(教育時事論評)研究室の窓から 第8回 ユネスコスクール

国立教育政策研究所教育研究情報センター総括研究官 千々布敏弥

優れた実践を生み出し広める

昨年12月に、東京の昭和女子大学で開かれた第7回ユネスコスクール全国大会に参加してきた。ユネスコスクールとは、ユネスコの理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校である。現在、ユネスコは持続可能な開発のための教育(ESD)に取り組んでいるところから、ユネスコスクールはESD教育の推進拠点となっている。

「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)」が始まった平成17年から飛躍的に増加しており、その当時15校であったのが、平成27年5月には939校となっている。全世界のユネスコスクールは約1万校なので、1割が日本にあることになる。

この第7回大会では、全国から約600人の参加者が集まっていた。私が司会進行を担当した分科会では、愛知県岡崎市立男川小学校の事例を題材に、ESD教育の在り方について議論した。理科の天体の単元に関する素晴らしい実践だった。

夜空の星の形を「☆」と答える子どもが半数の状態からスタートした授業は、移動プラネタリウムを学校に招いて星空への関心を高め、実際の星空を肉眼や天体望遠鏡を使って観察するように子どもを導いた。天体望遠鏡は、天文学会の協力を得た。大学教授に依頼し、3Dソフトを使って、宇宙の星の様子について子どもに分かりやすく講義してもらった。JAXAからは、月の専門家を招いて月のリアルな様子を理解させた。星の大きさを体感させるために、発泡スチロールや体育祭で使用する大玉を使い、惑星の1億2千万分の1模型を作成した。太陽だけは直径10メートルと大きすぎるので、体育館に直径10メートルの円を描くこととした。

この授業を通して子どもたちは、天体への関心を深めると同時に、宇宙とのつながりで地球をとらえた。人工衛星の残骸などによる宇宙ごみへの意識も高まった。宇宙と地球への視点は、わが国、自分が住んでいる町へと移動し、地球や住む町の環境問題への視点も深まった。

授業中に自分の意見をなかなか発言できない児童Aは、この単元で星空への関心を強めていった。自分1人で3晩続けて満月前後の月を観察し、授業で発表した。積極的な発言をするようになっただけでなく、説明したい内容をクイズにしたり問いかけの表現や共感を求める言い方を使ったりするなど、聞き手を意識した話し方をするようになった。

これだけの実践をするのに、予算は通常の研究指定の範囲内だった。担当教師の熱意により、大学教授もJAXAの専門家もボランティアで学校に駆けつけた。担当教師の熱意は、本人の資質だけによるものではなかった。校長は常に「好きなことをやりなさい」「学年団で協力しながら進めなさい」とアドバイスしていた。

同じ学年の3担任は、それぞれに強みを生かしながら授業を交換したり(だからこの事例発表は3クラスで展開されたものだ)、相談し合い、助け合ったりしてそれぞれの実践を構築した。3人の教師は休み時間、放課後、常に授業のこと、子どものことについて話し合っていた。

同校のESDへの取り組みは、5年前から続いている。積み重ねの中で、年間計画であるESDカレンダーが共有財産となり、年間計画の枠の中でそれぞれの教師が重点単元指導計画をつくるようにしている。相手を意識した学び合いを進めるため、話し方、聞き方、関わり方、振り返り方についての学校ルールを構築している。この事例は、「ユネスコスクール=ESD」の成果という文脈にとどまらない。子どもの関心を高める教材の工夫の仕方、話し合いを含めた学級経営の在り方、優れた実践を支える学校経営の在り方など、授業方法と学校経営全般にわたる要素が凝縮されている。

ユネスコスクール事業は、このような優れた実践を広める学校間協働の在り方を提起しているものと解釈できる。

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