(新しい潮流にチャレンジ)言語活動は充実しているか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

汎用的スキルとテクニカル・スキル
○言語活動で身に付ける「力」

言語活動の充実が新教育課程で提唱されたとき、その意図の必然性は認められたが、その後の実践の経緯をみると釈然としないものがあった。学校の実践の場では、多様な言語活動が行われていても、その結果としてどんな言語力が身に付くのか、曖昧な活動が多くみられたからである。「ただ、話し合っているだけ」「表面的な感想の羅列」「事実を記述するだけのレポート」などである。また、意味不明な言語活動論もみられた。

そもそも言語活動の重視は、OECDの国際調査でわが国の生徒が自分の意見を書くことができず、あまりにも多くの白紙がみられたショックからであった。その量はアメリカの4倍、フィンランドの2倍と言われた。そこで文科省内の審議会は「言語力育成」という名称で協議を行っていたのである。

それが現行の教育課程の『答申』(2008)では周知のように「教育内容に関する主な改善事項」の1つとして「言語活動の充実」をあげていた。言語活動は一般的には「話す・聞く」「読む」「書く」などの活動を指すが、そのことの充実を求めることは当然として、「主な改善事項」とされたことで特別な課題が示されたはずである。

『答申』で最も重視したことは何か。それは「各教科等を貫く重要な改善の視点」だった。つまり、各教科等に関連する知的基盤としての言語活動を重視しているのである。「言語力の汎用性」と言えるもので、それを教科等の横断的な学習に活用するという形での提唱であった。

例えば、国語で培った能力を基本に、知的活動の基盤という言語の役割の観点として次の例がみられる。

▽観察・実験や社会見学のレポートにおいて、視点を明確にして、観察したり見学したりした事象の差異点や共通点をとらえて記録・報告する(理科・社会等)
▽比較・分類、関連付けといった考えるための技法、帰納的な考え方や演繹的な考え方などを活用して説明する(算数・数学、理科等)
▽仮説を立てて観察・実験を行い、その結果を評価し、まとめて表現する(理科等)

また、コミュニケーションや感性・情緒の基盤という言語の役割に関してとして次の例がある。

▽体験から感じ取ったことを言葉や歌、身体などを使って表現する(音楽、図画工作、美術、体育等)
▽体験したことや調べたことをまとめ、発表しあう(家庭、技術・家庭、特別活動、総合的な学習の時間等)

他にも例が並んでいるが、このことは言語能力の形成を教科等の関連の中でつながりをもたせて幅広く形成したいという意図が濃厚に感じとれる。教科等を関連させながら言語活動を積極的に進める中での「言語力」あるいは「言語活用力」の形成である。中教審の『論点整理』で述べている「教科横断的な視点」を思わせる説明である。つまり、理科の学習で学んだ言語力のスキルが社会科で生かされる、また算数・数学で生かされる、などの「汎用性」の視点がみられるのである。

確かに、「レポートの書き方」や「体験の表現活動」は、学習成果としてはやや高度の内容を含んでいる。繰り返し学ぶことで「学習スキル」として身に付ける必要がある。説明に出てくる「比較・分類、関連付けの技法」「体験活動の発表」などもそうである。それらは学年相応のレベルがみられるであろう。

ところが現状ではそうなっていない実態がある。中学校の「言語活動の充実のための全校的な取り組み」(ベネッセ教育総合研究所『中学校の学習指導に関する実態調査報告書2014』)をみると、例えば、「言語活動の取り組みのために教科間の連携を図る」は27・2%でしかない。汎用性についての配慮がみられない。むしろ、教科等がバラバラに言語活動を展開している印象が強い。「各教科等の指導計画に言語活動を位置づける」41・6%、「各教科で書くことを重点的に指導する」は53・5%、「各教科で話すことを重点的に指導する」59%であった。この数値は高いであろうか。

このことから『答申』が示している「各教科等を貫く視点」を再考し、重視する必要がある。

○多様で豊かな言語活動は可能か

個々の子どもが身につけたい言語力は、どのような学習場面でも使いこなせるテクニカル・スキルである。ユビキタス的(どこでも使いこなせる)スキルである。

現状をみると、『答申』で示した言語活動の充実にける学習スキルの獲得が十分行われていないようにみえる。しかし、「言語活動の充実」で求めているレベルは、日常的な言語活動のレベルと同じ水準であろうか。

私は特に提言されていることで、「言語活動の充実」のレベルを「学習スキル」としてやや高度に考えたい。

その理由は、一般的で日常的に必要とされる言語スキルは、テクニカル・スキルとしてどの子どもにも豊かに身に付けたい基礎的な「力」として考えたいのである。

その例は現行の学習指導要領の国語の記述にある。その記述は極めて詳しくなった。例えば、小学校は低・中・高学年別の記述であるが、「話すこと・聞くこと」では具体的な育てたい「能力」を示し、さらに「言語活動を通しての指導」が具体的に示されている。

詳しく記述する余裕はないが、現行の学習指導要領が示された直後、秋田県大潟村立小・中学校が一覧を作成しているので、「話す」部分のみを抽出すると上図のようになる。

このような言語力は、国語の「話す力」として子ども個々がそれぞれの学年レベルで獲得したい基礎的なスキルである。そのほとんどは日常の学習活動で必要とされるテクニカル・スキルである。この他に「聞く力」「読む力」「書く力」などがある。国語で学んだ力が他教科等、あるいは日常生活に多様に生かされるのである。

そこで教科等の指導には、このような国語で培う基礎としての言語力を生かしながら、教科等で必要とする固有の言語力を高めるようにする。

『答申』に示されている言語活動の考え方は、かなり多様で豊かな内容を含んでいる。必要なのは、言語活動の指導を全校的な体制の中で共通認識・共通実践することである。先述したベネッセ調査では「言語活動の充実について教員の共通認識を高める」が69・8%と調査項目中最も高かった。共通認識が「実践」に向けて充実することを一層期待したい。

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