(新しい潮流にチャレンジ)学校の再構築を目指す改善方策

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

近未来の学校づくりに向けて
○教育改革の実現に向けて4つの視点

現在、中教審が進めている学校教育の論議の中で基本的な視点が4つあると考える。

1つは、将来に向けて子ども個々の資質や能力をどう育成するか、そのための学校教育はどうあるべきか、という論議である。次期教育課程についての『論点整理』で方向が示されているがその改訂論議は進行中である。

2つは、子どもの教育を支える教員の資質能力の形成である。近未来の教育は従来にはなかった新たな課題が山積している。そのため教員個々が身につけるべき指導力の向上と実践力を新たに必要とする。例えば、アクティブ・ラーニング力やカリキュラム・マネジメント力、ICT活用力、小学校の英語指導力などである。豊かな教育が実践できる教師力の課題である。中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」(以下「教員の資質能力」答申とする)がある。

3つは、最近の学校が置かれている状況、例えば教員の多忙化、子どもの多様化への対応、経済階層の格差、学校を取り巻く地域の教育資源の活用、などの課題に対する学校としての組織的なあり方が求められている。チーム学校の提案にみられる新たな組織化としての学校の課題である。中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(以下「チーム学校」答申とする)がある。

さらに4つは、コミュニティ・スクールの普及を目指した学校と地域の協働・連携に向けた取り組みである。実施上の課題は大きいが、「コミュニティシップ」が言われるように(当紙面『校長のパフォーマンス』参照)、これからの社会変動に対応した新たな地域創生が求められる。中教審答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」(以下、「コミュニティ・スクール」答申とする)がある。

このように、(1)子どもの資質能力の育成の課題(2)その教育を実現する教師力の課題(3)組織として教育実現を果たす学校力の課題(4)学校と地域の連携・協働の課題としてのコミュニティ・スクール――である。(1)が最も重要であるが、それを支える(2)(3)は不可欠な課題として存在する。さらに(4)を加えることで地域に根差した多様性のある教育実現を目指す。

○複雑化・困難化する学校教育の課題

2020年後の教育実現として中教審答申と次期学習指導要領は、来年度中に策定・改訂される。学校の立場から言えば、それらの答申を受けて、新たな教育実現のための体制づくりが必要である。しかし、周知のように我が国の教師はOECDの調査国中最長の勤務時間、多様な職務内容など、現状において課題が山積している。次期教育課程など学校教育への期待の増大は、教師の役割を複雑化し、困難化することは目に見えている。近未来に向けた豊かな教育の実現は可能であろうか。

実のところ、「論点整理」や3つの答申を読んでも、例えば教師の多忙化解消への具体的な手だてなどはかなり不十分である。教師の資質能力の向上も十分な対策とは思えない。

学校が豊かな教育実現を果たすための最も中心的な課題は教師個々の職能成長である。OECD国際教員指導環境調査(TALIS、2013)では、勤務時間が調査国中最長だったが、研修意識も高かった。ただ、「能力開発の日程が仕事のスケジュールに合わない」とする割合が86.4%と調査国平均の5割程度と比べて格段に高かった。

この9割に近い数値は、ほとんどの教師が現在の指導力に満足していない、それでいて研修機会にも参加できないことの現れである。「教員の資質・能力」答申の具体化への期待は大きいものがある。

そこで教員それぞれが教育指導に専念できるために「チーム学校」答申は、教員が行うことが期待される本来的な業務を、学習指導、生徒指導、学校行事、授業準備、教材研究、学年・学級経営、校務分掌や校内委員会等に係る事務、教務事務(学習評価等)としている。

これだけでも個々の教員にとって大変なことであるが、実のところ教員の多忙化の要因は違ったところにみられた。文科省は「学校現場における業務改善のためのガイドライン」(2015)を示しているが、最も負担率が高かったのは「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」で教員の従事率は60%前後であるが、負担感率は87%前後であった。他にも一般的な事務業務があって、TALIS調査では調査国平均の2倍に近かった。

このことから、可能な限り「一般的事務業務」を削減して、本来的な指導業務に専念できる体制づくりが必要である。「チーム学校」答申は、新たにICT専門員、スクールカウンセラーなどの要員を考えているが、これら専門スタッフが「一般的事務業務」まで扱うことは無理がある。また、人が増える可能性はほとんど期待できない。結局は教員がこれまでとあまり変わらずに事務業務を担うことになる可能性が大きい。調査やアンケートには必要不可欠なものが存在するからである。

○指導の多様性・効果性への期待

だが、「チーム学校」は、単に教員の多忙化軽減のためのみではない。チーム学校の役割は専門スタッフを加えることで、学校教育の多様化・効率化としての豊かな教育実現が期待できる。

学校はますます多様な課題に遭遇する状況にあるが、「チーム学校」答申が提案している専門スタッフやサポートスタッフは、そうした多様化への対応への期待がある。「チーム学校」答申が示している専門スタッフは、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療的ケアを行う看護師、特別支援教育支援員、ICT支援員、学校司書、部活動支援員(仮称)、英語指導を行う外部人材と外国語指導助手、補習など学校における教育活動を充実させるためのサポートスタッフである。

例えば、スクールカウンセラーは、「学校の教育相談体制の強化」「不登校の改善」「問題行動の未然防止、早期発見・早期対応」に役立っているとする声が大きい。スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家として、問題を抱える子どもが置かれた環境への働きかけや関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整、学校内におけるチーム体制の構築・支援などの役割を果たしているとされている。また、今後はICT支援員の役割は重要になると考える。

このように多様な専門スタッフを配置することで教育活動への多様な支援を図ることを意図しているが、コミュニティ・スクールなど、学校が地域と連携したり、専門スタッフ等との連絡・調整など新たな課題が浮上することから、地域連携等を担当する教職員を校務分掌に位置づけるとする考えが示されている。

「コミュニティ・スクール」答申については、コミュティ・スクールが当面の課題ではあるが、ミンツバーグ教授の言う「コミュニティシップ」の考え方からすれば地域創生の新たな視点を必要とする。また、社会は変動し続けていくために、地域で成長する子ども個々への社会的な影響は従来とはかなり異なってくることが推測される。地域それぞれに適合したコミュニティシップの多様なあり方が課題になるのではないか。

ともあれ、次期教育課程の実践に向けた方略の必要性は、4つの視点に基づくことが大切であって、さらなる論議や検証を必要とすると考える。

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