(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース) 学校現場の関心はいまだ低い 性的マイノリティーに対応を

性的マイノリティーの子どもたちへの対応方法をまとめた教師向け冊子を、大阪市の3区が合同でまとめた(本紙1月11日付既報)。しかし、このニュースに、どれだけの校長や教員が関心を持っただろうか。「うちの学校には関係ない」という感想が多かったのではないか。実はそこに、この問題の難しさがある。

■民間調査では7・6%

最近、「LGBT」という言葉を見聞きする機会が多くなった。L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、Т(トランスジェンダー)の頭文字を取ったもので、性的マイノリティーの人々を指す。

これらの子どもたちに対して文科省は昨年4月、学校での配慮や支援を求める通知を、都道府県教委などに出している。しかし、社会的に注目を集めたものの、学校現場で具体的な対応を取ったところはどれほどあっただろうか。恐らく、ほとんどなかったのではないか。

その理由の大半は、「うちの学校にはいないから」という理解だろう。

実際、文科省が平成26年6月に発表した実態調査では、全国の小・中・高・特支に、性的マイノリティーの子どもたちは606人にすぎない。全国でたった606人ならば、学校で考慮する事態になるのはまれだろう。しかしこの調査は、教育相談として上がってきたものに限定されており、実数を反映したものではないと、調査自体が強調している。

一方、電通ダイバーシティ・ラボが昨年4月に実施した調査では、日本の性的マイノリティーの割合は7・6%だった。

これは、20歳から59歳までの約7万人を対象に行った調査だが、仮にこの割合を小・中・高・特支に当てはめ、27年度学校基本調査確定値の児童生徒数から割り出すと、100万人以上に達する。40人クラスならば、3人いる可能性があるという計算だ。「606人」どころではない。成人調査の結果は、そのまま学校の実態ではないが、学校で性的マイノリティーの問題は表面化しづらく、現実には、決して少なくない性的マイノリティーの子どもたちが存在し、苦しんでいる可能性があるのだ。

言い換えれば、「うちの学校にはいない」と即断する校長や教員は、その時点で、既に性的マイノリティーの子どもたちを苦しめているのかもしれないのだ。

■いじめなどの防止を

また専門家などの間で指摘されているのは、性同一性障害など性的マイノリティーの子どもたちは、日常的に違和感に苦しんでいるばかりか、いじめや暴力の対象になりやすく、通常の子どもよりも自殺リスクが高い。研究者らの調査によると、性的マイノリティーの約7割が、学校時代にいじめや暴力を受けた経験があり、そのうち3割が自殺を考えた経験があるという。実際、いじめに起因する自殺の中には、性的マイノリティーの子どもが含まれていた事例がある。

では、学校でも性的マイノリティーの子どもたちを「早期発見」して対応する必要があるのかというと、そうともいえない。性的マイノリティーの子どもたちは、ある種の後ろめたさを抱えており、他人に秘密を暴かれたくないと思っている場合が少なくないからだ。「当事者探し」は、そんな子どもにとって、逆効果になりかねない。

逆にいえば、文科省通知などが求めている更衣室やトイレなどへの配慮などは、性的マイノリティーの子どもへの対応としては、かなり進んだ段階でのものだといえる。まず、求められているのは、一人ひとりの子どもの変化や悩みを見逃さずに対応していく、という基本的な姿勢だろう。

■教員の意識改革が必要

そして何より重要なのは、教員自身が(無意識でも)性的マイノリティーを差別するような言動をしないこと、性の多様性を子どもたちに理解させること、そのような雰囲気を学校全体でつくること――などだ。その意味で、校長の役割は非常に大きい。

子どもたちへの影響を懸念する声もあるが、実践校などの事例を見ると、子どもは意外に順応が早く、問題は教員の意識にある場合の方が多いという。
性的マイノリティーへの社会的な理解は進んでいるが、意識を変えるのはなかなか簡単ではない。教員も同様だ。しかし性的マイノリティーの子どもたちは、各クラスにいる可能性があるというのを常に前提として行動していくことが、教員に求められる。

学校にとって、決して特別な問題ではないのだ。

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