(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース)多忙よりも多忙感の解消を

人々との協働が求められる

教員の多忙化は、いまや無視できない問題である。教職員の負担軽減のためのハンドブックを作成した横浜市教委の取り組み(本紙4月25日付、電子版4月20日付既報)など、多忙化の解消を図ろうとしている教委も少なくない。だが、その効果は十分とはいえないのが実情のようだ。それでは、どうすれば教員の多忙化を解消することができるのだろうか。

■問題は多忙「感」

OECDの国際教員指導環境調査(TALIS)によれば、日本の教員(中学校)は、世界一多忙である。

内容を見ると、授業時間数などは参加国平均と同程度であるのに対して、課外活動や事務業務が極めて長いという特徴がある。

つまり、諸外国の教員は授業以外の仕事がほとんどないのに対して、日本の教員は、生徒指導や部活動などさまざまな活動を担っている。

この「日本型学校教育」が、多忙化の大きな原因の一つだといえる。

恐らく多忙化解消のために最も有効な方策は、この「日本型学校教育」をやめて、諸外国の教員のように授業だけを業務とすることだろう。しかし、日本の教員の多くは、この案に賛成しないだろう。そもそも日本の教員は、子どものためならば多忙をいとわない。

要するに問題は、「多忙」そのものではなく、いくら働いても、成果も手応えも得られないという「多忙感」にある。事務の効率化などを中心とする多忙化解消策が、学校現場であまり成功しているように見えないのは、「多忙」よりも「多忙感」に問題があるという教育現場の実情を認識していないからではないか。

■教員の大幅増は難しい

それと同時に、子どもや保護者の多様化、経済格差などを背景とする問題行動の複雑化、インクルーシブ教育の進展、アクティブ・ラーニングの推進など、学校をめぐる状況は、教員の多忙化に拍車を掛けるばかりだ。また学校や教員に対する社会の目も厳しくなるばかりで、学校や教員から余裕を奪い去っている。

これに対する多忙化解消の方策は、教員定数を大幅に増やす施策だ。しかし、少子化や学校統廃合の進行、財務当局の反発などを考えると、実現は極めて難しい。また新自由主義的な風潮を経て、社会の見方が、教育は子どもやその保護者などの「私事」とされ、社会全体の関心事ではなくなりつつあるのも見逃せない。

これに対して文科省が打ち出しているのが、部活指導員やスクールカウンセラーなどの専門スタッフを学校の正規メンバーに加える「チーム学校」という考え方だ。もはや教員だけで学校教育を担うという従来の手法では、対応できない時代になりつつあるといえる。

■協働で多忙化解消を

一方、文科省の勤務実態調査から教員の「多忙感」(負担感)の原因となっているものを見ると、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」と「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」が多い。

加えて、副校長・教頭は「学校徴収金未納者への対応」、教諭は「研修会や教育研究の事前レポートや報告書の作成」などを挙げている。

これらが教員に「多忙感」をもたらしている。

このうち、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」や「研修会や教育研究の事前レポートや報告書の作成」などの削減は、文科省の「業務改善ガイドライン」(平成27年7月)でも指摘されており、対応に乗り出している都道府県教委もある。学校給食費などの公会計化も推進する必要があるだろう。

それでは、「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」はどうすべきか。確かに悪質なクレームも一部にあるが、対応に「多忙感」が生じてしまう教員の意識の背景には、教員だけが学校教育を担っているとの考え方があるように感じられなくもない。

これに対して文科省は、「地域とともにある学校」を打ち出し、地域住民や保護者が学校運営に参画するコミュニティ・スクールの拡大などを求めている。

教員の「多忙感」につながるようなことは、できるだけなくすべきだ。だが同時に、専門スタッフも加わる「チーム学校」、そして保護者や地域住民などと協働する「地域とともにある学校」も求められている。教員定数の大幅増が実質的に困難な中で、教員の多忙化を解消するには、従来の学校観を転換する必要があろう。

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