(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)組体操をめぐる議論

制限かけるのは仕方ないが 本質的な議論が求められる

運動会などでの組体操をめぐる議論が高まっている。文科省は今月末にも、組体操などの事故防止に向けた指針をまとめる予定だ(本紙2月22日付既報)。だが、同省がどのような結論を出そうと、恐らく、疑問はさまざまに残るだろう。組体操をめぐる問題の本質とは、いったい何なのだろうか。

■規制に乗り出す教委も

組体操は、学習指導要領には載っていないが、運動会などの種目として多くの学校で導入されている。しかし、組体操の中でも四角錐状の「ピラミッド」や円錐状の「タワー」などの種目が高層化を競うようになり、その危険性が一部で指摘されていた。このため大阪市教委は昨年9月に、このようなピラミッドとタワーについて、高さ制限を打ち出した。

その後、大阪府八尾市立の中学校の運動会で、10段ピラミッドが崩壊し、生徒が骨折などする事故の映像が、インターネットの動画投稿サイトに載ったことから、組体操の危険性が全国的な問題として注目されるようになった。

日本スポーツ振興センターのデータによると、組体操中にけがをした児童生徒は、平成23年度以降、4年連続で8千人以上に上っているという。このような状況を受けて、組体操に対する指針などを示す教委が大阪市以外でも現れ始めた。その内容は、大きく4タイプに分けられる。

(1)一部種目の高さ規制=四つんばいで重なるピラミッドなら5段または4段まで。立ったまま肩に乗るタワーは3段まで。大阪市、大阪府八尾市、愛知県、名古屋市など。
(2)一部種目の禁止=組体操のうち、危険度が高いとされるピラミッドとタワーの禁止。大阪市(今年2月以降)など。
(3)組体操の禁止=難易度が低いといわれる種目を含め、組体操自体を禁止。千葉県柏市・流山市など。
(4)注意喚起=組体操では安全性に配慮するよう通知し、学校現場に判断を委ねる。和歌山県など。

■文科省も指針を検討

文科省は当初、部活動中の事故など学校事故全体について、専門家会議で検討中だったこともあり、組体操の問題については、ほぼ静観の姿勢を見せていた。

その流れが変わったのは、組体操事故に関する超党派の国会議員による勉強会が2月3日に開かれてからだ。馳浩文科相は2月9日の記者会見で「重大な関心をもって取り組まなければならない」と述べ、3月末までに文科省として指針をまとめる方針を表明した。

また「学校管理課下における重大事故を考える議員連盟」が設立され、2月26日には、十分な安全確保ができなければ、組体操の中止を含めた対応を取るよう教育委員に求めることなどを、文科省に申し入れた。このような中で、文科省がどのような指針をまとめるのかが注目されている。

ただ、組体操については、否定的な見解ばかりではない。教員や保護者の一部には、「達成感や一体感を育むなどの教育効果がある」とする声も根強く残っている。

■禁止では終わらない

組体操をめぐる一連の経過の中で、最も大きな疑問は、その教育的効果や高さ制限などの科学的根拠などが、ほとんど議論されていないことだ。そもそもなぜ学習指導要領にもない組体操が運動会などで、広く行われるようになったのか。もし、そこに教育的効果があるとすれば、それは何か。

またピラミッドやタワーなどの高さ制限をするにしても、小・中学校や高校などでは、児童生徒の身体的発達は異なる。ピラミッドを「5段」や「4段」、タワーを「3段」と一律に制限する背景には、過重負担や構造などどのような科学的根拠があるのか。ましてや、組体操全体を禁止することは、果たして妥当なのか。

春の運動会シーズンが近づいていることから、暫定的にピラミッドやタワーなどの高さ制限をしたり、禁止したりするのは仕方ないとしても、その後に、教育関係者やスポーツ科学の専門家などによる本格的な議論が、ぜひとも必要だろう。

危険性が全国的な注目を集めるようになったから中止するというのは、一見正しいように見える。しかし、それは裏を返せば、危険性はあるが、なんとなく組体操を続けてきたということと、実は同じではないか。

学校における安全とは何か、そして学校現場の主体性とは何か。組体操をめぐる問題について、もっと掘り下げた議論が必要だろう。

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