(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)障害者差別解消法が施行

「合理的配慮」で課題も

障害者差別解消法(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)が、今年4月から施行された。一般のマスコミではあまり大きなニュースになってはいないが、大学などでは大きな関心が寄せられている(本紙4月7日付既報/電子版では3月31日付で「こんな配慮あれば授業分かりやすい 障害学生らが冊子」として既報)。だが、これは大学だけでなく、学校教育全体に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

■合理的配慮の提供を

障害者差別解消法は、国連障害者権利条約の批准のための国内法整備の一環として、平成25年6月に制定され、今年4月から施行された。主な内容は、障害者への差別的取り扱いの禁止、障害者への「合理的配慮」の提供の2つだ。

このうち、障害者に対する合理的配慮の提供は、国公立学校では法的に義務付けられ、私立学校では努力義務となる。つまり、幼稚園から大学までの国公立学校では、障害者が入学し、一般の児童生徒と同じ教育を受けられるよう合理的配慮を提供することが、この4月から義務付けられたわけだ。

これについて文科省は、昨年11月に「対応指針」を出している。「合理的配慮」に関するガイドラインなどを策定している教委もある。また合理的配慮の提供を義務付けられた国立大学では、国立大学協会が「職員対応要領」のモデル案を作成し、障害のある学生に対する対応を各国立大学が進めている。主な私立大学でも、その事情は同様だ。

■合理的配慮の範囲は

しかし、やはり一番の問題は初等中等教育段階での対応だろう。障害者差別解消法の施行に伴い、一般の学校に入学を希望する障害児とその保護者の増加が予想されるからだ。

さらに、合理的配慮には「過度の負担を課さないもの」という条件が付いているが、過度の負担とは具体的にどのようなものか、学校はどこまで障害のある児童生徒とその保護者の要請に応えるべきなのかなど、合理的配慮の範囲をめぐって、各学校では判断に悩むケースも増えてくると思われる。
例えば、支援員などの人的配置、エレベーター設置などの施設整備は、予算の問題もあり、自治体によっては困難な場合があるだろう。文科省の対応指針では、合理的配慮の中身はケース・バイ・ケースで、学校が個々に判断するとされている。だが、要請を受け入れられない場合、その理由をきちんと保護者などに説明して理解を得ること、できれば代案を示すことなどを求めている。

これは裏を返せば、予算や人手不足を理由に、合理的配慮の要請を〝門前払い〟するのは許されないという意味だ。

また合理的配慮は固定的なものではなく、状況や環境の変化などに応じて常に見直すことが求められている。

その意味で、今後、学校では施設のバリアフリー化、介助員や支援員などの人的配置といった「基礎的環境整備」が、いっそう求められるだろう。

■求められる高校の対応

ただ、小・中学校では既に、特別支援教育の取り組みが進んでいることもあり、障害者差別解消法の施行による混乱はほとんどないとの見方もある。その一方で、課題を抱えそうなのが高校だ。

文科省調査によると、高校でも校内委員会の設置や、特別支援教育コーディネーターの任命など、基本的な体制は小・中学校と同程度に整備されてはいるものの、「個別の指導計画」の策定など実際の対応は、あまり進んでいない実態が明らかになっている。

また高校関係者の間には「高校は義務教育ではない」という意識が根強くあり、特別支援教育や通級指導への理解が遅れているのが実情だ。

しかし、障害者差別解消法が施行された現在、「障害者の入学を想定していない」「安全確保などの面で対応できない」などとの理由で障害のある生徒の受け入れを拒むことは、法的にも許されない。高校入試では別室受験など障害者対応はある程度進んでいるが、今後は、入学後の合理的配慮の提供が大きな課題となろう。

一方、合理的配慮の具体例については、国立特別支援教育総合研究所が学校段階別、障害別などに応じて「合理的配慮実践事例データベース」を作成しており、参考になる。

しかし、最も重要な点は、障害の有無にかかわらず、子どもたちが共に学ぶという「インクルーシブ教育」の実現だ。合理的配慮の提供は、そのための手段にすぎないことを忘れてはならない。

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