(新しい潮流にチャレンジ)創造性をどう育成するか

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

汎用的スキル獲得としての創造活動
〇創造性を伸ばす教育の課題

『初等教育資料』2月号(東洋館出版)は、「創造性を育む教育活動の推進」が特集である。教育基本法や第2期教育振興計画、あるいは次期教育課程の「論点整理」などに「創造」の文言は主要な役割として登場する。例えば、「創造性を備えた人間の育成」「自立・協働・創造に向けた一人一人の主体的な学び」「新たな価値を創造していくとともに、新たな問題の発見・解決につなげていく人間であること」などである。

それらは教育のあり方としての文脈に位置づけられていて一応理解可能なものであるが、ただそうでありながら「創造」の内実はほとんど語られない。実際の授業場面などで創造性がどのように育まれるか、具体的な説明が必要である。その意味でも「創造性を育む」という雑誌の特集は珍しく興味深いことである。

だが、「創造性を育む教育活動」と言われたとき、どのような授業を想定するのか。国語の作文、図工の作品制作、また音楽や家庭科なども想定できそうである。これらの教科は学習指導要領の教科目標に「創造」の文言があって、今回の論文もそうした教科の実践例が載っている。しかし、社会科、算数・数学、理科などの実践例がない。これらの教科は創造性を育むことはいらないのであろうか。

誰もがそうは思わないであろう。社会科、算数・数学、理科だから、なお創造的な活動は必要と考えるのではないか。
その背景には、創造的な学習活動でどのような「力=汎用的スキル」が身につくかという具体的な視点を知りたいという期待があるであろう。創造性育成の学習活動は従来の授業と何が異なるのか、また創造的な活動によって「創造=価値を創りだす」力がどのように子どもの形成されるのか、などを知りたいと考える。アクティブ・ラーニングが言われている現状で、その視点での論及が求められると考える。

〇創造性の教育とは何か

確かに創造性育成の学習活動を具体的に示すことは難しい。「創造」の大切さは言われても、実際に授業を考えることには一種のためらいを感じる教師も多いであろう。

そこで創造性について基本に立ち返って若干述べてみたい。
戦後、わが国が戦災による荒廃から立ち直るために必要と考えられたのは、諸外国を超える技術革新であった。当時の企業が熱く求めていたのはどうすれば新たな技術革新が可能か、その模索であった。それは現在でも続いている。絶えざる技術革新が企業の死活を決定づけるからである。

戦後、創造性はブームになった。そのとき何に注目したかと言えば、創造がどのようにして為されるのかという、創造行為の追体験的な研究であった。どうすれば新たな開発ができるか、その元になる創造のメカニズムを探ることであった。これまでも優れた発明・発見は見られた。その発明・発見はどのような思考の経過に基づいて行われたのか。そのメカニズムがわかれば、企業の新たな技術開発に結びつけられる、と考えたのである。

当時、創造性学者は創造過程について提言を多く行っていた。ヴァン・フアンジェ、ゴードン、市川亀久弥、中山正和などである。そうした理論を受けて、どうすれば創造のメカニズムを認識できるかに関心が集中した。それはかなり続いていて、例えば野村総研では、創造の4段階モデルを、「仮説構築」「異化作用」「コンセプト創造」「共鳴連鎖」としている。それぞれ内容があるのだが、研究開発、商品開発、システム開発、事業開発に結びつけたいと考えたのである(『創造の戦略』NRI1990)。なお、野村総研は最近AI(人工頭脳)による、将来に残る職業・残らない職業の仕分けをして注目された。

学校教育はどうであろうか。もちろん商品開発はないが、創造行為がどのようになされたか、その思考過程をたどることによって、創造性を体験する学びが大切と考えられた。「再創造」の考え方である。
その創造性を体験する学びは、(1)課題との出会い(2)解決のための仮設の提示(直観的思考)(3)解決のための手順の獲得(4)解決志向としての追究(論理的思考)(5)本質把握と検証――などである。

この追究過程は、社会科や理科、算数・数学などで必要と考えられた。創造過程の学びを体得することで、実社会や実生活の多様な問題に対処する能力が形成されると考えたのである。
創造的な感性を育てることは重要であって、図工や音楽のように実際に創造行為を豊かに行うことが必要になる。創造的な体験的活動を重視する考えも強調された。
しかしながら、創造性の育成を掲げる具体的な授業等の提案は極めて珍しいものであった。

〇創造的思考と創造性スキルの形成

ところで、学校での創造性の学習は広まらなかったが、創造性開発への企業等の関心は強かった。

そのことで、企業で取り入れたのが、例えばブレインストーミングやKJ法など創造性開発の手法である。、アイデアを引き出すためのスキルについての関心も高まった。オズボーンの「創造性チェックポイント」はかなり広まった(『創造性を生かす』創元社、1969)。

オズボーンの「創造性チェックポイント」はどのようなものかと言えば、どんな課題についても考えられる創造のメカニズムを単純化して具体的な方法を示したものである。
その手法は(1)他に使い道はないか(2)他のアイデアを利用できないか(3)大きくしたらどうか(4)入れかえたらどうか(5)小さくしたらどうか(6)他のものにしたら(7)反対にしたら(8)組み合わせたらどうか――の8つでしかない。

多くの創造的な行為をみると、このポイントが生きているように思える。発明工夫、折り紙、服装、など生活の中に多様にある。

実は創造性スキルは、身近に活用できる手法である。そうした実際に活用できるスキルを子どもたちが身につけることが創造性の教育となる。ただし、創造性は可能性をはらむ内容を持っていて、以上述べた創造は一部でしかないという認識も大切である。
創造性は企業において極めて重要である。創造的な企業人や技術者が必要であるが、十分に育っていないとされる。

その背景には、学校教育のみでなく社会一般に創造性を育てる生活環境が希薄だということがあるのではないか。しかし、今日のように技術や市場環境が大きく変動する社会においては、新しい状況を正しく把握し、何が問題で、どうすれば解決できるか、そのために自分がどう考え、どう行動すればよいかを学ぶ必要がある。創造性を活かした変化への対応力の獲得である。

その考える力のプロセスとして創造的な思考力を持てば、それが汎用的スキルやメタ・ラーニングとなって「社会を生き抜く力」が形成される。創造性を育むとは将来に向けた力の形成である。

創造性を育てる学習活動はアクティブ・ラーニングの一環である。しかも、創造的な学習活動は子どもにとって極めて興味深く、面白いと感じる場面が多い。子どもが面白いと感じると、自ずと子どもたち自身が課題追究を主体的に行うようになる。その過程で試行錯誤が認められるから、子どもは恐れずに自分の思いを学習に吐露することができ、子ども同士の協調的な雰囲気も高まる。

このように創造性を育む学習活動は多様に考えられることから、教師はカリキュラム・マネジメントにおける創造性育成を十分考慮したい。また、教師自身が創造的な学習に興味や関心を持って、創造的なスキルを身につけてほしい。教師の創意工夫が大きく発揮できるのも創造的な学習活動の場面である。

現状では学校で創造性の学習活動を語り合う場がきわめて少ない。その意味で『初等教育資料』が特集を掲げたことは特筆に値する。これを機会に「創造性の教育」について関心が高まり、実践につながることを期待したい。

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