(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)英語教育に欠けている視点

技能としての学びの具体像を

 

文科省は、中・高校生を対象にした平成27年度「英語力調査」の結果を公表した(本紙2月8日付既報)。「話す」など4技能全てに課題があることなどが明らかになり、英語力向上に関する文科省の目標達成が危ぶまれている。しかし、問題は実は、もっと深いところにあるのではないだろうか。

■目標達成は非常に困難

調査は昨年6~7月、高校3年生約9万人(「話すこと」は約2・2万人)、中学校3年生約6万人(同約2万人)を対象に実施した。高3は前年度に続き2回目、中3は初となる。

注目されるのは、対象となった中3が、現行の小学校学習指導要領の全面実施となった平成23年度に、小5だった点である。この年度、この学年から「外国語活動」が初めて全面実施された。その最初の児童らが、義務教育の最終学年となり、調査の対象となったのである。

一方、文科省は第2期教育振興基本計画(平成25~29年度)の中で、英語力向上を掲げ、中学校卒業段階で「英検3級程度以上」、高校卒業段階で「英検準2級・2級程度以上」を、各学校段階の生徒の50%で達成するという目標を定めている。

調査結果を見ると、中3で目標の「英検3級程度以上」相当を達成している生徒の割合は、「読むこと」が26・1%、「聞くこと」が20・2%、「話すこと」が32・6%、「書くこと」が43・2%だった。また高3で「英検準2級・2級程度以上」相当に達している者は、「読むこと」が32・0%(前年度24・7%)、「聞くこと」が26・5%(同21・6%)、「話すこと」が11・0%(同10・5%)、「書くこと」が17・9%(同11・0%)となっている。平成29年度までにこれらの割合を50%にするのは、厳しいというのが実情だ。

■英語教員のせいだけか

調査結果について文科省は、「英語の4技能がバランスよく育成されていない」として、4技能統合型の指導を行うよう、言語活動の充実を求めている。また高3では、他の技能に比べて「読むこと」の成績が高くなっているが、読解中心の大学入試に向けた授業をしているためだろう。文科省は、英語教員の研修の充実、教員養成の改善などを対策として挙げている。

しかし、本当にそれだけか。意識調査を見ると、「英語の学習が好き」という者は、中3で56・1%に上っているが、言い換えれば、小5から5年間も英語を学んできたにもかかわらず、4割以上が「英語嫌い」になっているともいえる。さらに高3では、英語が好きな者は44・5%で、英語嫌いが多数派を占めている。

生徒の英語力が文科省の目標に届かないというのは、英語教員の指導力よりも、この「英語嫌い」の割合の高さにあるのではないだろうか。コミュニケーション能力を重視する英語は、いわば「技能教科」だ。点数アップには、その技能が好きであると同時に、その技能を使いこなせるようになりたいという願望の強さが欠かせない。

■目的が希薄な英語学習

ところが、「将来の英語使用のイメージ」を聞くと、中3では「高校入試に対応できる力を付けたい」の35・4%、「海外旅行などで英語で日常会話をし、コミュニケーションを楽しめるようになりたい」が34・0%で、合計約7割を占めている。「国際社会で活躍できるようになりたい」は10・2%に過ぎない。

高3でも海外旅行などでの日常会話が35・6%、「特に利用は考えていない」が20・6%、大学入試対応が18・8%などとなっている。要するに、中・高校生の多くは、入試以外の理由での、英語を学ぶ必然性を欠いているといえる。

他のアジア諸国と比べて、日本人の英語力は低いといわれているが、裏を返せば、それは英語なしでも生活や仕事ができるからだ。また英語以外の言語で大学教育ができる国は、世界でもフランス語圏やドイツ語圏などの大言語圏を除けば、ほとんどない。日本はその数少ない国の1つだ。

言語構造が異なる英語を日本人が習得するには、大きな努力を要する。苦しい努力をする生徒が少ないのは、ある意味で、当然のことだ。

逆にいえば、英語を使えるようになれば、どんな人生が開けるのかなど、具体的なイメージを子どもが分かりやすく持てるようにする必要があるだろう。「グローバル化対応」などは、大人の事情にすぎない。

英語学習へのモチベーションをどう育てるかが、英語力向上への第一歩といえるのではないか。

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