(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)どう担う教育再生の次段階

ぜひとも教職員定数改善を

昨年10月に、下村博文前文科相の後を継いで就任した馳浩文科相は、本紙の新春インタビュー(1月1日付既報)で、今後の教育行政の課題などについて語った。さまざまな教育課題が山積する中で、馳文科相に今後、期待されるものとは何だろうか。

■「教員としての目」

約2年9カ月という異例の長期就任期間を誇った下村文科相は、教育委員会制度の見直しや道徳の教科化など、戦後教育の転換を図るような大きな改革を、「教育再生」の名の下に次々と具体化させた。その下村文科相の退任と馳浩氏の新文科相への就任は、「教育再生」が次の段階に入ったことを意味する。
一方、下村前文科相は、昨年1月に「高大接続改革実行プラン」を策定し、東京オリンピック・パラリンピックが開催される平成32年度をターゲットイヤーと位置付け、次期学習指導要領の実施、大学入試センター試験に替わる新テストの導入などの具体的日程を「工程表」として示した。文科相が替わっても自身が敷いた「教育再生」の路線が確実に具体化されるように、いわば「縛り」をかけたのだった。

このような中で馳文科相には、今後の教育再生をどう舵取りするのか、どのような独自色を打ち出すのかが、注目されている。馳文科相は、高校教員、ロサンゼルス・オリンピックのレスリング日本代表、プロレスラーなどの多彩な経歴の持ち主だ。文科相としての何よりの強みは、高校教員として実際の学校現場を知る「教員としての目」を持っているところだろう。

実際、就任会見で馳文科相は、これまでの教育再生について「ちょっと急ぎすぎたかなというような印象もある」と語り、改革の着実な定着を重視する考えを示唆した。恐らく、これらは学校現場を知っていることからくる発言だろう。

■教職員定数が課題

その馳文科相に、教育界が最も期待している事柄の1つが、下村前文科相も実現できなかった教職員定数の抜本的な改善だろう。平成28年度の文科省予算案で、教職員定数は加配定数で前年度より525人増という成果を獲得した。その一方で、基礎定数は、少子化による自然減で3100人減、学校統廃合により900人減の合計4千人減となる。加配定数の増加分と差し引きで、3475人減となった。いじめや不登校など、学校現場の問題が複雑化する中で、これは決して手放しで喜べる数字ではない。

しかし、財務省は今後も教職員定数の削減を強く求めてくるのは確実だ。それに対して、政策的なエビデンスを示しながら、教職員定数の改善をどのようにしていくのか、馳文科相の手腕が問われている。

これについて馳文科相は、本紙インタビューで、義家弘介副大臣の下にタスクフォースを設け、「戦略的な教職員の定数改善」の議論を開始したことを明らかにしている。その議論の方向は、残念ながら少人数学級の拡大などではなく、「基礎と加配定数の在り方」などの見直しになりそうだが、学校現場の実態を踏まえたしっかりとした議論を期待したい。

また中教審答申に基づく「チーム学校」における教員以外の職種の法的位置付けなども、教職員定数の在り方と関連した議題となる。ここでも、スクールカウンセラーなど多様な職種が定数に位置付けられても、肝心の教員が削減されては本末転倒となる。基本となる教員の数をしっかりと確保した上での「チーム学校」である点を忘れないでもらいたい。

■柔軟な対応も必要か

次期学習指導要領に向けた改訂や大学入試など高大接続の改革では、その具体化に向けた日程が下村前文科相によって示されている。馳文科相は、本紙インタビューでも「その通りに進めていく」と、スケジュールを堅持する意向をあらためて強調した。

ただし、大学入試改革については「さまざまな意見を聞き」とも答えている。現在の大学入試改革の方向性には、おおむね問題はないだろうが、その具体化にはさまざまな課題が待ち受けている。ここでも、もし子どもたちや学校現場が混乱するような事態があれば、それこそ本末転倒だろう。学校現場に精通した馳文科相ならではの、柔軟な姿勢が求められる。

制度は改革されても、それが機能しなければ意味はない。「教員をサポートするために、あらゆる努力をするのが文科省の仕事」という馳文科相の今後に、強く期待したい。

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