催された。初回の会議では、大杉住子・教育課程企画室長による「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」文部科学大臣から中央教育審議会への諮問(26年11月)の理由および「論点整理」の文面から重要箇所について説明があった。尾白泰次産業教育調査官から本ワーキンググループにおける検討事項および職業に関する各教科・科目関係資料についての説明と続いた。その後、各委員がこの会議にかける思いをそれぞれ語った。

専門高校は、それぞれの地域において将来のスペシャリストの育成、地域産業を担う人材の育成、人間性豊かな職業人の育成という3つの観点を基本としている。実験・実習などの実践的・体験的な学習活動を行い、産業教育に必要な知識・技術の習得、課題解決のための思考力・判断力・表現力を身に付ける。産業社会の発展や国民生活の充実を図る能力・態度の育成に取り組み、わが国の産業界等の充実・発展に貢献している。

専門高校からの進路は多様であるが、実践的な学びや取得した資格を生かして卒業生の半数以上が産業界等に就職をしていることも、前記のことを裏付けているといえよう。ただし、産業教育の実情を知る一部の関係者の間では成果として評価されても、広く一般社会には知られていないことが、大きな課題である。

高校生全体の数の中で、専門高校の生徒数は、昭和30年代には4割程度だった。近・現代では2割程度で推移している。今後も急速な少子高齢化が進むとき、将来にわたって地域の産業や社会を担う人材が確実に必要とされる。現状を打破し、産業教育を一層活性化するための専門高校の教育課程はいかにあるべきかが問われている。

国際化、情報化、科学技術の発展が目覚ましい中で、大きな課題となっている地球環境、人口・食糧問題、世界経済等にも、的確に対応できる知識・技能が、地域の産業や社会を担う人材として欠かせない。専門高校の人材育成の在り方、その教育課程も検討課題といえよう。これらの課題を認識したうえで、まず議論する検討事項は、

(1)職業に関する各教科を通じて育成すべき資質・能力について
(2)これまでの実験・実習などの実践的、体験的な学習活動の成果やアクティブ・ラーニングの3つの視点を踏まえ、資質・能力の育成のために重視すべき指導等の改善充実の在り方について
(3)国家資格や各種検定、研究発表会や競技会等の活用を含めた資質・能力の育成のために重視すべき評価の在り方について
(4)必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

――である。

=(下)へ続く

関連記事