(教育時事論評)研究室の窓から 第11回 福井県はなぜ高学力なのか

国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

 

他県からの研修生が秘訣探る

秋田県の高学力の要因は明確だ。要点は、▽授業の冒頭に「めあて」を子どもたちに示している▽授業の最後に学習したことを振り返らせている▽授業の中で学級やグループで話し合う活動を取り入れている。これら3つの活動の秋田県における実施率が、他県と比べて高く、しかも、学力平均と有意な相関を示している。

これに対して、秋田県と同様に高学力県である福井県はどうであろうか。これらの実施率が、実は高くないのである。では、なぜ福井県の学力は高いのか。

長らく、当の福井県がこの問に答えることができなかった。秋田県は、国が最初の全国調査を行った昭和30年代の成績はよくなかった。そこからの脱却を目指して、県教育委員会が主導してさまざまな改革を実施してきた成果が表れたのが、平成19年の全国学力・学習状況調査だ。

インタビューに答える県教育委員会関係者は饒舌だ。3つの活動だけではない。多くの施策を県が主導し、市町村とも連携して実施している。

対して福井県は、昭和30年代から学力は高かった。教育関係者に聞くと「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」と答えられる。当たり前のことがどういうことか、彼らは分からない。

そこで、福井県は一計を案じた。自分たちで福井の強みが分からないなら、他県の人に、それを明らかにしてもらおうと。

福井県には、他県から教員が研修生として派遣され、学校で教員として勤務している。彼らは、福井県の秘訣を探るために自県から派遣されているのだが、自県に持ち帰るだけでなく、彼らが発見したその秘訣を、福井県に報告してもらおうという構想だ。

かくして「福井らしさを探る会」の活動が始まったのが一昨年度になる。一昨年度の報告書を全国の都道府県教育委員会に送付したところ、問い合わせが殺到した。そこで、報告書は『県外から来た教師だからわかった福井県の教育力の秘密』(学研)として出版されるに至った。一昨年度の報告では、福井県の指導の強みとして「見通しを持った指導」を挙げ、それをチーム体制で取り組む学年会、教科会のつながりの強さを取り上げた。部活動の指導が全員体制、宿題を忘れた生徒は部活に参加できず、放課後指導担当教師のもとで勉強するなど、他県で考えられない体制がある。中学校で教科担任教師が全学年を担当する「タテ持ち」は、高知県が研究指定に取り組むなど、ちょっとしたブームになりつつある。

「福井らしさを探る会」の2年目は、学校経営に焦点を当てた。学年会や教科会のつながりの強さの背後に校長のリーダーシップがあるだろうと見当をつけたゆえだ。案の定、面白い発見が次々に出てきた。「同じ分掌校務を3年以上続けさせない」「ベテランと若手の組み合わせを意識」「本人の意向を重視するが最終的に判断するのは校長」「多様な校務を担当することでオールラウンドプレイヤーを育てる」などの人材育成面での特徴が次々に。

「年間を通して学校経営計画を考えている」「学校経営計画を考えるのは毎学期の学校評価、職員アンケート、保護者アンケートを踏まえる」「案を作ったら、必ず職員の意見を聞く」「目標は絞り込む」「目標には数値目標を」「学校経営計画に従って学力向上計画、教育課程、個々の教員の年間計画を作成」。

つまりは、チームをまとめるだけでなく、目標管理もしっかり行われている。

この2年目の成果は、探る会のメンバーが文科省までやってきて披露された。文科省の職員からは「どのように数値目標を定めているのか」「授業研究の実施体制はどうなっているのか」「福井の少人数体制の成果は」など、東京都などの教員からは「学校経営計画が職員に受け止められている秘訣は」「若手育成の方法は」「県と市町村の関係はどうなっているのか」などの質問が相次いだ。

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