(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)子どもの貧困と学校の対応

B問題で学力格差が広がる

「子どもの貧困」が大きな問題となっている。

3月14、15の両日、都内で開かれたシンポジウム「Kids’ Day JAPAN」(本紙3月21日付既報/電子版では3月15日付で)でも、奨学金や学力格差などの問題が大きく取り上げられた。だが学校関係者の関心は、いまひとつというのが実情ではないか。「子どもの貧困」問題に対して、学校には何ができるのだろうか。

■問題の影に「貧困」

厚労省の統計によると、日本の子どもの貧困率は16・3%に上り、6人に1人が「貧困」という状態になっている。しかし、これは全体の平均で、母子家庭などひとり親世帯に限ると、子どもの貧困率は54・6%に跳ね上がる。ひとり親世帯の半数以上の子どもたちが、貧困という問題を抱えていることになる。

これに対して、子どもの貧困について学校ができることはごく限られているという声は少なくない。実際、給食費や修学旅行積立金などの滞納に対して、地方自治体の就学援助などを紹介したり、相談に乗ったりするくらいだろうか。

だが、現在の子どもをめぐるさまざまな問題には、家庭の経済力の低下など「貧困」が背景にあるものが多く、貧困の問題と向き合わずに解決することが難しくなっている。

昨年末の中教審答申は、「チーム学校」として教職員と専門スタッフの協働を打ち出している。中でも、スクールカウンセラーと並んで、スクールソーシャルワーカーを学校の職員として法令上明確に位置付けることを求めている。子どもや家庭の問題がますます複雑化するなかで、スクールソーシャルワーカーの配置とその拡大が強く望まれるところだ。

■懸念される「B問題」格差

一方、学校関係者として気になるのは、家庭の経済力と学力の関係だろう。

文科省の委託を受けて全国学力・学習状況調査の結果を分析した研究グループの分析によると、経済力のある家庭の子どもたちは、そうでない家庭の子どもたちよりも、学力調査の成績が高いという実態が明らかになっている。もっとも、教育関係者なら誰しもが経験上知っていることで、研究結果はそれを裏付けたに過ぎない。

しかし、研究グループは、全国学力調査の「A問題」と「B問題」を比較して、家庭の経済力に起因する学力差は、A問題よりもB問題の方が大きいという事実を明らかにしている。自宅で全く勉強しない経済力のある家庭の子どもと、自宅で数時間勉強している経済力の低い家庭の子どもを比較した場合、「B問題」に限れば、全く自宅学習をしない経済力のある子どもの方が成績がよいのだ。

現代では、幼児期から子どもに自然体験や文化体験などをさせるにも金がかかる。幼児期からさまざまな体験を積んだ経験の違い、さらに家庭の文化環境などの違いが、「B問題学力」に大きな影響を及ぼしていると考えられる。

知識量などを問う「A問題」ならば、経済力の低い家庭の子どもも、頑張れば何とか追いつけるが、知識の活用を問う「B問題」には、ときには手も足を出ないのが実態だ。

さらに、学力だけでなく、体力・スポーツに関しても、経済力のある家庭の子どもの方が成績が高いという別の研究結果もある。

■学校は「最後の砦」に

次期学習指導要領の改訂に向けて、アクティブ・ラーニングの導入など、知識・技能と同時に、思考力・判断力・表現力などが今まで以上に重視されつつある。これらは明らかに「B問題」に相当する学力であるといってよいだろう。

もしそうだとするならば、経済力の低い家庭の子どもたちに対して、何らかの手を打たないままアクティブ・ラーニングなどを進めてしまえば、当然の結果として、経済力のある家庭の子どもはさらに有利になり、そうでない家庭の子どもたちは、より不利な状況に置かれることになりかねない。

そうなると、学力の二極化どころか、経済力の違いによる社会階層の固定化が子どもたちに及ぶ可能性がある。

子どもの貧困に対して、教員など学校関係者は、個別の問題として、全体的な対応を取ることにあまり関心がないように見える。だが、思考力・判断力・表現力などがより重視され、アクティブ・ラーニングの導入が強く求められている現在、子どもの貧困問題に対する認識と理解が、今まで以上に教員など学校関係者に求められているのではないだろうか。学校は「最後の砦」なのだと思う。

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