(本紙編集局はこう読む 深掘り教育ニュース) 小学校からプログラミング教育

実施には慎重な準備が不可欠

文科省は、次期学習指導要領に向けた改訂の一環として、小学校におけるプログラミング教育の必修化を検討する有識者会議を発足させた(本紙5月19日付既報)。しかし、学校現場や関係者の間では、プログラミング教育の必修化に対して賛否両論が渦巻いているようだ。そもそもプログラミング教育とは何なのだろうか。

■急きょ小学校でも検討へ

全てのコンピュータは、プログラムという「命令」で動いている。そのプログラムを書くことがプログミングであり、そのプログラミングの原理や方法を学ぶのがプログラミング教育だ。現代では、パソコンやスマホだけでなく、自動車、炊飯器、冷蔵庫など多くの製品がコンピュータ制御で動いている。プログラミングを知るのは、高度情報化社会の仕組みを知ることにつながるといわれている。

またプロクラムを書くには専門的なプログラム言語が必須だが、最近では1つの命令をパソコン画面上でブロックなどの形で視覚化した「ビジュアルプログラム言語」が教育用に開発されており、小学生などではこれを使う場合が多い(本紙5月16日付参照)。

プログラム教育について安倍晋三首相は、政府の産業競争力会議の中で人工知能(AI)などの普及による「第4次産業革命」に対応するため、プログラミング教育の体系化による人材育成や初等中等教育の中で必修化する方針を示した。文科省では、中学校の「技術・家庭」と高校の「情報」で、次期学習指導要領でプログラミング教育にも対応するとしていたが、小学校は視野に入れていなかったため、急きょ、先の有識者会議を発足させた。小学校の次期学習指導要領が全面実施される平成32年度から実施したい考えだ。

■論理的思考力を鍛える

しかし、教育関係者の間ではプログラミング教育の実施には反対意見が少なくない。プログラミングは専門家以外には不要で、学校ではコンピュータを使えるようにするだけで十分という意見や、必修ではなく選択でやりたい者だけがやればよいとの声もある。これらの反対意見の背景には、ITに携わる技術者養成という「国策」を学校教育に押し付けようとの政府の方針への反発もあるようだ。

一方、AIの進歩により多くの職業がロボットに取って代わられるという予測もあり、これからの社会を生きるためにプログラミングの知識は必要という意見もある。またプログラミングは、命令をいかに効率よく組み合わせるかというアルゴリズムが重要となるほか、試行錯誤を経て問題を解決していく過程を経験できるなど、それ自体が論理的思考力や問題解決能力などの育成につながるアクティブ・ラーニングであるといった指摘もある。ただ、プログラミング教育推進派の中にも、論理的思考力の発達段階の関係から、小学校低学年での実施には慎重な意見もあるようだ。

全ての家電などがインターネットで結ばれるIoT(モノのインターネット)が現実になりつつある現在、プログラミング教育は何らかの形で必要だといえよう。

■現実は課題山積

ただ、現実問題となると、そう簡単ではない。文科省の有識者会議は、検討課題として「学校教育として実施するプログラミング教育の意義」「どの教科等で、どのように実施すればよいか」「どのようなICT環境が最低限求められるか」「民間など外部リソースを学校教育にどのように生かしていくか」などを挙げている。

例えば、小学校高学年の英語の教科化にしても、週2時間のうち1時間はモジュール学習など時間割の外で行わなければならないほど、授業時間数は逼迫している。このような状況でプログラミング教育の時間をどう確保するかは、大きな問題だ。

さらに最大の課題は、誰がどうやって指導するかだ。小学校教員でプログラミング教育ができるのか、そのための研修をどうするのか。またほとんどを外部指導者に任せるとしたら、指導者をどう確保するのか。この他、プログラミング教育のために必要なパソコン、タブレット型端末、教材用ソフトの整備など課題は山積している。

その一方で、教育とは別の視点から、総務省や経産省はプログラミング教育の実施を求めているほか、民間企業などもプログラミング教育に参入しつつある。

プログラミング教育が小学校で必要だとしても、学校現場が十分に納得できる態勢を整備した上で、慎重に実施する必要があるだろう。
もちろん、それは中学校と高校でも同様だ。

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