次期学習指導要領の輪郭 専門委員が語る課題と見通し(下)

次期学習指導要領改訂に向け、教育課程部会の下に設けられた13のワーキンググループ(WG)、3つの特別チーム、総則・評価特別部会は現在、教育課程企画特別部会の「論点整理」に基づき、スピード感をもって検討を進めている。新年を迎えるに当たり、この中から、各教科・領域の要となる総則・評価特別部会と、いわゆる主要教科ではないが、育成すべき資質・能力の3つの柱の中で、社会とのつながりから今後、重要度をより高める生活・総合的な学習の時間、情報、産業教育の各WG委員に、課題や見通しについて聞いた。


【情報ワーキンググループ】
将来を見据えた議論が必要 尚美学園大学大学院教授 小泉力一

学習指導要領改訂に向けて、昨年10月に「教育課程部会情報ワーキンググループ(WG)」が発足した。今回の改訂では、一昨年暮れに発足した「教育課程特別部会」の下にいくつかのWGが設置された。情報WGでは、高校情報科を含む情報教育全般について改訂の方向性を議論する。

前回の改訂では、家庭科、技術・家庭科、情報科から構成される専門部会が設置され、筆者も委員として参加した。今回は情報が独立したかたちになっていて、情報教育について集中的に議論できると期待している。教育課程特別部会の論点整理では、「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」という視点が示された。これは、「何を知っているか、何ができるか」という個別の知識・技能。「知っていること・できることをどう使うか」という思考力・判断力・表現力等。「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という人間性や学びに向かう力等という3つの柱から構成されている。

情報活用能力もこれに沿って整理し直される。よって、情報活用能力の3観点である「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」が、発達段階に応じてどのような資質・能力として育成されるかが検討される。

現行の学習指導要領で情報教育を専門的に実施しているのは、高校情報科です。小・中学校段階における情報教育がこれまで以上に充実し、初等中等教育段階において系統的な情報教育が実現される必要がある。児童生徒を取り巻く現代社会では、情報技術が急速に発展している。情報化による人や社会への影響が刻々と変化していて、学校教育が小学校段階から、子どもの情報活用能力を育むことは、急務と言える。

また、論点整理では高校情報科について、「情報の科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を身に付けるため、統計的な手法の活用も含め、情報と情報技術を問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方等を育成する共通必履修科目」と、「発展的な内容を扱う選択科目」を設けることを検討するとしている。

つまり、問題の発見と解決に必要な、科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を身に付けることが、大きな目標になっている。この観点においても、小・中学校段階でどのような情報活用能力が育成されるべきかが、重要な論点になる。WGは始まったばかりであるが、今回の学習指導要領改訂は、極めてタイトなスケジュールで進められている。平成28年のはやい時期に一定の結論が出される予定。小学校では32年度、中学校では33年度、高等学校では34年度から新しい学習指導要領による学びが始まる。今回の改定内容は、42年度までを見据えたものになる。

今から14年後に社会の情報化がどのような進展を遂げているのかを予想することは、難しいが、それを踏まえて情報教育の在り方を議論する必要がある。


【総則・評価特別部会】
スタンダード準拠評価の導入を 静岡県立袋井高校教諭 鈴木秀幸

今年は、わが国の教育課程の構成原理を見直す重要な年になると考えている。すでに昨年8月の教育課程企画特別部会の論点整理で、教育課程改訂の方向が示されているが、具体的な中身については総則・評価特別部会や、各教科別等のワーキンググループで昨年11月から議論が始まった。

今回の学習指導要領の改訂は、これまでの基本原理とは異なったものになると考えられる。教育課程の編成方法に関する考え方をカリキュラム構成論というが、今回の改訂では、これまでのカリキュラム構成方法を一部転換するのが必要となる。

従来のわが国の教育課程の改訂は、主として学習内容(どの学年でどのような知識を学習させるか)を中心に行われてきた。しかし、技術や社会の変化が激しい現在では、学校で学習させた知識が、陳腐化してしまうことがあり、変化に十分に対応できなくなっている。そこで、知識そのものを生みだしたり、これまでなかった問題や課題にも対処したりできるような能力や技能、資質を育成することが必要と考えられるようになった。

このような資質や能力を中心に教育課程を編成するカリキュラム構成論を、プロセス中心のカリキュラム構成論という。今回の改訂は、これまでの学習内容中心のカリキュラムの構成に、プロセス中心のカリキュラム構成の考え方を一部導入しようとしていると考えられる。新学習指導要領でのカリキュラム構成原理の一部変更は、評価の在り方にも影響する。これまでのわが国の評価の基本的な仕組みは、学習内容中心のカリキュラムに適合するものであった。

つまり、学習すべき知識をどれだけ習得したかを、主としてペーパーテストを用いて、正解した問題数をもとに評価する方法を用いてきた。正解が多ければ「十分満足」、これより少ない正解数であれば「おおむね満足」と数値的な評価をしてきたのが実態である。このような評価方法をドメイン準拠評価という。

しかし、知識の習得量の評価に適したこのドメイン準拠評価を、思考力や判断力の評価にまで無意識に使用してきたのが、これまでのわが国の評価である。それというのも、現在のような観点別評価を導入した平成元年の改訂の頃には、知識の評価に適したドメイン準拠評価しか、わが国では知られていなかったためである。

しかしながら、思考力や判断力の育成が必要であるとの認識が広まるにつれて、思考力等は正解数で評価できるものではなく、その特徴や洗練の程度を評価すべきものであると分かってきた。

そこで登場したのがスタンダード準拠評価である。今回の改訂では、思考力等の観点の評価には、これまでのドメイン準拠評価を用いるのではなく、スタンダード準拠評価を用いて評価するように改訂する必要がある。新学習指導要領が、これからの社会が直面する問題や課題に対処できる人材を育成できるかは、スタンダード準拠評価を導入できるかどうかにかかっていると言っても過言ではない。

=おわり

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