小中から主権者教育を 中教審委員の篠原文也氏に聞く

子連れでの投票が重要
新聞活用がカギを握る

選挙年齢が「18歳以上」に引き下げられて初の国政選挙が7月10日に行われる。約240万人といわれる18、19歳の有権者が新たに生まれる中で、主権者教育の重要性がますます高まった。第8期中教審委員で政治解説者・ジャーナリストの篠原文也氏に、今後、どのように社会参画への意識を醸成させていくのか聞いた。c20160707_01

国政では、今夏の参院選から、18歳以上の選挙年齢が初適用される。これを契機に、主権者教育が注目されている点は歓迎している。だが、私は以前からその重要性を訴えてきた。

福田康夫、麻生太郎両内閣で、総理直属の教育提言機関として設置された「教育再生懇談会」(平成20~21年)の中に、主権者教育ワーキング・グループが設けられた。その責任者を私が務めていた。そこでまとめた提言では、政府の文章として初めて「主権者教育」の文言が使われた。この中の目玉の1つは、各政党に「子ども向け政策集(子どもマニフェスト)」の作成・配布を求めた。小・中学校の段階から社会に参画する意識を芽生えさせるのがねらいだ。

こうした意識は、一朝一夕に育成できるものではない。この提言を基に、各政党を回って提案した。

いち早く動いてくれたのが、当時の野党だった自民党で、谷垣禎一総裁が英断を下してくれた。平成22年の参院選で「子どもマニフェスト」を作ってくれた。私が谷垣氏に言った「燃える下心」が効いたようだ。これをきっかけに、保護者の心もつかむということだ。その後の国政選挙でも作成してくれている。

公明党は24年の衆院選からホームページ上でPDFを掲載する形で作成してくれた。今回の参院選も同様に取り組みを実施してくれる。今の民進党(旧民主党)は24年の衆院選で一度は作成してくれたが、それ以降はない。共産党にも呼びかけているが、反応はいまいちだ。

提言のなかのもう1つの目玉は、親子連れ投票の実現だ。小さい頃の体験は、その後の成長に大きな影響を与える。これまで公職選挙法第58条の「やむを得ない事情がない限り」との文言では、地域によって解釈がまちまちで、投票所によっては子どもとの同伴ができなかった。だが、今回の改正で同伴が明確となった。ぜひとも活用してほしい。

選挙年齢が引き下げられた影響で文科、総務両省も動いた。教師用と高校生用の副教材「私たちが拓く日本の未来」を作成した。さらに次期学習指導要領の改訂に向けて審議している中教審では、高校の新科目「公共(仮称)」で主権者教育を行おうとしている。

子どもたちの社会参画を育成するには、学校教育と家庭教育が必要だ。この2つの車輪は不可欠だ。
さらに、新聞を活用してほしい。活字離れが進んでいるといわれて久しいが、ニュースの深掘りには欠かせないツールだ。ネットでつまんだ情報を新聞で深読みし、その問題について考えるというサイクルが必要だ。

教員の政治的中立について一言すれば、自民党では教特法を改正し、違反した場合には罰則を設けるとする案が浮上している。これでは、教育現場が萎縮し、充実した指導ができない。まずは、今回の参院選を検証してからでも遅くはない。

また中立性を担保する方法としては、ドイツの制度が参考になる。ドイツでは「論争のある問題は論争のあるものとして扱う」などの中立三原則(ボイテルスバッハ・コンセンサス)を1976年に設けた。これを基に超党派議員による「監査委員会」が設置され、中立性が保たれているかチェックしている。日本でも同様の委員会を設け、政治家のチェックにより中立性を保つ必要があるのではないかと思う。

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